書評『ぼくらの新・国富論 スタートアップ・アカデミー』
(並木 裕太/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
LESSON 0 変わりゆくビジネスマインド
LESSON 1 ニッポンの起業、その現在 なぜ日本からFacebookは生まれないのか?
LESSON 2 再生へのソリューション 日本の大企業における問題点をあぶり出す
LESSON 3 21世紀のビジネスチャンス イノヴェイションはなぜシリコンヴァレーから生まれるのか
LESSON 4 変革の予兆がみえた 新しいTOKYOヴェンチャーシーン
LESSON 5 ニッポンは誰を必要としているか? 企業、大学、投資家、社会が育てるべき人材
LESSON 6 ステップゼロの存在でありたい マネジメントコンサルの新機軸を目指して
AFTERWORDS 解題 これから日本はどこへ向かうべきか?
特別対談 並木裕太×若林恵(「WIRED」編集長)
著者:並木裕太
フィールドマネージメント代表取締役社長
1977年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。ペンシルヴェニア大学ウォートン校でMBAを取得。2000年、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社後、最年少で役員に就任。09年にフィールド・マネージメントを設立。日本航空をはじめ、ソニー、楽天といった日本を代表する企業のステップゼロ(経営コンサルティング)を務める。著書に『ミッションからはじめよう! 』『日本プロ野球改造論』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

書評レビュー

日本と世界の「ヴェンチャームーブメント」の違い


本書は、気鋭のコンサルタントとして活躍中の「並木裕太氏」とテクノロジーメディア「WIRED」のコラボ企画として執筆された、日本発イノヴェイションの必要性と日本企業が持つべきヴェンチャー精神をアツく解説した一冊です。

並木氏と言えば、コンサルティングファームのマッキンゼーで最年少役員に就任し、その後独立して設立したフィールド・マネージメントでは、経営再建を果たした日本航空(JAL)をはじめ日本を代表する企業をクライアントにもつ、新進気鋭のコンサルタントです。

このフィールド・マネージメントでは、ヴェンチャー企業によるビジネスイノヴェーションを企業の新規事業開発に活かすことができるように、専属担当者を置き、シリコンヴァレーの状況をつぶさにキャッチアップしています。

著者自身も、エンジェル投資家としてヴェンチャー企業に出資した経験をもっています。そんな著者からみると、日本と世界でヴェンチャー企業を取り巻く環境は、まったく異なると述べています。

例えば、就職人気企業ランキングですが、日本では生命保険会社をはじめとする「安定」した「老舗大企業」が上位を占めます。一方でアメリカでは、グーグル、アップル、アマゾン、フェイスブックといった、いわゆる「ヴェンチャー」企業が名を連ねます。

これは大企業じゃないかとおっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが、フェイスブックは2012年に上場したばかりであり、グーグルも設立からまだ20年もたっていない新興企業なのです(1998年設立)。

また、日本では、ライブドア事件の影響などから、日本では、起業へのリスペクトが欧米と比較して著しく低いというアンケート結果や、アーリーステージの起業家をサポートするエンジェル投資家が欧米に比べて少ないという調査結果も出ています。

このように、日本では世界と比較してヴェンチャームーブメントが起こりにくい環境にあり、これが、日本の活力を奪ってしまっているのではないかという問題意識を著者はもっています。

これを解消するために、教育、政策を始め、「イノヴェイション」を起こしやすい土壌を日本に作るべきだと著者は提言しています。

『わたしはビジネスの世界においては、ヴェンチャービジネスを積極的に育成し新陳代謝を活発化させ、常にイノヴェイションが生まれやすい環境をつくることが重要だと考える。』

なぜ「イノヴェイション」が必要なのか?

本書の内容は、ヴェンチャーの「起業」を志すビジネスパーソンのみを対象としているわけではありません。いわゆる大企業こそ、このヴェンチャーに注目すべきだと著者は述べているのです。

『「死の谷」という言葉がある。一般的に研究成果を製品化にうまく結びつけられない、その間のギャップを指している。しかし、日本の場合は、それだけでなく強すぎる「自前主義」が「死の谷」となり、企業のパフォーマンス低下を招いているようにもみえる。』

例えば、アメリカのスターバックスが欧米の決済システムのヴェンチャー「スクウェア」に出資しました。これは、自前でシステムを開発するよりも、スクウェアと組んだ方が大きなインパクトをもたらすことができると考えたためであり、CEOのハワード・シュルツ自らが同社の取締役に就任するほど、その可能性を評価しています。

このように大企業がヴェンチャーに投資する意味は、次の3つにあると解説されています。

『優秀な人材や新たなアイデアや技術にアクセスできる』
『潜在的な未来の脅威やチャンスを見出すための情報収集として有効』
『大企業とは異なる考え方や仕事のプロセスを導入することで、企業文化の変革につながる』

このように、もはや世界ではヴェンチャーと大企業がお互いにシナジーを発揮し、ビジネスを展開する状況にあるのです。

「自前主義」にこだわる日本は、ガラパゴス化が進み、世界の競合から置いていかれていることに危機感を持たなければならないのではないでしょうか。

まとめと感想

本書では、ヴェンチャーの最前線として、若手起業家のインタビューが多数掲載されており、これから起業を志す皆さんにとって、非常に刺激的かつ勇気づけられる内容となっています。

また、JALの代表取締役社長植木義晴氏のインタビューでは、大企業から見たヴェンチャー精神の必要性についてもしっかりと語られています。

ビジネスの最前線で大企業とヴェンチャーの両方を見てきた著者だけに、大企業とヴェンチャーの間にある溝を的確に指摘し、その上で、日本が進むべき方向性がアツく提言されていますので、職種、職掌問わず、すべてのビジネスパーソンの皆さんにお薦めの一冊です。。

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