書評『勝つまでやめない! 勝利の方程式』
(安藤 宏基/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 「安く作って安く売って儲ける」ビジネスモデルとは。
第2章 マーケティングはアートである。
第3章 世界を制す、ニッシン・ドットコム。
巻末対談 佐藤可士和VS安藤宏基「グローバルブランド戦略をいかに進めるか」
著者:安藤宏基
 日清食品ホールディングス代表取締役社長CEO。1947年大阪生まれ。71年慶應義塾大学商学部卒業。73年日清食品入社。85年代表取締役社長。97年カンヌ国際広告映画祭「ADVERTISER OF THE YEAR」受賞。05年藍綬褒章。06年慶応義塾評議員。07年公益財団法人安藤スポーツ・食文化振興財団理事長。世界ラーメン協会(WINA)会長。08年から日清食品ホールディングス代表取締役社長CEO。ほかに一般社団法人日本即席食品工業協会理事長、日本経済団体連合会常任幹事、国際連合世界食糧計画WFP協会会長、日本陸上競技連盟評議員、内閣府食育推進会議専門委員など。

書評レビュー

「勝つまでやめない」日清の経営哲学

本書は「カップヌードル」でおなじみ「日清食品」の代表取締役CEO安藤宏基氏が、自らの経営哲学と製品開発・マーティング戦略論を情熱的に語った一冊です。

著者の父、日清食品の創業者・安藤百福氏は、日本が世界に誇るインスタントラーメン「カップヌードル」を世に送り出した人物であり、その名は世界中で知られています。

そんな偉大な人物の後を継いだ著者は、二代目社長という地位に甘んじることなく、むしろ先代を超えようと、「日清焼そばUFO」や「どん兵衛」など様々なヒット商品を世に送り出しています。

そんな著者の経営哲学の根幹にあるのは、「勝つまでやめない!」というブレない意志でした。

『あえて、私は勝ちにこだわる。理由は簡単である。競争から逃げ出したくないからだ。競争こそが技術革新を生み、市場を大きくする。あいまいな目標を掲げるよりも、勝つことに執着することが「ブレない経営」につながると信じている。(中略)

「勝つ」とは、他社を圧倒的に上回る「強さ」を持ちながら、なおかつ、「新たな強さ」を生み出す挑戦を絶えまなく続け、長期的に成長を持続することである。』

こちらを見ただけでも、著者の会社経営にかける「情熱」がお分かりいただけるのではないでしょうか。

「カップヌードル・シンドローム」からの脱却 ~ハイスピード・ブランディング・システム~

著者は、インスタントラーメンは日清食品が開発したにも関わらず、世界的にみれば同社のシェアが5%にも満たない状況を冷静に俯瞰したうえで、社員がもっとハングリーにならなければ国際競争に勝ち残れない、という強い危機感を表しています。

この社員の危機感のなさは、圧倒的なカリスマを発揮した先代が世に送り出した、「カップヌードル」という「トップブランドへの甘えの構造」に起因していると著者は述べています。

つまり、「カップヌードル」という、知名度も高く安定的な収益源があるために、「イノベーションを起こさず、今のままでもやっていけるんじゃないか」という空気が社内に漂い、その結果、会社の勢いが削がれてしまっている状況にあったのです。

著者はこれを、「カップヌードル・シンドローム」と呼んでいます。この「カップヌードル・シンドローム」から脱却し、イノベーティブな組織を作るために、「新製品を3か月で開発・上市させる」という「ハイスピード・ブランディング・システム」を整備することにしました。

新技術を導入した場合の開発・上市期間が1年から2年だったことを考えると、「新製品を3か月で開発・上市させる」ことのインパクトの大きさがお分かりいただけると思います。

そして、著者は創業から50年以上続いてきた社内システムや業務システムに大きくメスを入れたのです。

『これが成功すれば、日清食品は創業55年目にして、安藤百福の作った事業構造と開発コンセプトの呪縛から解き放たれ、新しい次元のビジネスモデルに突入することになる。

私自身にとっても、社長に就任して以来30年間、「カップヌードルをぶっつぶせ」と叫んで、もぐらのように一途に、インスタントラーメンをせっせと掘り続けてきたその進化が問われることになるのである。』

まとめと感想

他にも開発エピソードとして、ノンフライ袋めん「マルちゃん正麺」対「日清ラ王」の闘いや、「カップヌードルごはん」の誕生秘話などが多数紹介されており、これらからも、いかに日清が「売れる商品」の開発に全社一丸となって取り組んでいるかが見て取れます。

特に「カップヌードルごはん」の誕生秘話は、インスタントライスで一度大きな投資損失を出してから捲土重来を期して大ヒットに繋げていますので、まさしく、著者の信念でもある「勝つまでやめない」を体現しているエピソードとして非常に印象に残りました。

日清食品の経営哲学、製品開発戦略、マーケティング戦略が豊富な事例とともに紹介されていますので、トップマネジメント、製品開発担当者、マーケターの方にお薦めしたい一冊となっています。

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