- 本書の概要
- 著者プロフィール
本書によれば、哲学の世界では現在、「存在論」から「贈与論」へというパラダイムシフトが起こっているという。「何かが存在している」から「何かが与えられている」へと見方を変えると、様々な新たな気づきがあるのだ。そして「贈与」は単純な「交換」と異なり、様々な難しい命題を含む。本書では「贈与」をめぐる哲学的テーマについて、マリオンに直接学んだ数少ない日本人の一人である著者の岩野卓司氏が平易に解き明かしている。
明治大学法学部・教養デザイン研究科教授。1959年、埼玉県生まれ。哲学。専門は思想史。パリ第四大学哲学科博士課程修了。
・「存在」から「贈与」へ
・ハイデッガーの「存在」と「贈与」
・ジャン=リュック・マリオンのキャリア…ほか
第2章 デリダvsマリオン―贈与をめぐる論争
・デリダとマリオンの関係
・現前の形而上学と脱構築
・脱構築とは何か…ほか
第3章 キリスト教と贈与
・マリオンとカトリシズム
・「神の死」
・新しい神の可能性…ほか

米国にてMBAを取得後、2010年、株式会社ブルームコンセプトを設立。新商品・新規事業コンサルティング、ワークショップを行う。『ビジネスモデル・ジェネレーション』(訳)、“IDEA HACKS!”等ハックシリーズなど著書多数。(>>推薦書籍一覧)
「贈与」は哲学の世界においてももっともホットな話題のひとつであると同時に、これからの社会のかたちを占うのにも欠かせない概念。等価交換だけでなく、贈与の原理が未来を切り開くキーとなる。一般向けの講義をもとにした本書は、難解な哲学の最前線をわかりやすく伝えてくれる。
推奨読者:
社会の仕組み、成り立ちについて本質的な理解を深めることが、結局は近道。これからの新しい時代に向けた新製品や新サービス、新規事業を企画する人たちに、こうした哲学書はさまざまなヒントを与えてくれると思う。
要約ダイジェスト
「存在」から「贈与」へ
日本でもフランスでも、いま贈与をもう一回考え直そうという機運がある。ヨーロッパの言語で一番の根本にあるのは、「存在」である。古代ギリシア以来の伝統的な考え方である、木が存在する、私が存在する…といった存在を中心にした「存在論」は、ヨーロッパの思想の中に強力に君臨してきた。
たとえば、デカルトも「われ思う」と考えた結果は「われあり」、つまり「私は存在する」であった。また、「存在する」のは人間や物にとどまらず、神様も「存在する」。しかもユダヤーキリスト教