書評『アップルvs.グーグル: どちらが世界を支配するのか』
(フレッド ボーゲルスタイン/著)

包囲されるAppleと闘いの行方

本書は、「アップル」と「グーグル」…世界のIT業界をけん引するグローバルカンパニー2社の生き残りをかけた壮絶な生存競争に迫ったドキュメンタリーです。

著者は米国Wired誌の記者として、アップルとグーグルの生存競争にいち早く注目し、両社のキーパーソンに取材を続けてきた人物。海外版原著からほぼタイムラグなく翻訳出版されており、その意味でも現時点で最新のレポートといえる一冊です。

アップルは、故スティーブジョブスの元、iPhoneとiPadを発売して以降、世界のIT業界で、その地位を確固たるものにしました。本書では、アップルを「世界最大のPCメーカー」と呼んでいますが、その実態を表す数値として、iPadの販売台数を例に挙げています。

iPadの四半期の販売台数は、デルやヒューレット・パッカードのデスクトップとラップトップのPC販売台数よりも多いとのこと。

iPadだけ見ても、改めてその存在感が際立っているのがお分かりいただけると思います。しかし、盤石に見えるアップルの牙城を崩す存在がいます。それがAndroidで完全にアップルと敵対するグーグルです。

『(アップルは)時価総額も利益率もこの惑星で最高クラスの企業になった。なのに、アップルは敵に方位された企業のようにふるまっている。なぜか?じつはこれだけ成功しているにもかかわらず、本当に包囲されているからだ。敵はグーグルだ。』

本書では、著者が実際に記者として両者のキーパーソンにインタビューした内容を交えながら、iPhone発売時のGoogle内部の状況や、アンドロイドがiPhoneを追随していく状況、そして両社の今後の展望について、紹介されています。

様々な業界を巻き込んだ闘いへ

スマートフォンを中心に「アップルvs.グーグル」の構図が出来上がってから5年が経ちましたが、この闘いは、いまや2社だけでなく様々な業界を巻き込んだビジネスチャンスの奪い合いへと発展しています。

『変化の波に乗り遅れた者にとって、この五年間は辛かった。新聞社の広告収入と発行部数はともに過去20年で最低にまで落ち込んだ。(中略)

テレビ業界は、ネットフリックスやグーグルのYoutubeが独自のコンテンツを流しはじめたことで、視聴者を奪われ、月額利用料の値下げ圧力がかかるのを怖れている。』

その一方で、エンターテイメント業界とハイテク企業が一緒になり、新たなビジネスモデルを模索するなど、スマートフォンから始まったイノベーションは、コンテンツ業界にまで広がりを見せています。

本書では、この状況を多くの企業やサービスを取り上げながら説明されています。

アップルvs.グーグル ~勝利を手にするのはどちらか~

それでは、本書のタイトルでもある「アップルvs.グーグル」の闘いについてはどうでしょうか。筆者は、この5年間の闘いを指して、こう述べています。

『(5年に及ぶアップルとグーグルの闘いは)両社ともいい方向に進んだのだ。グーグルが先に計画していなかったら、アップルはアプリストアを始めていなかったかもしれない。

アップルと張り合う必要がなかったら、アンドロイドのスマートフォンとソフトウェア設計は、いまだに消費者ではなくエンジニアの方を向いていたかもしれない。』

そして「本書を読み終わるころには、筆者がアップルとグーグルの闘いでどちらが勝つと思っているか、だいたい見当がつくだろう」と述べていますので、「勝者」は本書に譲りますが、そのヒントをご紹介します。

ヒントは「現在の携帯電話とタブレット市場のシェア」、「時価総額の変動」、そして最も重要な「経営者のビジョン」です。

まとめと感想

アップルとグーグルの生存競争にいち早く注目し取材を続けてきた記者だけあって、本書では、両社の社内事情が生々しく鮮明に描かれており、「濃い」内容の一冊となっています。

もはや若年層においては所有していない方を探すほうが難しいスマートフォンを中心とした闘いと、もたらすインパクトが理解できるのではないでしょうか。また、すでに「アップルvs.グーグル」の構図についてご存知の方にとっても、この闘いが影響を与えている業界・サービスについて、改めて現状を俯瞰できる良書だと思います。

目次:
第1章 月面着陸ミッション
第2章 アンドロイドはiPhoneを超える
第3章 発売まで二四週間
第4章 友だちだと思ってた
第5章 裏切りの結果
第6章 どこもかしこもアンドロイド
第7章 iPadがすべてを変える―巻き返し
第8章 ミスター・クイン、このままでは処罰を下すことになりますよ
第9章 ついに来た「コンバージェンス」
第10章 一画面ずつ世界を変える

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