書評『郭台銘(かくたいめい)=テリー・ゴウの熱中経営塾』
(張殿文/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
序章 4つのもしも
第1章 スピード
第2章 人才
第3章 柔軟性
第4章 逆境
第5章 イノベーション
著者:張殿文
 イギリス・リヴァプール大学企業管理修士、中国復旦大学博士課程修了。大手マスメディアの文芸・スポーツ・財界各分野に担当し、継続して啓発的な華人の発掘と執筆を行ってきた。

書評レビュー

台湾の町工場を売上高10兆円の世界的企業に成長させた経営者

本書はシャープを買収しようとした台湾の精密機会メーカー鴻海(ホンハイ)精密工業のトップである「郭台銘(かくたいめい)」氏の経営論・仕事術をまとめた一冊。台湾NO.1の経営者とも言われる郭氏の経営語録として、台湾でベストセラーになっています。

鴻海(ホンハイ)精密工業と言えば、日本の総合家電メーカーであるシャープを実質的に買収しようとした企業として、ご存知の方も多いはず。買収騒動時の両社の売上高を比較してみると(日本円換算)、シャープが約2.5兆円に対して、鴻海は約10兆円と4倍以上の規模でした。

日本のメーカーで、鴻海を超える売上高をあげているのはトヨタだけと聞けば、鴻海の企業規模の大きさがお分かりいただけるのではないかと思います。

これだけの企業規模を誇る鴻海(ホンハイ)ですが、その製品についてはあまり知名度が高くありません。

これは鴻海(ホンハイ)がファブレスメーカーなどに代わって製品を作るEMS(電子機器受託製造)メーカーであり、自社ブランドがあまり表に出ないためです。

現在では、アップルのiPhoneをはじめ、HP、インテル、ソニーなど錚々たる企業に製品を提供するなど、グローバル展開を進める鴻海ですが、元はテレビ部品の町工場からスタートしています。

鴻海が、台湾の町工場から、売上高10兆円超のグローバル企業へと上り詰めた理由、それは、トップの「郭台銘」氏の経営手腕によるところが非常に大きかったのです。

本書では、郭氏の30年以上にも渡る経営者としての経験をベースに、郭氏の経営論、仕事術、ビジネスマインドのエッセンスが、「郭台銘語録」として約90個収録されています。

製品を売らずにスピードを売る

一般的に、メーカーと言えば、自社の主力製品やフラッグシップとなるブランドやモデルを持っており、「何の製品を売っているのか?」という質問に対しては、「弊社ではパソコンを主力製品としています」もしくは「○○というブランドを展開しています」と回答する企業が多いと思います。

アップルでは、iphoneやMac、ソニーではPS(プレイステーション)と答えるかもしれません。しかし、EMSとして大手メーカーの黒子に徹し、大きく業績を伸ばしてきた鴻海のトップである郭氏は、「何の製品を売っているのか?」という質問に対して、「私は製品を売らない。スピードを売っている。」と答えるそうです。

『科学技術のメーカーが10年後の変化を先んじて洞察できれば、当然先に突き進めるが、競合相手が悟ってから急に追いかけようとするとき、すでに戦略の重要性は後退し、逆にスピードや執行力が肝要になる。』

鴻海が数多くのグローバルメーカーのEMSとなれたのは、他社の追随を許さない早さで製品を量産ラインにのせることができたためと言われています。

特に、プロダクトライフサイクルが年々短くなる昨今においては、スピードがなければ受注ができないという強い危機感を、トップである郭氏が持っていたからこそ、現在の鴻海の成長があります。

まとめと感想

本書では、今回ご紹介したものの他に、鴻海が特に重視している人材育成・登用論、逆境で生き抜くためのマインド、鴻海が起こしてきたイノベーションの数々が、「郭台銘語録」とともに紹介されています。

本書は、鴻海を台湾の町工場から10兆円企業にのしあげた郭氏の経営にかける情熱や合理性を追求した思考を見ることができる一冊であり、日本や欧米の経営者とは一味違った経営観が紹介されていますので、経営層を中心に、多くのビジネスパーソンに参考となる一冊と言えそうです。

新刊ビジネス書を「要約」でチェックできるプレミアム版も人気です

book-smartとは