書評『カリスマ社長の大失敗』
(國貞文隆)著

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 いつだって「失敗」が成功を生んできた!
第2章 スタート地点でつまずいた社長たち
 小林 一三(阪急グループ創業者)
 井深 大(ソニー創業者)
 稲盛 和夫(京セラ創業者)
 市村 清(リコー創業者)
 「三愛ビル」はリコーグループ
 石井 久(立花証券創業者)
 石橋正二郎(ブリヂストン創業者)
 ジャック・ウェルチ(GE元会長)
 土光敏夫(石川島播磨重工業元社長、東芝元社長、経団連元会長)
第3章 ビジネスで失敗した社長たち
 松永安左ヱ門(電力王)
 福武哲彦(ベネッセ創業者)
 五島慶太(東急グループ創業者)
 松下幸之助(パナソニック創業者)
 鮎川義介(日産グループ創業者)
 三島海雲(カルピス創業者)
 早川徳次(シャープ創業者)
 樋口泰行(マイクロソフト社長)
 増田 宗昭(CCC会長)
 鈴木幸一(IIJ会長)
 スティーブ・ジョブズ(アップル・コンピュータ創業者)
 星野佳路(星野リゾート社長)
 藤田晋(サイバーエージェント社長)
第4章 社長たちの「遅咲きブレイクスルー」
 本田宗一郎(ホンダ創業者)
 藤田 田(日本マクドナルド創業者)
 飯田 亮(セコム創業者)
 鈴木敏文(セブン&アイ会長)
 出井伸之(ソニー元会長)
 武田國男(武田薬品元会長)
 渡邉恒雄(読売新聞会長)
第5章 ソフトバンク孫正義と、ユニクロ柳井正の失敗学
 孫 正義(ソフトバンクグループ創業者)
 柳井 正(ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長
著者:國貞文隆
 1971年生まれ。学習院大学経済学部卒業後、東洋経済新報社記者を経て、コンデナスト・ジャパンへ。『GQ』の編集者としてビジネス・政治記事等を担当。数多くの経営者に取材。明治、大正、昭和の実業家や企業の歴史にも詳しく、現代ベンチャー経営者の内実にも通じている

書評レビュー

カリスマ経営者の「大失敗」の教科書

本書はいわゆるカリスマ社長のエピソード集です。タイトル通り「失敗」にフォーカスをあてた内容が特長です。著者は、東洋経済新報社での記者、雑誌「GQ JAPAN」の編集者を経てフリーのジャーナリストである國貞文隆氏。

30人ほどの社長の「失敗」がこれでもかと取り上げられており、一人一人のエピソードは約10ページ以内程度にまとめられており、読みやすい構成となっています。

一読してみると、「失敗」がある程度パターン化できるのではという感想を持つと思います(例えば慢心によるもの、資金調達など資金繰りミスによるもの…など)。そのような読み方をしても面白いのではないでしょうか。

本書から特に印象に残ったエピソードを紹介していきます。福武書店(現ベネッセ・コーポレーション)を創業した福武哲彦氏に関する章です。

実は一度倒産している福武書店創業者

今や4,000億円以上の売上規模となったベネッセですが、創業者の福武哲彦氏は、いちど倒産を経験しています。

もともとは小学校教師であった福武氏は教育関連の出版社を設立します。1949年に「富士出版」(富士山にちなんで日本一を目指す)という名前で設立し、小学生向けのドリルやテキストが当たり、一気に業績が拡大します。

普通であれば、これがのちのベネッセの母体となるかと思いますが、そうではありません。売上が急拡大した結果、集金が遅れがちになり、もっと売ってそれを取り返そうとしますが、資金繰りに苦しみ、高利貸し、妹の嫁ぎ先、PTAまで借金を繰り返すものの、1954年に倒産します。

これは典型的な資金繰り倒産(売上は立っているものの、入金が遅れ支払が滞る)だったようです。そのときの悲惨な状況がこのように書かれています。

「倒産すれば当然、周りの態度は変わる。「社長」が「こら、福武」になり、給料の遅配もあったから詐欺・横領で告訴もされた。味方も離れていく。その様相はまさに地獄。

哲彦は、「死ぬぐらい簡単なことはないわ」と思ったという。死ぬ方がまだマシだと思うくらい追い詰められていた。(中略)さらには、大口債権者が哲彦の部下を役員にして同名の出版社を作り、商標や在庫、取引先をすべて奪ってしまう。

「東京や大阪へ出てこい」と友人から誘いの声もあったらしいのですが、それでもあえて福武氏は郷里である岡山から逃げなかったといいます。それはなぜか?本書ではこのように書かれています。

困難な道とそうでない道の二つの選択肢があった場合、多くの成功者はあえて困難な道を選んでいる。哲彦も例外ではなかった。

生徒との双方向性に舵を切り軌道にのった進研ゼミ

そして、妻の実家の離れの四畳半で、他社が真似をしないような商品を日夜追求し、「生徒手帳」と「年賀状の手本集」というオリジナル商品で再起をはかります。

そして、それがまたヒットとなり、福武書店を創業するのですが、ここで前回の倒産の失敗を活かしています。つまり、入金が早く全国展開できるもので考えた結果、「模試(模擬試験)」事業に注力し、再び業績を急激に伸ばします。

そして次に展開した「通信添削」(進研ゼミの前身)でも、教育界からは「テスト屋」と呼ばれ、出版界からも「純粋な出版社ではない」と軽蔑されるなど苦労します。しかし生徒との双方向性(雑誌、参考書、悩み相談などのコミュニケーション)を志向した結果、順調に軌道にのりはじめました。その時のことはこのように書かれています。

哲彦はこの事業を『はじめのうちはお金がすべてという気持ちがありました』と語っている。一方通行でやっているときは金儲けが先行し、失敗だらけ。ところが、双方向に舵を切ったら、仕事が軌道に後始めたのである。

今でもそうだが、金儲けだけを考えているようでは、ビジネスは長続きしない。お客様のことを考える、つまり顧客満足度を高めることこそが成功への近道となる。そうやって哲彦の道が開けたのは、50代のとき。彼の場合はそこから飛躍への道が始まった。倒産という大きな「失敗」は人間を鍛える。

顧客満足度の追求というのは、よくいわれることですが、福武氏の壮絶な倒産エピソードからによって、やはり利益追求だけでは駄目なのだと痛感します。また、50代から実業家人生が飛躍していくというのは、心強いエピソードではないでしょうか。

30人の社長が取り上げられているので、読む人によって数人は心動かされるエピソードに出会えると思います。場合によってはすでに知っている事例もあるかもしれませんが、企業やベンチャーを志す方は読んでおいて損はない一冊です。

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