書評『P&G式 「勝つために戦う」戦略』
(A・G・ラフリー、 ロジャー・マーティン/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
序論 戦略の本当の働き
第1章 戦略とは選択である
第2章 勝利とは何か
第3章 どこで戦うか(戦場)
第4章 どう戦うか(戦法)
第5章 強みを生かす
第6章 管理システム
第7章 戦略を考え抜く
第8章 勝機を高める
結び 勝利への飽くなき追求
補遺A P&Gの業績
補遺B 戦略のミクロ経済学と二つの勝ち方
著者:A・G・ラフリー
プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の会長、社長そしてCEO(最高経営責任者)を務めた。彼の任期を通じてP&Gの売り上げは倍増、利益は4倍増、市場価値は1000億ドル以上向上。10億ドル規模のブランド―タイド、パンパース、オレイそしてジレットなどは10から24に増加した。その後、未公開株投資会社などを経て、2013年5月にP&GのCEOに復帰。

著者: ロジャー・マーティン
トロント大学ロットマン・スクール・オブ・マネジメントの学部長であり、戦略、デザイン、イノベーション(技術革新)、統合的思考などについてCEO(最高経営責任者)らに助言している。

書評レビュー

P&Gの企業価値を2倍にした経営戦略論

「売上高=2倍、会社の企業価値=2倍以上にし1,000億ドル(約10兆円)を突破」・・・こんな離れ業をやってのけた、P&G(The Procter & Gamble Company)のCEO A・G・ラフリー氏の経営戦略論をまとめた一冊が、本書です。

P&Gといえば、シャンプー、化粧品、食品などを幅広く取り扱っている世界最大の一般消費財メーカーであり、アメリカのビジネス誌で社員の能力にフォーカスを当てたランキングで1位に輝いたこともある人材(特にマネジメントクラス)の宝庫として有名なグローバル企業です。

そんなP&Gの業績にかげりが見え始めた2000年からA・G・ラフリーはCEOに就任し、業績の立て直しに取り組みました。その結果、CEO在任中の10年間で、冒頭にあるような売上高や企業価値を2倍にするという偉業を成し遂げたのです。

本書は、そんなA・G・ラフリーがP&Gの業績立て直しの際に特に重要視していたもの、つまり、P&Gの「経営戦略」を、実際のエピソードなどを交えながら紹介した一冊となっています。

真の戦略を「選択」する5つの質問

A・G・ラフリーは、競争戦略論の大家であるマイケル・ポーターの言葉を引用しながら、戦略の核は、何をし、何をしないかについての「選択」であるとしています。そして、その選択の結果、自社の優位性が決まると解説しています。

◆(引用)
『戦略とはある企業を業界において独自のポジショニングに位置付け、それによって、競争相手に対して、持続可能な優位性やより優れた価値を生み出すもの、ということである。』

これを踏まえた上で、A・G・ラフリーは戦略とは次の5つの相関する問いへの答え(選択)だと述べています。

①どんな勝利を望んでいるのか?
組織の目的、動機となるアスピレーション(憧れ)。

②どこで戦うか?
アスピレーションを達成する戦場。

③どうやって勝つか?
選択した市場で勝つための方法。

④どんな能力が必要か?
選択した勝つための方法を達成するために必要な一連の能力と構成。

⑤どんな経営システムが必要か?
能力を実現し、選択を支援するシステムと手段。

A・G・ラフリーは、これらの関係をカスケード(滝)と呼び、上位(①から)のカスケードが、後続の選択の基調となり、下位のカスケードが上位の「選択」に影響して精度を高めると解説しています。

つまり、戦略の策定において、この①から⑤までの「選択」をセットで考えなければならないと述べているのです。

まとめと感想

本書では、スキンケアブランド「オレイ」のテコ入れに際して具体的にどのような「選択」をしたのかなどが、実際のエピソードを交えながら解説されていますので、理解が進みやすい構成になっていると思います。

マイケル・ポーターやピーター・ドラッカーが、この経営戦略論をP&Gに組織として根付かせるためのプロジェクトに参加していただけあって、彼らの考え方(学説)の実践版ともいえるかもしれません。

CEOの自伝にとどまることなく、経営戦略論を解説しているしっかりとした内容となっています。ぜひご一読ください。

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