書評『イーロン・マスクの野望 未来を変える天才経営者』
(竹内 一正/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
1章 降臨―南アフリカから来た男
2章 難航―人生最悪の時
3章 前進―未来を見る
4章 信念―宇宙への道
5章 独創―PCの電池で車を走らせる
6章 異端―ロケット作りの革命
7章 野望―人類を火星に送り込む
8章 運命―地球を救え
著者:竹内一正
 1957年岡山県生まれ。徳島大学工学部大学院修了、米国ノースウェスタン大学客員研究員。松下電器産業(現パナソニック)にエンジニアとして入社。PC用磁気記録メディアの新製品開発、海外ビジネスに従事。その後、アップルコンピュータ社にてマーケティングに携わる。日本ゲートウェイ(株)を経てメディアリング(株)の代表取締役などを歴任。現在、ビジネスコンサルタント事務所「オフィス・ケイ」代表。

書評レビュー

信念を形にする経営者

「スティーブ・ジョブズ」亡き後、世界をけん引する経営者といわれる人物…それが、本書の主人公である「イーロン・マスク」です。

イーロン・マスクは、ペイパル(資金決済サービス)に始まり、宇宙ロケット、電気自動車、太陽光発電といった革新的事業を行うベンチャー企業を次々と設立するいわゆる連続起業家。

その優れたビジネスアイディアから、アメリカのビジネス誌などで「21世紀の最高の発明家」と呼ばれている人物です。

その個人資産は約80億ドルを超え、かハリウッド映画「アイアンマン」の主人公トニー・スターク(発明家で大富豪)のモデルとなったとも言われています。

本書では、そんなイーロン・マスクの半生を通し、彼のアントレプレナー(起業家)としての情熱や挑戦、そして、彼が経営者として大切にしている信念が紹介されています。

イーロン・マスクが他の経営者と違う点、それは信念を形にしてしまう意志の力と行動力です。

『大学生時代のイーロンはたびたび、「人類の将来にとって最も大きな影響与える問題は一体何か」と考えていた。そして、辿り着いた結論が「インターネット、持続可能エネルギー、宇宙開発の三つ」だった。

なるほど、ここまでなら、良くある学生の“妄想”で片付く話だ。だが、イーロンが違うのは、この三つを実行に移していったことだ。』

イーロン・マスクは、ペイパル売却の資金などを元手に、宇宙ロケット、電気自動車、太陽光発電のベンチャー企業を次々と設立し、不可能と言われるビジネスに挑戦し続けました。

もちろん順風満帆に物事が進んだわけではありません。

例えば、電気自動車のテスラ社では、生産計画とコストの見積もりの甘さから資金繰りが悪化し、会社の倒産騒ぎにまで発展しています。

さらに、当時は、リーマンショックによりアメリカ国内の自動車業界も惨憺たる状況でした。

イーロン・マスクも当時を振り返ってこう述べています。

『GMやクライスラーが倒産への坂道を転げ落ちている時期に、新規の自動車メーカーが資金を集めるのは至難の業だった。』

それでも新たに4千万ドルの資金調達と自身の個人資産を投入して会社を持ち直し、アメリカ自動車メーカーとして、フォード以来の株式上場(半世紀ぶり)を果たすのです。

これだけでも並大抵の経営者にはつとまりませんが、さらにイーロン・マスクは、宇宙ロケットや太陽光発電といった壮大なビジネスに対して、同時並行で挑戦し続けていたというのだから驚きです。

インターネットから飛び出す

イーロン・マスクの立ち上げたスペースX社は、通常数千万ドルかかる宇宙ロケットの打ち上げ価格を、670万ドルという劇的な価格で提供すると発表しました。

この低価格もそうですが、宇宙開発業界ではロケットの打ち上げ価格を「公表」することは「掟破りの所業」だったとのことです。

しかし、これはインターネットの世界も含め、通常のビジネスシーンでは当たり前のことだとして、まったく意に介さなかったそうです。

そして、イーロン・マスクはインターネットの世界から違うビジネス分野への挑戦を強く勧めています。

『インターネットの世界には優秀な人たちがたくさんいる。だから、ネット以外の分野を目指し、そこで才能を発揮することは素晴らしいことだよ。起業家たちの優れた才能を活用できる産業分野はいくつもあるんだ。』

ペイパル社を設立後、宇宙ロケット、電気自動車、そして太陽光発電と、まったく異なる事業分野で挑戦を続けるイーロン・マスクが言うと、この言葉にはとても説得力があるように思えないでしょうか。

まとめと感想

他にも、電気自動車を動かす燃料にPCの電池を使うなど、型にはまらないアイディアを次々に生み出していく様子や、民間企業として宇宙センターとのドッキングを果たした様子が、ストーリー仕立てで紹介されていますので、読み物としても非常に面白いと思いました。

「火星に人類を移住させる」という想いから宇宙ロケットの開発を行い、ついには打ち上げを成功させてしまったイーロン・マスクの信念を形にする力は、マネジメントクラスの方にとっても参考になると思います。

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