書評『未来を切り拓くための5ステップ: 起業を目指す君たちへ』
(加藤 崇/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 いつ始めるのか?なぜ始めるのか?
(世界を変えた起業家たち/起業家の三類型「オタク型」「生活型」「使命型」 ほか)
第2章 誰と作るのか?何を作るのか?
(一人で始めるより、二人で始めよう/目の前の世界が、「他人ではなく自分にとってどう見えるか」が何よりも大切 ほか)
第3章 誰に、どうやって売るのか?
(起業家が体系的にものを売るための、いくつかのステップ/まず、「何度も何度も断られる」ことを計画に織り込んでおこう ほか)
第4章 どうやって会社を大きくするのか?
(最初は自分や家族のお金でスタートするのが基本中の基本/共同創業者たちの悩み:誰がリーダーシップをとるべきか? ほか)
第5章 いつも覚えておきたいこと
(自分は本当に十分なリスクを取ってきただろうか?と時々振り返ろう/偉い人だからこそ未来を予測できないことを頭に入れておこう ほか)
著者:加藤 崇
246キャピタル株式会社 代表取締役
株式会社加藤崇事務所 代表取締役
1978年東京都武蔵野市生まれ。早稲田大学理工学部応用物理学科卒業。オーストラリア国立大学経営学修士(MBA)。
株式会社東京三菱銀行、KPMG日本法人を経て、技術系ベンチャー企業の代表取締役(社長)、高級スーパー「成城石井」と焼肉の「牛角」の持株会社役員などを歴任し、株式会社加藤崇事務所を設立。その後、2名の東大助教と共にヒト型ロボットベンチャーの株式会社SCHAFTを共同創業、取締役CFOとして米国Google, Incへの売却に成功。

書評レビュー

ロボットベンチャーをGoogleに売却した日本人起業家

本日ご紹介するのは、ヒト型ロボット開発ベンチャー「SCHAFT(シャフト)」社を技術者とともに創業し、Googleへと売却した起業家の加藤氏が起業のノウハウのすべてを一冊にまとめた本。

著者の加藤氏は、金融機関をキャリアのスタートに、MBA取得を経て、企業再生、IT企業役員、ベンチャー企業経営、SCHAFT社共同創業など、30代半ばにして豊富な経営経験を持った人物。現在では投資家としても活躍されています。

本書は著者が数年前に個人出版した著書が、「完全無欠の起業バイブル」として元マイクロソフト日本法人代表でHONZ代表の成毛眞氏の目にとまり、新潮社から再度出版されたというといういわくつきの一冊です。

ベンチャー界隈で大きなニュースにもなった、「SCHAFT」社の買収は、創業から1年半というスピードでの出来事でした。著者はその成功要因にも触れながら、『僕が書きたかったのは、旧態依然とした経済・社会システムから飛び出し、個人の力を最大限に発揮して生きる方法論だった』と語っています。

実際に、極めて優れた技術力を持っていたSCHAFTの創業では、巨額の資金と年月を要し、まだ存在していないヒト型ロボット産業を立ち上げようとするSCHAFT社に対し、政府系を含むベンチャーキャピタル、中央官庁、大企業の新規事業部門などからは出資が得られなかったいいます。

そして米国国防省高等研究計画局(DAPRA)からの補助金審査に通り、潤沢な研究開発予算を手にして成長軌道を描きますが、結果として「見逃し三振」してしまった日本の経済・社会システムを変えたいという想いも、本書の執筆の動機となったと語っています。

本書では、著者がシリコンバレーで見聞きし、また自らも企業再生、ベンチャー経営者として経験してきた、起業の可能性を高めるパターンが、以下の5つの観点から解説されていきます。

・いつ始めるのか?なぜ始めるのか?
・誰と作るのか?何をつくるのか?
・誰に、どうやって売るのか?
・どうやって会社を大きくするのか?
・いつも覚えておきたいこと

起業とは、正解を自分でつくる仕事

では、そもそも起業をするとはどういうことなのでしょうか?また、起業家としてのマインドは、通常の大企業経営者とはどう違うのでしょうか?

著者は知人であり創業した三つの会社のうち二社を大手企業に売却した連続起業家の言葉を以下のように紹介しています。

「いいかい、ビジネスのほとんどすべては、論理なんかでは導かれないんだ。だから起業家にとっては、積極的にグレーエリア(正解がない、白黒はっきりしない世界)を突き進んでいくことが何よりも重要なんだ。白黒つかないグレーなものに対応する力をつけ、グレーエリアの中を生き抜くんだよ。」

著者は、このマインドこそがすでに多くのお客さんが存在している市場(競争環境が変化しないことを前提としている)企業との違いだといいます。

そして「曖昧さに対する耐性」「予測不可能な事態に対して積極的に挑戦すること」が米国シリコンバレーに流れている、起業家の行動原理のひとつであると述べています。

まとめと感想

後書きで、「一度目の起業をするためには、この書籍の内容を読むだけで十分なのだ」と書かれているように、本書では上述のようなマインド的な部分だけでなく、創業、人材集め、資金調達、人材採用からマーケティングまで、ノウハウが豊富に詰まっています。

そして「この書籍を読むだけで十分」とは、著者の想いである、事前に100%すべてを学ぶことはできないからこそ、一人でも多くの若者や企業人が早いタイミングで多くの失敗を経験し、修正していくプロセスでもあります。

起業に興味がある方にはもちろんお薦めですが、むしろいわゆる旧態依然とした業界にいらっしゃる方にもぜひご一読頂きたい一冊です。

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