書評『オープン&クローズ戦略 日本企業再興の条件』
(小川 紘一)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 エレクトロニクス産業の失敗を超えて
第2章 製造業のグローバライゼーション
第3章 欧米企業が完成させた「伸びゆく手」のイノベーション
シスコシステムズの事例
アップルの事例
インテルの事例
第4章アジア諸国の政策イノベーション
トヨタの事例/三菱化学の事例
第5章アジア市場で進む日本企業の経営イノベーション
第6章オープン&クローズ戦略に基づいた知的財産マネジメント
我が国製造業の再生に向けて
補論 IoTとインダストリー4・0をめぐって
おわりに 2025年の日本
著者:小川 紘一
 東京大学政策ビジョン研究センター・シニアリサーチャー、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構アドバイザー、株式会社ドリームインキュベータ特別顧問、関西学院大学客員教授、株式会社小川国際経営研究所所長。1944年宮城県生まれ。1973年明治大学大学院工学研究科博士課程修了(工学博士)、株式会社富士通研究所研究部長を経て、富士通株式会社の事業部長、理事を歴任。2004年東京大学ものづくり経営研究センター特任研究員、東京大学知的資産経営総括寄付講座の特任教授などを経て現職。

書評レビュー

ビジネスモデルを再構築せよ

本書は、東京大学政策ビジョン研究センターにてシニア・リサーチャーを務める小川紘一氏が、日本の製造業が置かれた現状を新しい枠組みの中で分析し、日本企業の復興に向けた処方箋を提案する一冊。

日本の製造業をはじめとする多くの産業は、市場撤退を繰り返し、長らく停滞の一途を辿っています。

その一方で、アップルやインテルといった企業は知的財産戦略である「オープン&クローズ戦略」を活用し、多くの関連企業を巻き込んでいくことによって、ビジネスのエコシステムを確立することに成功しています。

これをうけて著者は、日本の製造業は、これまでのように特許の数や質を競う政策だけでなく、その特許を活用したビジネスモデルや成長戦略を考え出さなければならないと主張しています。

“国や企業は、製造業のグローバライゼーションが急速に進むことを前提に、オープン&クローズの考え方を駆使し、新興国の成長を自社/他社の雇用と経済成長へ結びつける仕組みを構築する必要がある。”

では、本書のタイトルにもなっている「オープン&クローズ」戦略とはなにか、著者は以下のように定義しています。

オープン&クローズ戦略とは?

「オープン&クローズ戦略」とは、以下の2つの仕組み作りを組み合わせながら、大量普及と高収益をグローバル市場で同時実現させる戦略であるとしています。

オープン:
製造業のグローバライゼーションを積極的に活用しながら、世界中の知識・知恵を集め、そしてまた自社/自国の技術と製品を戦略的に普及させる仕組みをつくること。

クローズ:
価値の源泉として守るべき技術領域を事前に決め、これを自社あるいは自国の外へ伝播させないための仕組みをつくること。

詳細は本書に譲りますが、この戦略を考えるにあたって著者が新たに提起しているのが「伸びゆく手」という概念です。これは、製品を生み出す際に大規模な分業型へと転換するとき、自社のコア領域からサプライチェーンに向けて強い影響力を持たせる仕組みです。

これが形成されることによって産業全体のイノベーションの方向性を主導できるだけでなく、サプライチェーンを担うそれぞれの企業の技術イノベーションをも方向づけることが可能となるのです。

本書では、欧米企業に焦点を当てながら、オープン&クローズ戦略における経営思想や「伸びゆく手」の形成について、数多くの具体的な企業事例を用いて詳細に紹介されており、日本の多くの製造業が勝ちパターンを失ったメカニズムが理解出来る内容となっています(一方で、日本企業におけるオープン&クローズ戦略の成功例も挙げられています)。

また、日本がオープン&クローズ戦略を活かし、新たな勝ちパターンを構築するための人材要件・チーム要件にも触れ、その具体的な育成方法についても言及がなされています。

製造業のグローバライゼーションは2000年頃に発生して以来、あらゆる産業に急激な拡大を見せており、製造業以外の業界に与える影響も大きなものとなってきていると考えられます。

そのため、業界関わらず、今後の経営における重要な道標として、また企業の人材育成における新たな基準として、参考にすべき点が非常に多い良書となっています。

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