書評『振り切る勇気 メガネを変えるJINSの挑戦』
(田中仁/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
はじめに
1章 セピア色と有頂天の起業
2章 メガネとの出合い
3章 株価低迷、買収提案
4章 起死回生
5章 メガネの常識を打ち破る
6章 購入体験も変える
7章 ウェアラブルの先を行く
8章 世界に打って出る
おわりに
著者:田中仁
株式会社ジェイアイエヌ代表取締役社長。1963年、群馬県生まれ。1988年ジェイアイエヌを設立、代表取締役社長に就任。2001年アイウエア事業「JINS」(ジンズ)を開始し、2006年大証ヘラクレス(現JASDAQ)に上場。2011年『Ernst&Youngワールド・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー2011』モナコ世界大会に日本代表として出場。2013年東京証券取引所第一部に上場した。

書評レビュー

JINS創業者の経営論

本書は、PCメガネ「JINS PC」で一躍有名となった株式会社ジェイアイエヌ(以下JINS)創業者・田中仁氏の半自伝的経営論です。

JINSといえばPCのブルーライトをカットし、目の疲れを軽減するという「JINS PC」のヒットが記憶に新しいと思います。眼鏡販売マーケットが縮小する下がり続けるなか、市場をゼロから生み出した例としてマーケティング事例としても有名です。

「JINS PC」の累計販売本数350万本、企業としてもこの10年で売上げが40倍となり、売上360億円を超える規模となったJINSですが、著者であり創業者の田中仁氏が、起業家として順風満帆の人生だったわけではありません。

本書では、ほぼ個人事業主のような形から事業をはじめ、親戚から借りた100万円でなんとか資金繰りをしていたような状況から、東証一部上場、販売本数日本一(2013年)となるまでの浮き沈みが包み隠さず語られています。

著者自身「本を出すのはまだ早いのではないか」と感じながらも、本書を執筆するに至ったのも、自らの失敗経験から少しでも世の中の役に立つのであれば、というきっかけだったといいます。

株価低迷、買収提案からの復活

例えば、起業後もジェイアイエヌには2009年まで会社にはビジョンというビジョンがありませんでした。その頃、著者はJASDAQに上場したものの、事業戦略の失敗やリーマン・ショックから買収提案や株価低迷に悩んでいたといいます。

そんな中、ユニクロ(ファーストリテイリング社)の柳井会長に話を聞く機会がありました。そこでは、会話のキャッチボールどころではなく「千本ノック」のように、質問をはさむ暇もなく、柳井氏に「事業価値」「ミッション」「株価」について問い詰められるという体験をしています。

それに対してほとんどまともに答えることができず、蒼然として帰宅した著者はそのまま翌日の午前中まで寝込んでしまい、このように考え続けたそうです。

「わが社は何のために存在しているんだろう。僕らは何のために働いているのだろう。これが定まらなければ、会社を続けていく意味はない」

そして、JINS経営陣でのビジョン策定合宿を経て、「メガネをかけるすべての人に良く見えるx良く魅せるメガネを、市場最低・最適価格で、新機能・新デザインを継続的に提供する」というビジョンが策定されました。

その後「追加料金なしの均一価格」「Air Frame(超軽量メガネ)「JINS PC」「企業体質の改善」などの施策や商品を矢継ぎ早にヒットさせ、業績をV字回復させています。当時の著者の葛藤を含め非常に臨場感ある内容となっているので、ぜひ本書で確認してみてください。

タイトルともなっている「振り切る勇気」とは、このような経験を経て、「ここぞというときに」にフルスイングで勝負に出るという著者の勝負感を表しています。ほかにも著者が何度もどん底ともいえる状況をいかに逆転してきたかが伝わるエピソードが語られています。

まとめと感想

余談ですが、著者は最終章で、シリコンバレーを訪れた際、「自分もまだまだ何かできそうだ」と感じ、「単純な話だが、気候がよいからかもしれない」と述べています。

これは「できそうな気持ち」の重要性を語っているのですが、同意見を先端科学ベンチャー「リバネス」の丸幸弘社長も語っています(参考:『シリコンバレーがすごいのは人ではなく天気だ!』)。こんなところからも著者のスケール感が伝わるのではないでしょうか。

本書ではほかにも、現在開発中だというGoogleグラス(Googleのウェアラブルデバイス)の先を行く興味深いメガネ、JINSの「サイエンス」を取り入れた戦略、プロモーションや世界展開などが著者自身の言葉により解説されています。

非常にテンポ良く読め、まさに現在進行形で成長を続ける事業と社長を活写した一冊となっています。起業を志す方だけでなく、企業内にてリスクを恐れず事を成そうとしている方にお薦めです。ぜひ手に取ってみて下さい。

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