書評『ウラからのぞけばオモテが見える』
(佐藤 オオキ、川上 典李子/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
はじめに~佐藤オオキ
第1章 nendoの思考法
1) 「面」で考える
2) 一歩「下がる」
3) 「違和感」を生む
4) 均衡を「崩す」
5) 見せたいものは「隠す」
6) 「ゆるめ」につくる
7) とにかく「集める」
8) 「休み時間」に休ませない
9) 「他人丼」を見つける
10) そこにあるものを「使いまわす」
第2章 nendoの行動術
0) 「がんばる」ほど「貧しく」なる?
1) 状況を「耕す」
2) クライアントと「育てる」
3) アイデアを「収穫する」
おわりに~川上典李子
著者:佐藤オオキ
デザイナー。デザインオフィスnendo代表。1977年カナダ生まれ。2000年早稲田大学理工学部建築学科首席卒業。2002年同大学大学院修了。同年、デザインオフィスnendo設立。Newsweek誌「世界が尊敬する日本人100人」(2006年)、「世界が注目する日本の中小企業100社」(2007年)に選ばれる。主な受賞にWallpaper誌(英)、および、Elle Deco International Design Award「デザイナーオブザイヤー」(2012年)があり、代表的な作品は、ニューヨーク近代美術館(米)、ビクトリア&アルバート博物館(英)、ポンピドゥー・センター(仏)など世界の主要な美術館に収蔵されている。2012年から早稲田大学非常勤講師。

著者:川上典李子
デザインジャーナリスト、エディター。デザイン誌「AXIS」編集部(1986年~1994年)を経て1994年独立。1994年~1996年、ドムスアカデミーリサーチセンターの日伊プロジェクトにエディトリアルディレクターとして参加。現在はデザイン誌や新聞等に執筆、デザイナーの作品集への寄稿も多数。2007年より21_21 DESIGN SIGHTアソシエイト・ディレクターとしてデザイン展の企画にも関わる。

書評レビュー

世界的デザイナー集団「nendo」式思考法

デザイナー集団「nendo」を率いる「佐藤オオキ」氏の思考法や行動哲学を紹介した一冊。「nendo」は、日本企業のみならず、海外企業もクライアントにもつデザイナー集団として世界を舞台に高い評価を受けています。

ロッテの「ACUO」のパッケージデザイン、イタリアのシューブランド「Tod’s」のショーウィンドウデザインから、「GUNDAM展」や「cupnoodle forms」への参加など、幅広いジャンルで活躍しています。

また、エルメスやルイヴィトンといった世界の一流ファッションブランドからも仕事の依頼が殺到し、著者でもある代表「佐藤オオキ」氏も「プロフェショナル 仕事の流儀」で特集されるなど、デザイン業界で最も注目を集めているデザイナーの一人です。

なぜ「ビジネスシーン」に「デザイン」なのか?

ここまでのご紹介で、「デザイン」に関する著書を取り上げることを不思議に思った方もいらっしゃるかもしれません。なぜ「ビジネスシーン」に「デザイン」なのか、こちらは著者の言葉を借りて説明してます。

『デザインとは問題解決のための「新しい道」を見付ける作業です。』

ビジネスは、例えば、売上高を伸ばす、新規事業を立ち上げるなど、すべて「問題解決」あるいは課題解決の連続と言えるのではないでしょうか。

つまり、「ビジネスシーン」においても問題解決のためのアプロ―チ・プロセス自体が、すでに立派な「デザイン」だと著者は解説しているのです。

本書では、著者独自の「10の思考法」とそれを活用するための「行動術」が掲載されていますが、この書評では特にビジネスシーンに共通していると感じた「面で考える」という思考法をご紹介します。

「面で考える」思考法

筆者は、企業がビジネスを行う際には、「面で考える」ことがとても重要だと述べています。特に、枝葉の細かい部分をデザインするのではなく、あくまでも「幹」や「根」をデザインすることを意識すべきだと説いています。

『経営とデザインは決して切り離すことができません。根幹をデザインすることは、企業のブランドアイデンティティーを確立し、面的に発信していくことに繋がります。』

「nendo」のクライアントは、4割が日本企業、6割が海外企業ということですが、この「面で考える」ことについては、海外企業にくらべ、日本企業はとても苦手にしているようです。

『印象的だったのは、海外企業には企業としての明快なビジョンがあり、その延長上に個別の商品が位置付けられていて、何を目的としているのかについても、担当者が自分の言葉で熱く語ってくれることです。』

これに対して日本企業は、製品スペックでの細かい差別化を意識する点だと解説しています。

『ユーザーに必要とされるものよりも販売の棚に並ぶかどうかに神経をとがらせてしまい、従来モデルや競合製品との無理な差別化や、営業しやすい特徴を求めているようです。(中略)「新しい思想」を打ち出すことで他社との差別化を実現しようとする海外企業とは対照的です。』

また、「面で考える」ことのメリットとして、他社が安易にコピー製品を作ることを防ぐ役割があると述べています。面的な展開をしていれば、ただ1点がコピーされたところで、それほど脅威にはならないからです。

「コレクション」という考えで複数製品に関連性を持たせれば、ビジネスの根幹にデザインを活かすことができると著者は語っています。

まとめと感想

冒頭の『デザインとは問題解決のための「新しい道」を見付ける作業です。』という端的な言葉にも表されているように、佐藤オオキ氏は、物事の本質をシンプルかつ的確に捉える能力に長けている人物だという感想を持ちました。

この書評で紹介した「面で考える」を含め、下記の目次にあるようなビジネスのヒントになるであろう本質をついた発言が多数紹介されています。本書を読めば、デザインとビジネスの共通項を発見していただけると思いますので、ビジネスパーソンの皆さんも是非手に取ってみてください。

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