書評『成果が出ないのは、あなたが昔の「燃費の悪いアメ車」な働き方をしているからだ』
(林總/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
Prologue ニセ看護師と金満病院経営者
第1章 500万円の金婚旅行――「使命」のためなら赤字でもかまわないのか
第2章 「今月から給料カットだ」――コストカットが赤字を増やすパラドックス
第3章 大介の決断――黒字でなければ生き残れない
第4章 西園寺のレクチャー――なぜ病院は入院患者を追い出そうとするのか
第5章 再建のカギ――病院は燃費の悪いアメ車なのか
第6章 最後の問題――知識労働者と肉体労働者
第7章 新生・佐原病院――知識労働者の生産性イノベーション
Epilogue 馬淵美子の手紙
著者:林 總(はやし あつむ)
 公認会計士、経営コンサルタント、LEC大学院教授(管理会計事例)。経営コンサルティング、執筆、講演などを行っている。
著書に、ベストセラーとなった『ドラッカーと会計の話をしよう』のほか、『世界一わかりやすい会計の授業』(以上、KADOKAWA 中経出版)、『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか?』『50円のコスト削減と100円の値上げでは、どちらが儲かるか?』『[新版]わかる! 管理会計』(以上、ダイヤモンド社)、『会計物語 会計課長団達也が行く』(日経BP社)、『正しい家計管理』(WAVE出版)など多数。

書評レビュー

「病院」を舞台とした、ドラッカーと知的生産の授業

本書は、公認会計士、経営コンサルタント、そしてベストセラー作家でもある著書が、「働き方」をイノベーションするために、会計×ドラッカーによる「知的生産性を高める」方法をストーリー形式で解説した一冊。

本書は、著者のベストセラーとなった『ドラッカーと会計の話をしよう』の続編として執筆されたものです。今作では『病院』を舞台に、小説のようなストーリー形式で組織の知的生産性を高める方法を説明しています。

本書の主人公は、医師・三郷大介。彼は、病院の利益にこだわり治療をないがしろにする勤務先の理事長である佐原巌一郎と決別を決め、新天地ロンドンへと向かいます。

そして、西園寺と名乗るコンサルタントと機上にて出会い、『君も理事長も、会計と経営のことは、まったくわかっていないようだ』という彼の言葉と共に、「ドラッカーと知的生産の授業」が始まるのです。

営利組織と非営利組織の共通点

『西園寺「ボクは病院のことは素人だ。だが、経営のことはわかっている。そして、経営に関するかぎり、事業会社も病院も変わりはない」』

著者は本書において、二つのテーマを取り上げたといいます。その一つが、『営利、非営利を問わず、組織の目的は「顧客の満足」でなくてはならない』ということです。そして、この目的を果たすためには絶え間ないイノベーションが不可欠です。

また、両者に共通しているのは、財務的成果である利益は前提であり、目的ではないということです。

すなわち、営利組織も非営利組織も共通して、事業を存続させるには黒字であることが前提であり、また黒字を達成するには短絡的なコストカットではなく、顧客の満足とイノベーションを追求しなければならないと説いています。

『西園寺「彼らはコストではなく、価値を生み出す資本財だったのだ。」』

そしてもう一つ、著者がメインテーマとして取り上げているのは「知識労働者の生産性」についてです。著者が本書を執筆するきっかけとなったのは、上述した「病院のような非営利組織は赤字でも仕方がない」という世間の常識に対する疑問だったといいます。

そこで著者が考えたことは、なぜ高学歴の人材が集まり、高額の先端設備を必要とする病院や企業の研究開発部門といった組織は、共通して期待した成果が上がっていないのか、ということでした。

この点についてドラッカーは、組織でおこなわれる労働は、肉体労働と知識労働から成り立っており、知識労働の生産性を高める方法は肉体労働の生産性とは根本的に異なるとしています。

それにも関わらず、ほとんどの組織では知識労働に関する生産性について何ら有効な改善策を持たず、肉体労働の生産性概念にとらわれていることから、組織の停滞、ひいては生産性の低下を余儀なくされていると述べています。

まとめと感想

本書では、知識労働者を肉体労働の生産性概念から切り離して考え、どのように個人および組織の生産性を高めていくのかについての考えも提示されています。

また本書の特長として、ドラッカーをベースにした経営思想が語られているだけでなく、より具体的な売上げや利益を出すための数字の考え方について、病院経営の例を用いながら触れられている点が特長です。

ドラッカーにふれたことのない方はもちろん、組織の生産性向上や利益の生み出し方に課題をもたれている経営層、マネジメント層の方々にお薦めしたい一冊です。ぜひ手に取ってご一読下さい。

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