- 本書の概要
- 著者プロフィール
本書では、そうした楽観論へ異を唱え、人口減少・高齢化を迎える日本がこれから歩むべき観光戦略を真正面から論じている。著者はオックスフォード大学で日本学を専攻し、外資系証券会社アナリストとして活躍後、日本の文化財修復を手掛ける小西美術工藝社の経営に転じた異色の経歴を持つ。それゆえデータを元に説得力ある内容が展開される。
本書によれば、観光立国には「気候」「自然」「文化」「食事」の4条件が必要で、日本はこれら全て満たす稀有な国だ。しかし、観光立国という意味では、観光客数は世界で26番目であり、アジア諸国のなかでも低い位置にいる。問題は観光をビジネスとして捉え、適切な客に適切なサービスとインフラが整備できていない点にあるという。
真の意味で国際対応していない「おもてなし」だけでは、世界の観光ビジネス競争では勝てないのだ。客観的な日本の強みや弱みを活かした観光戦略が理路整然と説かれ、観光産業やサービス業関係者だけでなく、マーケティングや戦略立案に携わる方にも気付きが多いはずだ。日本経済の希望の書として、また日本文化論としてもぜひご一読頂きたい。
小西美術工藝社代表取締役社長。元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年、イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くレポートを発表し、注目を集める。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、2007年に退社。同社での活動中、1999年に裏千家に入門。2006年には茶名「宗真」を拝受する。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社に入社、取締役に就任。2010年に代表取締役会長、2011年に同会長兼社長に就任
第1章 なぜ「短期移民」が必要なのか
第2章 日本人だけが知らない「観光後進国」ニッポン
第3章 「観光資源」として何を発信するか
第4章 「おもてなしで観光立国」にニーズとビジネスの視点を
第5章 観光立国になるためのマーケティングとロジスティクス
第6章 観光立国のためのコンテンツ
おわりに 2020年東京オリンピックという審判の日
要約ダイジェスト
日本人だけが知らない「観光後進国」ニッポン
人口が右肩下がりで減っていく日本で、事実を客観的に分析すると、GDPを大きく成長させていく方法はそう多くはない。その有力な1つが、人口減を補うほど多くの外国人観光客を受け入れる、つまり「観光立国」の道を歩んでいくということだ。
実は日本という国は、世界でも数少ない「観光大国」になりえる国の1つである。そう聞くと日本はすでに「観光大国」になっている、と胸を張る人もいるかもしれない。だが残念ながらそれは大きな勘違いだ。
このことは、数字にも表われている。世界経済フォーラムが発表した2015年の「観光潜在力ランキング」と、