書評『会社を絶対つぶさない仕組み』
(髙畑 省一郎/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
はじめに―赤字企業が7割を超えた事実が意味すること
序 章 倒産の可能性が高い会社の特徴とは何か
第1章 会社はどのようにして倒産するのか――[原則1]資金循環の原則を理解する
第2章 倒産しないために必要な経営数字の水準――[原則2]本当に重要な経営数字の本質を理解する
第3章 収益力とバランスシートを改善する戦術――[原則3]機会費用の把握とその解消の手法を知る
第4章 経営戦略とビジネスモデルの融合――[原則4]ビジネスモデルのあり方を理解する
第5章 経営は先行管理に帰着する――[原則5]先行管理を導入する
第6章 これからの経営者に必要な条件とは何か――[原則6]組織を滅亡に導く「驕り」を排除する
第7章 新規事業を成功させるために――[原則7]世界の宗教・文化を学び、マネジメントを行う
おわりに
著者:高畑 省一郎
経営戦略研究所所長。公認会計士。1953年神戸市生まれ。1975年関西大学商学部卒業後、中小企業金融公庫勤務を経て、1993年経営戦略研究所所長に就任、現在にいたる。
企業の成長支援や再生実務に従事し、また、社外取締役として経営幹部の教育支援等を行なうとともに、経営戦略研究所主催の経営後継者育成研修の総括責任講師、および地方銀行協会の研修講師等としても活躍中。
著書に、『成長企業の経営戦略』(1992年)、『会社存続の原理』(1999年)、『会社成長の原理』(2005年)、共著に『上海を制するものが世界を制す! 』(2001年、以上いずれもダイヤモンド社刊)がある。

書評レビュー

会社を永続させる「7つの原理原則」

本書は、経営数字の理解をもとにした経営の原理原則を紹介し、具体的な経営手法を述べた一冊で、財務・会計まわりに苦手意識がある方などは特におすすめできる内容です。

著者は日本政策金融公庫(旧中小企業金融公庫)出身で、企業の再生から成長支援を手掛ける会計士兼経営コンサルタントとして、40年近く中小企業の経営に携わってきた人物。著者が現場で接してきた多くの事例も含めて、大企業から中小企業まで通用するような実践的な内容となっており、タイトルにあるように経営者向けに「最低限身に着けておくべき」考え方、ノウハウがまとめられています。

本書でカバーされる内容は、倒産企業に共通する財務指標から、経営戦略、組織づくりやマネジメント、経営を傾かせる「驕り」、資金繰り、後継者育成など多岐にわたりますが、「経営の原理原則」として、下記の7つが挙げられています。

[原則1]資金循環の原則を理解する
[原則2]本当に重要な経営数字の本質を理解する
[原則3]機会費用の把握とその解消の手法を知る
[原則4]ビジネスモデルのあり方を理解する
[原則5]先行管理を導入する
[原則6]組織を滅亡に導く「驕り」を排除する
[原則7]世界の就業・文化を学び、マネジメントを行う

この書評では、特に印象に残ったものとして、原則5の「先行管理」について紹介していきます。

業績管理から後継者育成まで有効な「先行管理」

先行管理と対になる概念は「実績(結果)管理」であり、多くの日本企業ではこちらが採用されているといいます。

これは、先月の目標や予算と実績の分析を行い、改善点や打ち手をを見出し次回の予実分析に活かす手法です。これに対して先行管理は、以下のように定義されています。

「予想される先々の結果そのものを、現時点からコントロールすることによって、結果そのものを管理する管理手法である」

この際のポイントは3か月、1年、5年など、目標までの時期から逆算される「時間軸」です。例えば1ヶ月目の結果から3か月目の結果を予想し、目標との差分を埋めるために新たに行動(別のセグメントの顧客を開拓するなど)を行うことです。

営業目標の管理などはわかりやすいと思いますが、本書ではそのような業績管理などの「短期課題」に加えて、「中長期的な課題(事業構造管理、経営後継者育成)」こそ先行管理を導入すべきとしています。

後継者管理に関して、日本では中小企業から、ファーストリテイリング(ユニクロ)などの大手企業まで、事実上次の社長候補が不足しているという状況が多いといいます。

その理由として、著者は「後継者候補を制度として育てる会社が少ないからである」と明快に語っています。

「事業にはゴールがない。存続してゆくこと、これが最大のミッションである。ゴールがないという観点から行けば、事業はリレーではありえない。たとえていうと、鎖でつないでいくということだろうか。」

それゆえ適切な局面で適切な「鎖」である後継者にバトンタッチしていくことは企業としてのマスト事項であり、制度として組み込み、先行管理していかなければならないと述べているのです。

具体的には本書に譲りますが、後継者に期待される能力をはっきり定義したうえで、関連会社などの経営トップを経験させる、大型プロジェクトを全て任せるなどの手法が紹介され、あわせて経営者に必要な資質や観点も説明されています。

これを考えると、日本の大企業に多い、関連会社社長などを論功行賞や名誉職として機能させておくのは、大きな機会損失であるということも、同時に指摘されています。

まとめと感想

著者は「決算書の知識は経営者に必須」であり、資金がどのように循環し、どうすれば循環を続けられるのかを学ぶことは、食事をするときの箸の使い方を学ぶようなものであると言い切っています。

本書は会計知識の専門書ではありませんが、会計入門的な本と違い、必要最低限の知識がまとめられながらも、さらに経営戦略や組織戦略などと活きた事例を通して接続されている点が特長です。

経営に携わる方はもちろん、理系人材や、他に専門的な強みがある方が、さらに会計知識まで身に着けれることができれば強力な武器となると思いますので、ぜひご一読ください。

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