- 著者プロフィール
第2章 科学技術の進歩で人間の寿命はどう延びるか
第3章 自然界と長寿革命
第4章 長寿は是か非か、意見の対立―長生きしても、よりよい人生を送れるか
第5章 家族が変わる
第6章 長寿社会の金銭的恩恵は?
第7章 あの世VS.この世で長生き―長寿時代における宗教
第8章 長寿社会を目指すリーダーたち
カリフォルニア州マウンテンビューにある「シンギュラリティ大学」の創立メンバー、アカデミック・アドバイザー、理事。パシフィック・リサーチ・インスティテュート(PRI)の上席研究員、ネットメディアTechNewsWorldのコラムニストも務める。メディアにしばしば寄稿し、ゲストとしても登場するほか、CNN、ロサンゼルスタイムズ紙、ニューヨークタイムズ紙、ウォール・ストリート・ジャーナル紙、USAトゥデイ紙などでその研究が紹介されている。
書評レビュー
本書は、昨今の医療技術の進歩による「超」長寿社会の到来と、それをうけて大きく変わる我々のライフスタイルを様々な観点から予測するというソーシャルサイエンス・ジャンルの一冊です。
長寿社会の常識を超える
TVやWebメディアを見ていると、時々日本人の平均寿命が延びてきているというニュースを目にすることがあります。
実際、1995年から2010年までの15年間という短い時間で、我々日本人の平均寿命は79.5歳から82.8歳と3歳も長くなっています。
さらにさかのぼると1850年アメリカ人の平均寿命は43歳でしたので、過去と比較して、現代は非常に長寿化が進んだ社会と言えます。
加えて、最近では、遺伝子治療の進歩により、動物実験において、老化の度合いまでもが自由自在にコントロールできることが証明されるなど、老化プロセスがついに改変される段階まできています。
本書によれば、このようなバイオテクノロジーの進歩により、もはや平均寿命150歳の世界も夢ではないと言われるようになっているとのこと。
また、世界的に有名な科学者が「1,000歳まで生きる最初の人間たちはすでに生まれているかもしれない」と語るなど、「超」長寿社会は身近なところにまでやってきています。
そして著者は、「長寿化」ならぬ「超・長寿化」社会では、われわれは「老年」という概念を再定義しなければならなくなる、と説いているのです。
ビジネスキャリアにおける「引退」を考える
超・長寿化により、身近なところでは、例えば企業における定年制度の見直しや家族構成の変化など、いろいろなところに影響が出てくることになりそうです。
では、ビジネスキャリアにおける「引退」や働き方にはどのような影響が出てくるでしょうか。最近のハーバード大学の研究によると、歳を取るにつれて忍耐心がまし、さらに、思慮深く未来志向の姿勢で物事に当たる傾向が強まるという結果が出ているそうです。
つまり、老化もコントロールできる平均寿命150歳の世界では、今までならリタイアしていたビジネスパーソンが、忍耐、未来志向、そして経験という武器を携えることになり、極論すれば90歳以上の企業経営者がどんどん増えてくる可能性も出てきます。
そうなると、若年層の出世への夢は遠のき、その結果、モチベーションの低下を招くことに繋がるかもしれません。
これに対して、著者はApple、Microsoft、Googleといった名だたるグローバル企業を設立したのは20代の若者だったことを引き合いにたし、このような見解を述べています。
また、寿命が150歳まで伸びれば、30年スパンで仕事を変えるといった新しいライフスタイルも生まれてくるのではないでしょうか?
まとめと感想
本書では、このようにもはや夢物語ではなくなった「超」長寿社会における金銭的恩恵、家族との関係、宗教の在り方、そして働き方などに関する幅広い予測が紹介されています。
平均寿命150歳の世界をイメージすることは、正直難しいと思いますが、「超」長寿社会を迎えた時に、何ができるのか、そして何をしたいのかを考えることは、現在の我々の生き方にも新しい視座を与えてくれるのではないでしょうか。
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