書評『創業1400年 世界最古の会社に受け継がれる16の教え』
(金剛利隆/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 1400年の伝統を支える人づくり
第2章 聖徳太子の命で始まった世界最古の会社
第3章 いまも受け継がれる「遺言書」一六の教え
第4章 「なにわの女棟梁」が老舗を立て直す
第5章 義理と人情が救った存続の危機
第6章 原点回帰で歩み出す次の300年
著者:金剛利隆
 株式会社金剛組 相談役。第39世四天王寺正大工職。
1924年、福井県の森厳寺で6人兄弟の次男として生まれる。1944年に福井高等工業学校(福井工業専門学校に改称、現・福井大学)建築科を卒業したのち、京都伏見・工兵隊に入隊。陸軍経理学校に入学し、中部軍管区司令部経理部へと配属され、曹長・見習士官を務める。第2次世界大戦終戦後、熊谷組入社。その後、熊谷組を退社し、1947年に金剛光子と結婚、金剛家の婿養子となる。
1955年、金剛組の株式会社化と同時に、専務取締役に就任。1968年、株式会社金剛組の代表取締役社長就任に伴い、第39世四天王寺正大工職を継承する。2002年、会長就任。髙松建設による財政支援を受け、2006年に新生金剛組への営業権譲渡が果たされると相談役となり、現在に至る。
1978年、文化財建造物修理工事の功績により文化庁長官表彰を受賞。

書評レビュー

世界最古の会社に受け継がれる仕事の教え

本書は、飛鳥時代(西暦578年)の大阪・四天王寺建設を起源として、何と1400年間存続してきた企業・金剛組(日本および世界最古)に受け継がれる仕事・経営の教えを伝える一冊。

著者の金剛利隆氏は、39代目の金剛組の棟梁で、戦後金剛組の近代経営の基礎を築き、また2000年代の経営危機と再建を経験するなど、相当な苦労を重ねてきた人物。残念ながら本書の出版直前に永眠されとのことです。

本書では、現在も原点である社寺建設に特化した職人集団として生き残る金剛組に伝わる教え、そしてその教えに反したことで迎えた経営危機と、原点にかえり成長を重ねる企業の姿が描かれています。

この書評では金剛組が長く存続することができた理由と、金剛組に伝わる教えの内容を1つ紹介していきます。

なぜ1400年も企業を存続させることができたのか

ではなぜ、金剛組は1400年間も生き残ることができたのか、著者は端的に2つの要素が重要であったと述べています。

『こうした危機を乗り越えて金剛組が生き残ってきた理由の一つ、それは、確かな技術を持つ人材を育て続けてきたことにあります。(中略)

のちに「なにわの女棟梁」と称されるほどの辣腕を振るったよしゑを支えたのは、高度な伝統技術を受け継いだ宮大工たちです。よしゑ以前も、私が経営を任されていた時代も、技術をつなぐ人材育成は怠っていません。

また、金剛組が生き残ってきたもう一つの大きな理由として、後継者の選び方があげられるのではないでしょうか。自分の子どものように育て上げた会社を次の世代に託すこと。そこまが経営者の責任でもあります。』

また、金剛身の棟梁は代々「金剛姓」ですが、すべてが直系の人間ではなく、著者をはじめ養子として金剛家を継いだ人間も多いことが指摘されています。

つまり、確かな技術を持つ人材の育成後継者は血統ではなく、能力で選ぶことが金剛組が生き残るために大切な要素であったと語られています。どちらも「人」を育て、「人」を見極めることの重要性を説いているのが象徴的ではないでしょうか。

32代目棟梁の16の教え

また本書には、32代目の金剛喜定が江戸時代に残したという遺言書(「職家心得之事」)に書かれている「16の教え」も紹介されています。

16条の詳細は本書に譲りますが、特に印象にのこったものとして以下の教えを紹介します。

「一、家職を勤めるようになって、見積もり、入札等が発生した時には、その年や時節に見合った値段を聞き合わせ、莫大な値段や高下の見積もりは決してしないこと。正直な見積もりを書付、差出なさい」

これは見積もりなどの価格提示でも決して無理せず、高すぎず、低すぎず「適正」な値付けを出すことを伝えていますが、著者は16条を通して先祖が伝えたかったことは「中庸」の精神(バランス感覚)を忘れないことであると語っています。

ほかにも「どの人と接するにも慇懃(丁寧)にせよ」「武家(時の権力)のことは深く考えなくともよい」など、現代にも通じる示唆がある教えでしたので、興味がある方は本書を手に取ってみて下さい。

まとめと感想

本書では、著者の先々代の自殺、先代で初の女性棟梁となった義母の苦労、そして著者の代の経営危機など、苦難のエピソードも正直に明かされており、失敗から学ぶ、という観点でも興味深い内容です。

いわゆる宮大工という特殊な世界に閉じた話ではなく、ものづくりやサービス業一般、そして「仕事」そのものにも通用する教えだと感じました。

著者と先代の2世代だけでも相当な苦労をされているので、39代1400年となると相当な苦難を乗り越えてきているはずです。

経営危機を乗り越えた際も、スポンサー、債権者などの支援がなければ成り立たなかったように、やはり経営はどこまでいっても「人」であると改めて認識できる一冊です。

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