書評『不本意な敗戦 エルピーダの戦い』
(坂本 幸雄/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 モバイルで復活
第2章 技術を途絶えさせてはならない
第3章 エルピーダの多難な船出
第4章 失敗に終わった世界再編
第5章 なぜ更生法適用申請に至ったか
第6章 2つの勝ちパターン
著者:坂本 幸雄
 元エルピーダメモリ社長兼CEO。1947年群馬県前橋市生まれ。70年日本体育大学体育学部を卒業し、日本テキサス・インスツルメンツ(TI)入社。工場長、事業部長、開発本部長を経て、93年取締役副社長に就任。97年には神戸製鋼所とTIとの合弁会社の立て直しのため神戸製鋼所へ転籍、2000年には日本ファウンドリー(現UMCジャパン)社長に就任し、経営難にあえぐ同社再建を成功させる。02年、経営危機に瀕したエルピーダメモリ社長に就任。世界中を飛び回って資金を集め、巨額投資に踏み切ることでシェアを回復させる。04年には東京証券取引所第一部上場を果たす。しかし、リーマン・ショック後、円高や半導体市況の低迷といった逆風にさらされ、12年2月会社更生法の適用を申請、管財人を務める。

書評レビュー

世界最高峰と呼ばれた技術をもつ会社の経営破綻

「エルピーダメモリ」という名前を聞けば、同社が世界的なDRAM(半導体メモリ)メーカーだとピンとくる人も多いはず。

エルピーダは、2012年2月、会社更生法を申請し、その後、アメリカのマイクロン・テクノロジーに買収されました。当時、新聞をはじめ、様々なメディアでエルピーダが誌面を賑わせていたの覚えていらっしゃる方も多いと思います。

エルピーダは、世界で最高峰の技術を持つ半導体メーカーとしても有名な企業でした。ではなぜ、そんなエルピーダが、会社更生法の適用を申請し、経営破綻を迎えたのでしょうか?

本書では、筆者でもある元CEOの坂本幸雄氏の社長就任から、経営破綻にいたるまでのエピソードや、坂本氏の経営者としての考え方などが紹介されています。この書評では、エルピーダが経営破綻に至った理由について、紹介していきます。

なぜエルピーダは会社更生法の適用を申請したのか

半導体業界は、「シリコンサイクル」といわれる、製品の世代交代の時期に急激な需給のアンバランスが生じることで、好不況のアップダウンが激しいことで有名です。

そのため、不況時には赤字になる企業も多く、他業界より資金繰りが重要になる業界でもあります。また、資本集約型のビジネスでもありますので、工場などへの設備投資の度に、巨額の資金が必要になります。

リファイナンス(借り換え)の失敗

そのような背景の中で、日本で唯一の専業DRAMメーカーであるエルピーダは、リーマンショックや円高といった過酷な経済環境に苦しめられていきます。坂本氏曰く「エルピーダのトップとして最も重要な仕事は金策だった」といっても言いすぎではないという状況だったそうです。

そのため、「改正産活法」の枠組みを利用し公的資金の注入やメガバンクなどから1,100億円の融資を受ける必要がありました。

そして、このリファイナンス(借り換え)を行うタイミングで、銀行から「資本提携先を見つけ、1,000億円規模の資本増強を行わなければ、リファイナンスを行うことはできない」と通達されます。

この提携交渉がうまくいかなかったことが直接の原因となり、エルピーダは会社更生法適用申請を行うことになるのです。

メインバンクを持たない功罪

坂本氏は当時、あえてメインバンクというものを持たず、案件ごとに、付き合う銀行や証券会社を変えていました。その方がより有利は条件を引き出せると考えていたからです。

しかし、それにより、有事における銀行間の貸し借りのネットワークに入ることができなかったと述べています。

「メーンバンクをつくっておかなかったのは、経営者としての私の失敗だったと認めざるをえません。かつての日本企業は、銀行に甘えすぎて野放図な投資を行い、経営が傾くことがありましたが、エルピーダはその反対で『銀行に甘えなさすぎ』が問題でした。」

同時に、日本の銀行には、借入金の回収にあたり、人件費や間接費の削減を求めることが多く、結果、それが優秀な人材の流出につながっているとして、銀行はもっと「企業を育てよう」という大きな志を持つべきだ、とも述べています。

まとめと感想

会社更生法当時、エルピーダはBS(バランスシート)の改善を進めており、借入金も順調に減らしていったようです。坂本氏も再建への手ごたえを感じていただけに、リファイナンスがうまくいかなかったことに対して忸怩たる想いがあったのだと思います。

もっとも、本書では、銀行が若干悪玉に見えるように描かれていますが、あくまで企業サイドの目線であることを差し引いて考える必要があるとは思います。

他にも、エルピーダを離れ、失敗を経験したうえでの「元」CEOとして社外から見た会社経営の在り方などについても、見解が述べられていますので、マネジメントクラスの方にも参考になる一冊だと思います。

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