書評『最高の戦略教科書 孫子』
(守屋 淳/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第一章 百戦百勝は善の善なる者にあらず
第二章 敵と味方の比べ方
第三章 戦いにおける二つの原則――不敗と短期決戦
第四章 兵は詭道なり
第五章 情報格差のある状況での戦い方――各個撃破と急所
第六章 情報格差が作れないときの戦い方 1主導権と裏の読みあい
第七章 情報格差が作れないときの戦い方 2無形と勢い
第八章 自国内での戦い方――地形とゲリラ戦
第九章 勝は度から導き出される
第十章 勝てる組織と将軍の条件
第十一章 情報を制する者は戦いを制す…ほか全20章
著者:守屋 淳
作家、中国古典研究家。1965年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。大手書店勤務を経て、現在は中国古典、主に『孫子』『論語』『老子』『荘子』『三国志』などの知恵を現代にどのように活かすかをテーマとした執筆や、企業での研修・講演を行う。
主な著・訳書に『現代語訳 論語と算盤』(ちくま新書)、『ビジネス教養としての「論語」入門』『図解 最高の戦略教科書 孫子』(日本経済新聞出版社)など。

書評レビュー

紀元前に書かれた競争戦略のバイブル「孫子」

本書は、稀代の戦略論にして、ビル・ゲイツや孫正義をはじめとする著名経営者をも魅了したという「孫子の兵法」のエッセンスを、現代風にアレンジして解説した一冊です。

著者は、渋沢栄一の「論語と算盤」などの古典ベストセラーの現代語訳を数多く手がけ、またこれらの思想の現代経営への活用に関する著書も多数執筆している人物です。

本書は、「孫子の兵法」のエッセンスをⅠ部で紹介しつつ、この「孫子の兵法」がビジネスシーンをはじめとする現代でも活用可能なのかをⅡ部で解説する構成となっています。

「孫子の兵法」と言えば、ビル・ゲイツ氏に至っては、自著や公開書簡で「孫子」の一節を紹介するほど、その教えに深く感銘を覚えているようです。

この「孫子の兵法」が執筆されたのは、日本でいうところの縄文時代から弥生時代への移行期。つまり紀元前に執筆された戦略論です。

なぜ2,000年以上も前の戦略論がこれほど多くの現代の経営者の心をとらえて離さないのでしょうか。

その理由は、「孫子の兵法」が、ビジネスシーンに欠かせない「競争状態での原理原則」の感覚を養成するにふさわしい内容を備えている、「競争戦略のバイブル」であるからに他なりません。

必要なのは「応用の才気」

現代のビジネス環境の変化のスピードはとても早く、そのため、先行きを見通すことが非常に困難です。ついこの間まで通用した事業戦略が、あっという間に通用しなくなり、業績の悪化に繋がるケースも珍しくありません。

そこで、必要となるのが「孫子の兵法」のような「競争状態での原理原則」なのですが、やはり時代背景も異なる現代においては、そのまま使うわけにはいきません。

そこで、必要となるのが「抽象化」と「応用」であると述べられています。

『「孫子」を自分にとっての智恵として吸収するためには、(中略)抽象化した内容にツッコミを入れ、「その原則が成り立つ前提条件とは何か」「成り立たない状況での戦略とは何か」と考えることなのだ』

裏を返せば、「抽象化」や「応用」には、しっかりとしたぶれない「本質」を踏まえた「原則」が必要だということであり、多くの経営者が「孫子の兵法」を評価しているのは、この「本質」と「原則」にふさわしい内容を備えていると評価してのことでしょう。

勝てる組織のつくり方 ~愛情や温情による心服~

現代組織のマネジメントにも通じる考え方を一例ご紹介します。

『卒を見ること嬰児(えいじ)のごとし、故にこれと深谿(しんけい)に赴くべし。卒を見ること愛子のごとし、故にこれと倶に死すべし。』

これは、端的にいえば、兵士(社員)を自分の子供ように扱い、大切にすることで信頼関係が生まれ、結果として最高のパフォーマンスをあげることができる、ということです。

このように、孫子は、強い組織には、「愛情や温情による心服」が最も大切だと述べています。

戦場という殺伐とした極限状態にありながらも、恐怖(現代では権威や地位でしょうか)ではなく、「心服」を最も重要視していることがポイントではないでしょうか。

まとめと感想

他にも、経営者が持つべきバランス感覚にも通じる「将に五危あり」など、リーダーからマネジメントクラスの皆さんにぴったりの「原則」が紹介されています。

「孫子の兵法」に関する著書は多数でておりますが、特にビジネスシーンにおいてどのように活かすかまでを重視して解説されており、「孫子の兵法」に触れる入門書としても最適と言えるのではないでしょうか。

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