書評『課金ポイントを変える 利益モデルの方程式』
(川上 昌直/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 儲ける仕組みに変わる
第2章 業界のルールを変えた新しい利益モデルを徹底解剖
第3章 ビジネスモデルを変える利益ロジック
第4章 顧客の活動にシンクロさせて課金ポイントを仕込む
第5章ブレイクスルーの鍵は「サービス業的思考」にあり
著者:川上昌直
1974年大阪生まれ。
96年神戸商科大学(現・兵庫県立大学)卒業。2001年同大学大学院博士後期課程修了。01年より08年まで福島大学経済経営学類准教授(助教授から改称)。08年に兵庫県立大学経営学部准教授に就任し12年より教授となる。博士(経営学)。専門はビジネスモデル、利益ロジック。日本経営学会および日本経営財務研究学会所属。

大学で教鞭をとるかたわら、中小企業から東証一部上場企業まで、規模の大小や業種を問わず多岐にわたるプロジェクトに関わり、事業構築メソッドを確立。企業や内閣府などの研修も行い、マーケティングから利益ロジックまでを含めた事業構築に関する新たな論点を発信し続けている。
理論と実戦を融合したセミナーは、新社会人からベテラン経営者まで幅広い層から高い支持を得ている。また、自身のゼミを文系初の大学発ベンチャーとして独立させるなど、教育面でも実践を重んじている。
2012年からはゼビオグループのマーケティングカンパニーであるクロススポーツマーケティング株式会社の社外取締役も務める。現在までにリテール(小売業)をはじめ、スノーリゾートやサービス業のアドバイザーとして、実業に関与している。

11年に上梓した著書『ビジネスモデルのグランドデザイン』(中央経済社)が、経営コンサルティングの規範となる研究として、第41回日本公認会計士協会学術賞(MCS賞)を受賞。そのほかの著書に『儲ける仕組みをつくるフレームワークの教科書』『課金ポイントを変える 利益モデルの方程式』(かんき出版)がある。

書評レビュー

ビジネスモデルを「出口」から考える

新しいビジネスモデルが生まれにくいと言われている現代において、ベンチャー(新興)企業が生き残っていくためにはどうすればいいのか…、本書は、そんな課題を解決することを目的として、従来とは異なる「課金ポイント」を採用した利益モデルを生みだすための思考と手法を紹介した一冊です。

成熟社会といわれる現代において、このところ目新しいビジネスモデルは生まれていないと言われています。また、これまで言われてきた「顧客価値提案型」のビジネスモデルについても、Facebookやamazonのような企業は別として、なかなかユーザーに斬新な価値を提案することが難しくなってきています。

著者は、それならば、いっそのこと顧客価値から「利益に目線をずらして」みてはどうかと提唱します。

『顧客価値提案が停滞しているのであれば、いっそのこと利益から先に考えてみてはいかがでしょうか。つまり、ビジネスモデルの「出口」から考えるということです。「入口」である顧客価値と、「出口」である利益。その両方をつなぐ「道筋」であるプロセス。ビジネスモデルはこれらがきちんと説明できればいいのです。』

なぜ「課金ポイント」にフォーカスをあてるのか?

このように、筆者はまず「出口」である利益から逆算して、ビジネスを再構築することを提案していますが、具体的などのようなことなのか、一例を紹介します。

例えば、「日本ゲーム大賞」にも選ばれ、一時、任天堂の時価総額を上回った、「パズドラ」で有名なガンホー。

「パズドラ」は、基本料金無料のフリーミアム型のゲームですが、「アイテム課金」を収益の柱とし、さらに、GREEのようなSNSプラットフォーム会社を通さずに、自らゲーム配信を行うことで、爆発的な収益を上げることに成功しました。

また、無料通話アプリ「LINE」も、サービス提供開始当初はマネタイズに苦労したようですが、スタンプ課金とゲーム課金で総売上高(58.2億円)の80%を稼ぎだしています。

さらには、企業公式アカウントの提供、つまり「B to B」のビジネスにも進出し、こちらでも順調に売上高を伸ばしています。

では、これらの企業は、「顧客価値提案」が他の企業と比較して優れていたから成功したのでしょうか?

著者は、この問いに対して下記のように解説しています。

『ストレートに言うならば、これまでなかった課金の方法を工夫したことが成功要因だと、私は分析しています。(中略)誤解を恐れずに言うならば、「使い古された顧客価値提案を、課金の方法を変えることでよみがえらせた」と位置付けられると思います。』

そして、詳細は本書に譲りますが、課金ポイントを考える手法として、①Who=『誰から設けるかを考える』、②What=『どの商品・サービスで儲けるのかを考える』、そして、③How=『「誰」と「何」に「時間軸」を加えて考える』ことを挙げています。

これに、ビジネスの構成要素である「顧客価値」、「利益」、「プロセス」を掛け合わせた「9セルマトリクス」を用いることで、「儲ける仕組み=利益モデル」を自社に落とし込むことが可能だと解説しています。

まとめと感想

本書では他にも、「23通りの利益パターン」や「儲け方の8ロジック」など、課金ポイントを変えるために参考となる指標や思考法が解説されています。

また、課金ポイントを変化させ、成功した企業の事例も複数紹介されていますので(TSUTAYAやネスレなど)、本書の理解もより一層進むのではないでしょうか。

成熟産業では、やはり先発組の大企業がどうしても優位となってしまいますが、本書には、ベンチャー企業をはじめとする中小企業が、そんな大企業の牙城を崩すためのエッセンスが多数ちりばめられています。

起業を志しているビジネスパーソンに加えて、新規ビジネス開発や企画を担当している方にも参考となる一冊だと思います。

新刊ビジネス書を「要約」でチェックできるプレミアム版も人気です

book-smartとは