書評『トヨタ対 VW(フォルクスワーゲン)2020年の覇者を目指す最強企業』
(中西 孝樹/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 トヨタイズムとピエヒイズムの戦い
第2章 トヨタイズムの進化と真価
第3章 VW帝国とポルシェ王朝–ピエヒイズムの分析
第4章 進化するクルマのアーキテクチャ–ものづくりはどこへ向かうのか
第5章 自動車産業の環境対応技術戦争–最大の難所
第6章 自動車産業の合従連衡–ドラマよりもドラマチック
第7章 プレミアム戦略と中国市場での戦い
第8章 2020年の激突
著者:中西 孝樹
(株)ナカニシ自動車産業リサーチ代表。1994年以来一貫して自動車業界の調査を担当し、日経金融新聞・日経ヴェリタス人気アナリストランキング自動車・自動車部品部門、米国Institutional Investor(2)自動車部門ともに2004‐2009年まで6年連続第1位と不動の地位を保った。2011年にセルサイド復帰後、日経ヴェリタス人気アナリストランキング、2ともに自動車部門で2013年に第1位。1986年オレゴン大学ビジネス学部卒。山一證券、メリルリンチ証券等を経て、2006年からJPモルガン証券東京支店株式調査部長、2009年からアライアンス・バーンスタインのグロース株式調査部長に就任。2011年にアジアパシフィックの自動車調査統括責任者としてメリルリンチ日本証券に復帰。2013年に独立しナカニシ自動車産業リサーチを設立。

書評レビュー

自動車業界はトップ5からトップ2の時代へ

本日紹介する一冊は、リーマンショック後の自動車業界で今後「2強」として激突するであろう「トヨタ」、「VW(フォルクス・ワーゲン)」の戦略を軸に自動車産業の未来を洞察した一冊。

著者の中西孝樹氏は、山一、メリルリンチ、JPモルガンと一貫して証券アナリストとして自動車産業に携わり、現在は独立してナカニシ自動車産業リサーチ代表を務めるという自動車業界のスペシャリストです。

サブプライムローン問題に始まるリーマンショックは、GM、クライスラー、サーブなどトヨタを含む多くの自動車メーカーを破綻あるいは経営危機に追い込み、その後の自動車業界を一変させました。

現在の自動車業界勢力図では、世界販売台数700万台以上の5社―トヨタ、GM、VW、ルノー・PSA(プジョー/シトロエン)、日産、ヒュンダイ―がトップ5として上位グループを形成しています。

では今後の競争はどうなるのか、著者はこのように予測しています。

「世界の自動車業界はトップ5のメーカーがしのぎを削る構造になってきたが、VWの成長モメンタムが持続し、最強ともいえるトヨタの復活が見えてきたことで、この2社が激しく激突する構図が今後顕著となっていくだろう。

これまで両者が不思議なほど世界の市場を2分し、すみ分けた形で成長を遂げてきたが、否が応でもこれからの世界市場で衝突することになるだろう。」

VWは欧州、中国市場、トヨタは日米、東南アジアと、これまで両者は不思議なほど「棲み分け」して直接対決せずに成長してきました。

VW(フォルクス・ワーゲン)の強み

世界販売台数を見ると、トヨタ、GMがリーマンショック前と比較してほぼ横ばいなのに対し、VWは45%成長(’07~’12)という驚異的な伸びを見せて、あっという間にトップ3となりました。では急激にトップ争いに参入してきたVWの強みとは何でしょうか?

著者は人づくり、ものづくりの「トヨタイズム」と、VWの経営者フェルディナント・ピエヒの「ピエヒイズム」を対比して以下のように述べています。

「トヨタイズムのものづくり、人づくりとは対極にある、オープンなビジネスモデルを成長戦略に迷いなく取り込んでいくのがピエヒイズムだ。自動車ビジネスのフレームワークを戦略的に再構築し、M&A、マルチブランド、プラットフォーム戦略を三位一体で構築する。

オープン化、標準化を戦略的に推進し、マーケティング、デザイン、ブランドを含むソフト面の管理能力で製品、ブランドの平準化や同一化のリスクをコントロールする。」

少しわかりずらいかもしれませんが、オープン化、標準化などは、メーカーとしての生産思想にが明確にトヨタと異なり、これらの強みを著者は「すべてトヨタイズムが苦手なことばかり」と語っています。

トヨタ対 VWの勝者

では、2020年前後と予想される、トヨタ対VWの対決はどちらに軍配があがるのか、結論は本書に譲りますが、VWの成長軌道も決して順風満帆とはいえません。

強みの裏返しですが、中国市場偏重による成長の翳り、高齢のカリスマ経営者ピエヒのワンマン経営、後継者問題、スズキとの包括提携が成果を出せず解消に向かっているなど、いくつも挙げることができます。

ほかにも車のコモディティ化、環境問題、新興国市場への対応、そして日産、ヒュンダイなどの他社分析など、専門家ならではの緻密な調査とデータによって未来が描き出されています。

まとめと感想

トヨタはいまも日本一の売上高を誇る企業グループであり、国際社会での日本のプレズンスや株式市場にも大きな影響力を及ぼします。自動車産業に携わる方以外にも、トヨタおよび日本メーカーの動向は抑えておくべき知識ではないでしょうか。

各社のテクノロジーや生産方式など技術的にマニアックな分析もありますが、この10年と今後10年の自動車産業を構造的に理解できる好著です。

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