悪戦苦闘の末、ようやくトイレの詰まりが解消された時、その安堵感からつい普段通りの使い方に戻ってしまいがちです。しかし、詰まりが解消された直後の排水管は、人間で言えば病み上がりのような、非常にデリケートな状態にあることを忘れてはいけません。ここで普段と同じ感覚で物を流してしまうと、回復しかけた流れが再び滞り、悪夢のような詰まりが再発するリスクが非常に高いのです。詰まり解消後、最低でも半日、できれば丸一日は、特に注意深くトイレを使う必要があります。 まず、絶対に流してはいけないのが、「大量のトイリェットペーパー」です。詰まりが解消されたかどうかを確かめたい気持ちから、テストのつもりで多くの紙を流してみたくなるかもしれませんが、これは最も危険な行為です。詰まりの原因が完全に取り除かれておらず、まだ配管のどこかに残っている場合、この「追い打ち」の紙がとどめを刺し、より頑固な詰まりを形成してしまいます。詰まり解消後は、できるだけ少量の紙で済ませ、必要であれば複数回に分けて流すなど、排水管に負担をかけない最大限の配慮が求められます。 次に注意したいのが、「トイレに流せる」と謳われているお掃除シートや猫砂、赤ちゃんのおしりふきなどです。これらの製品は、確かに通常のティッシュペーパーよりは水に溶けやすいように作られていますが、トイレットペーパーのように瞬時に繊維が分解されるわけではありません。詰まりが解消された直後の、まだ水の流れが万全でない状態の排水管にとっては、非常に大きな負担となります。詰まりが再発するリスクを考えれば、これらの製品の使用は、流れが完全に回復したと確信できるまで控えるのが賢明です。 また、意外と見落としがちなのが、掃除の際に流す「水」の量です。詰まりが解消された安堵感から、バケツ一杯の水を一気に流して配管をきれいにしたいと思うかもしれませんが、これも避けるべきです。万が一、まだ詰まりが残っていた場合に、便器から水が溢れ出す原因になります。 詰まり解消後は、まず「小」レバーで少量の水だけを流してみて、スムーズに水が引いていくかを慎重に確認することから始めましょう。排水管をいたわる気持ちを持つことが、悪夢の再発を防ぐための最も確実な方法なのです。