身近な生活トラブルを未然に防ぐための習慣づくり

知識
  • 捨てると怒るのは性格じゃない?溜め込み症という病

    知識

    「うちの親は頑固で、ゴミを捨てさせてくれない」「夫はだらしなくて、何度言っても片付けない」。ゴミ屋敷の問題に直面した家族が抱く、よくある悩みです。しかし、その「頑固さ」や「だらしなさ」が、本人の性格ではなく、「溜め込み症(ホーディング障害)」という精神疾患の症状である可能性を、一度考えてみる必要があります。溜め込み症は、単なる片付けが苦手な状態とは一線を画す、治療が必要な病気です。その中核的な特徴は、①実際の価値とは無関係に、モノを捨てること・手放すことが持続的に困難であること、②その結果、生活空間が大量のモノで埋め尽くされ、本来の目的で使えなくなっていること、③そして、その状態が本人や家族に重大な苦痛や社会生活上の問題を引き起こしていること、の三点です。この溜め込み症の人が、なぜ「捨てると怒る」のか。それは、彼らの脳がモノに対して、健常者とは異なる反応を示すからです。近年の脳科学研究では、溜め込み症の人が自分の所有物を捨てるかどうか判断する際、意思決定や感情の処理に関わる脳の領域が、異常なほど活発に活動することがわかっています。つまり、モノを失うことに対して、脳が過剰な恐怖や不安、苦痛といった信号を発してしまうのです。この耐えがたい苦痛から自分を守るための防衛反応が、外部に向けられる「怒り」となって現れます。これは、本人が意図的に怒っているわけではなく、病気の症状によって引き起こされる、いわばコントロール不能な反応なのです。この事実を理解せず、本人を「性格が悪い」と非難し続けることは、高熱で苦しんでいる人に「気合が足りない」と言うのと同じです。もし、あなたの家族がモノを捨てられず、それを指摘すると激しく怒るのであれば、それは性格の問題ではなく、病気のサインかもしれません。解決の第一歩は、本人を責めるのをやめ、「これは病気なのだ」という正しい理解を持ち、精神科や心療内科といった専門の医療機関へ繋げるサポートをすることなのです。