書評『ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国』
(谷島 宣之/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
前書き
第一章 【実態】 経営と技術を巡る珍現象
第二章 【総論】 明治以来の難題に取り組む時
第三章 【原因】 「言葉のインフレ」は恐ろしい
第四章 【対策】 答えは三十年前からそこにある
後書き
著者:谷島 宣之
日経BP社日経BPビジョナリー経営研究所上席研究員兼日経BPイノベーションICT研究所上席研究員。1960年生まれ。1985年電気通信大学情報数理工学科修士課程修了、日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社、日経コンピュータ編集部に配属。日経ウォッチャーIBM版記者、日経ビズテック編集委員を経て、2007年から日経ビジネスオンライン、日経コンピュータ、ITproの編集委員。2009年1月から日経コンピュータ編集長。2013年1月から現職。

書評レビュー

日本とアメリカの「ソフトウェア開発」の実態

本日紹介するのは、30年以上にわたりITの現場を取材してきた記者による、日本とアメリカのシステム開発シーンの現状を比較した上で、日本で起きている「適応異常」の実態を明らかにした一冊です。

著者は、日経コンピュータ誌編集長を務めており、現在に至るまで30年以上一貫してITの現場を記者として取材してきた人物です。つまり、日本においてITが企業にどのような影響を与えてきたのかを間近で見てきた人物でもあります。

そんな著者が、日本と世界のITシーンを比較した際に強く思ったのが、タイトルにもなっている「ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国』ということでした。

一般的には、アメリカの企業は合理性を追求するため積極的に業務のアウトソーシングし、日本企業はあまりそれが得意でないというイメージがあるようです。

そのため、ソフトウェアの開発にあたっても、「アメリカ=アウトソーシング」、「日本=内製」のイメージが強いのではないでしょうか。

しかし、実際には、その逆で、「アメリカ=内製」、「日本=アウトソーシング」という状況にあるのです。

アメリカのソフトウェア開発のバランスを見ると、「内製4割、外注3割、パッケージソフト購入3割」であり、一方日本は、外注の比率が7割を超えているというデータがあります。

これは、アメリカがソフトウェアを競争優位の源泉と考えていることに由来しているそうです。

『どのようなソフトを開発するかにもよるが、競争優位につながるような戦略的なソフトを開発しようとするなら内製しかない。戦略的というのは事業と一体になったソフトであり、社内の事業部門と情報システム部門が議論しながら試行錯誤しつつ開発していく。これが一番速い。』

「適応異常」~日本のITの現場でいったい何が起こっているのか?

また、著者は、日本のIT業界では、「適応異常」という現象が起こっており、これが日本のITシーンの発展を妨げていると解説しています。

この「適応異常」を簡単に説明しますと、「道(解決策)は一本しかないという思い込み」何か一極に集中し、「むやみにそれにぶつかって挫折」することを指します。

例えば、よく引き合いにだされる、iPhoneをはじめとするアップル製品を見るとわかるように、部品の過半は日本製にも関わらず、完成品の観点では、日本の製品は完敗の状況にあります。

これは、技術にこだわりすぎて、完成品として販売する際の画を描くことができかなったためと言われています。また、これは経営手法についても同様であると著者は指摘しています。

『企業における一極集中のもう一つの典型例は欧米経営手法の丸のみによる食あたりである。品質管理は現場の力で消火でき、日本の強みになったが、経営よりの手法になると、その手法を導入することが目的になってしまい、効果が上がらず現場が疲弊するという事態が起きている。』

まとめと感想

本書では、ご紹介した以外にも日米のIT開発の現状がより詳細に比較され、「適応異常」の解決策として、例えば、グランドデザインの重要性を説くなど、日本のITシーンを向上させるための提言も数多く掲載されています。

競争戦略の源泉になりうるソフトウェア開発を、どのように戦略的に運用していくかを考えさせられる内容ですので、経営層やトップマネジメントの皆さんはぜひご一読ください。

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