書評『シグマクシス「経営論Z」
(倉重 英樹 (/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
はじめに 今の時代を「面白い」と見るか、「大変」と思うかで、人生は変わる
Part1:4つの変化がやって来る 企業は個人はどう対処すべきか
Part2:次世代型経営コンサルタント 「成長の理論」と「人の育成」
Part 3:シグマクシスの原点 50歳までに学んだこと
あとがき コンサルティング業でどうやって 継続的成長を実現していくのか
著者:倉重 英樹
株式会社シグマクシス代表取締役会長兼社長
1966年早稲田大学政治経済学部卒業後、日本IBM入社。取締役、副社長を経て、1993年にプライスウォーターハウスコンサルタント(PwC)の代表取締役会長に就任する。2002年、IBMとPwCのグローバル統合で、社名をIBMビジネスコンサルティングに変更。同社のアジアパシフィック地域責任者に就任し、コンサルティングビジネスを率いる。その後、日本テレコム株式会社(現ソフトバンクテレコム)取締役代表執行役社長、投資ファンドのRHJインターナショナル・ジャパン代表取締役会長を経て、2008年三菱商事とコンサルティング会社「シグマクシス」を設立。2013年12月18日、設立5年で東証マザーズに株式上場を果たす。三菱商事株式会社特別顧問。

書評レビュー

本書は、設立後5年で東証マザーズに上場し、昨今注目を集めているコンサルティング会社「シグマクシス」代表 倉重英樹氏の経営論や仕事術を紹介した一冊です。

著者である倉重氏は、日本IBMの取締役副社長やPWCコンサルティング代表取締役会長など、大手企業の役員を歴任してきた人物。特にPWCでは在任中の約10年で社員数10倍、売上高20倍という成果を残すなど、経営者としても凄腕の人物です。

本書は、著者の豊富な経営者としての知見を活かし、現代のグローバル社会の情勢・市場競争の分析、シグマクシスの経営理念、そして、著者の仕事術・考え方を紹介するという、三部構成になっています。

シグマクシスの経営理念 ~目指すは「戦略実現のシェルパ」~

著者は、コンサルティングファームであるプライスウォーターハウスコンサルタントで代表取締役会長を務めるなど、コンサルティング業界の実情を知り尽くした人物です。

そんな著者が従来のコンサルティング業界に感じていた違和感、それは、クライアントとの「不思議な距離感」でした。

コンサルティングファームの類型は数多くあれど、基本的にクライアントの課題・要望に対して、徹底的なリサーチやインタビューを通じて、課題に対する解を提供することを目指します。

しかしあくまでもそれは提案に過ぎず、「それを実行するのはクライアント」というスタンスでサービスを提供しています。

その結果、プロジェクトを実行する段になって、それぞれのビジネスプロセスでアウトソース先や協力会社を選定しなければならなくなり、時には、さらに別のコンサルティングファームに業務を依頼しなければならなくなる、という状況に陥ることもしばしばだそうです。

これに対して、シグマクシスは、提案したことは実行までコミットし、プロジェクトの成果に応じて報酬を得るというビジネスモデルを採用しています。

一見すると、従来のコンサルティングファームのビジネスモデルと比較して、コストもかかり、リスクも高まりそうに見えますが、著者は、登山者をサポートする「シェルパ」を例えにだして、このように解説しています。

『シェルパの仕事はコンサルティングでもアドバイスでもなく、一緒に荷物を背負い、リスクをとり、登山者を登頂させて無事に下山させることです。クライアントの戦略を実現して、その効果に対しても責任を持つということは、すなわち「戦略実現のシェルパ」になるということなのだと思っています。』

こうして、コンサルティング業界という成熟業界に新しいビジネスモデルを生み出したのですから、著者の熱い想いの丈が伝わるエピソードと言えるのではないでしょうか。

しかも、著者はこれを65歳の時に三菱商事の役員に提案しにいったといいます。まさしく、「情熱には年齢は関係ないを地で行く経営者と言えると思います。

「究極の価値(Z)」とは何か?

それでは、本書の題名にもなっている「Z」とは一体何を指しているのでしょうか、これは究極を表す「Z」なのだそうですが、シグマクシス、そして、CEOである著者の「究極」とは一体なんなのでしょうか。

著者はこれをミッションステートメント上で「喜び」と表現し、以下のように述べています。

『結果として、その「喜び」はシグマクシスの社員のやりがいやモチベーションにも返ってくる。そしてそれがさらに質の高いサービス提供につながる。そういった循環が、実は一番大切なのだと思います。』

このことについて、ベストセラー作家のダニエル・ピンクは、人間の働く動機の新しい形として「モチベーション3.0」として表現しました。

これは、特に新規事業開発のようなクリエイティブな業務においては、働くモチベーションの中心が、従来の金銭や名誉欲ではなく、知的興奮や自己実現、チーム一体で案件を完遂する「喜び」などが中心になるということです。

まとめと感想

本書では、著者のビジネスパーソンとしての半生にも触れられているのですが、そこで紹介されているエピソードも、著者が、いかにクライアントや社員を大切にしているのかが分かるものばかりです。

詳細は本書に譲りますが、『「信じること」が人間関係を支える』のエピソードは、営業に携わるビジネスパーソンの方に是非読んでいただきたい内容となっています。

経営論のみならず、営業や企画立案など、様々なビジネスシーンで参考になるエピソードも多数紹介されていますので、すべてのビジネスパーソンに参考となる一冊と言えるのではないでしょうか。

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