書評『ネットのバカ』
(中川 淳一郎/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 ネットの言論は不自由なのものである
第2章 99・9%はクリックし続ける奴隷
第3章 一般人の勝者は1人だけ
第4章 バカ、エロ、バッシングが受ける
第5章 ネットでウケる新12ケ条
第6章 見栄としがらみの課金ゲーム
第7章 企業が知っておくべき「ネットの論理」
第8章 困った人たちはどこにいる
著者:中川 淳一郎
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者・PRプランナー。一橋大学商学部卒業後、博報堂で企業のPR業務を請け負う。2001年に退社し、雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』等。

書評レビュー

ネット化が進むほど、現実世界の人間模様に近づく

ネットメディア界の鬼才、中川淳一郎さんの書くウェブメディア論。「ネットのバカ」とは身もふたもない言い方ですが、本書の趣旨は、簡単にいうと、次の一文がわかりやすいのではないでしょうか。

ネットがあろうがなかろうが有能な人は有能なまま、無能な人はネットがあっても無能なまま

つまり、ネット化がすすめば進むほど、現実の人間世界の様相に近づいていくということです。そして、「1クリック」や「1いいね!」、「1リツイート」は、強者をより強者にするために使われることになり、一部の著名人や有名人を除き「99.9%はクリックする奴隷」とまで言い切っています。

この論は一見暴論のようですが、広告型のビジネスモデルで運営されるウェブメディアにおいてはPV(ページビュー)こそがすべての儲けの起点になるものなので、あながち間違いではないと思います。

では、一般人はネットメディアで注目をあげていくことは難しいのでしょうか?著者は、「1ジャンルに1人の法則」と、うまく「巨大メディアに取り上げられる」ことが効果的ではないかと言っています。

「1ジャンルに1人の法則」は名前通り、【ツイッター×小学生アイドル=「はるかぜちゃん」】【ネット×積極的活動系若手女子=はあちゅう】など、ニッチなジャンルで「このジャンルならこの人」というポジショニングを取ることです。

そして、巨大メディアからアクセスと拡散を得るのに、もっとも有効なものとして、「記事がヤフートピックスに取り上げられること」を挙げています。一度取り上げられると、記事下の関連記事からリンクされたサイトは、1時間で50万アクセスを稼ぐこともあるようです。

ヤフートピックに取り上げられやすいニュースの8パターン

この書評では、本書で説明されている「取り上げられやすいニュースの法則8パターン」を紹介していきます。以下の8パターンが取り上げられているのですが、意外にもにも定番的(王道的)なニュース内容が多い印象でした。

1.専門家の存在

『「空き巣件数が増加し、さらに手口が巧妙化」といった話題に防犯アドバイザーや鍵のメーカーの人がコメントを出している』など、時事ネタ×専門家という組み合わせはTV、雑誌、新聞、ウェブ問わず、ニュースの定番形式です。

2.論争の決着

こちらも、議論が分かれるネタ×専門家という、それこそ「朝まで生テレビ」的な定番形式です。『一生涯で見た場合、持ち家が得か、賃貸住宅が得か?』というなかなか決着のつかない論争に対し、ファイナンシャルプランナー等が根拠を挙げてどちらが得かを論じる、といった例が挙げられています。

3.新しい携帯・ネット関連サービス

例えば、LTEやiPhoneの新作など話題性のある商品について。また「メールで年賀状送信できるサービス」のように意外性があり、新規性の高いものなどの人気は底堅いそうです。

4.時事性にあったノウハウ・商品紹介など

例えば、就職活動シーズンに、マナー講師が学生に対しNG事項や注意点を解説したインタビューなど、雑誌の特集のシーズン制にも似ています。

5.変化を起こした結果うまくいったビジネス例で、因果関係が明確に分析されたもの

これは、「**を改良した結果、5倍売れた」「〇〇に売り場を移した結果、前年比1.2倍の売上」など理由+結果が明示されたもので、ビジネス系の記事としてはスタンダードです。確かに原因+結果があると、「いいね!」などもつきやすいように思います。

6.誰もが知っているメジャー商品の裏側

こちらもビジネス系の記事には多い例ですが、スーパーカブ、iPhone、ガリガリ君、すき家、プリウスなど、人気商品の何らかの変化(リニューアル)や、そのヒットの裏事情などは、定番の人気記事だといいます。

7.そのジャンルの記事があまり他メディアから配信されない場合

例えば、今となってはあまり注目はされないが、一世を風靡した芸能人についてなど、タイミングよく目にすると思わずクリックしてしまう方が多いようです。TVでも、絶妙なタイミングで「あの人は今」番組が放映されています。

8.ちょっとしたトリビア

これはライフハック系記事とおなじく、ヒマな時についつい読んでしまう記事です。『牛丼チェーンの「つゆだく」の期限を調べた記事』などが挙げられます。いかがでしたでしょうか?本書では「炎上」やネット・リテラシーに対する記事も多く、ネットの「お作法」に詳しくない方や、企業のPRやマーケティング担当の方に参考になるはずです。

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