書評『「失われた20年の勝ち組企業」100社の成功法則』
(名和 高司/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
■第一講 「失われた二〇年」の勝ち組とは?
■第二講 一点突破で「タイプX」を目指す弱者の戦略
■第三講 ずらしによる「X」経営への拡業
■第四講 「J」から「X」へのターニングポイント
■第五講 タイプZ:ファーストリテイリングの戦略
■最終講 成長へのX(クロス)ロード
著者:名和高司
1957年生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱商事に入社。90年米ハーバード・ビジネス・スクールでMBA(経営学修士)を取得、ベイカースカラー(最優秀賞)を受賞。91年マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。日本、米国、アジアなどを舞台に企業の成長戦略や異業種アライアンス、経営変革に取り組む。2010年から一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授。

書評レビュー

4つの経営モデルから読み解く成功企業

本日紹介するのは、”失われた20年”といわれた低成長経済の中でも、成長を遂げた日本の勝ち組企業100社をリストアップし、その経営戦略と「勝ちパターン」に迫った一冊。

著者の名和高司氏は三菱商事、ハーバード・ビジネス・スクールMBA、マッキンゼーなどで日・米・アジア企業の経営革新に携わり、現在は一橋大学ビジネススクールで教授を務める名和高司氏。

本書では、成長企業100社の経営モデル(成長戦略)を、「J」「W」「X」「Z」の4タイプに分類しています。4つのタイプとは以下のように説明されています。

【タイプ J】
オペレーション力に磨きをかけ続ける「Do more better」モデル

【タイプ W】
オペレーション力に加えて、トップの経営変革力で非連続な成長を牽引する「Scale up」モデル

【タイプ X】
オペレーション力に加えて、事業モデル構築力と市場開拓力を成長のエンジンとして回し続ける「Scale out」モデル

【タイプ Z】
オペレーション力、事業モデル構築力、市場開拓力、経営変革力の4つすべてを兼ね備えた「Almighty」モデル

そして本書の特徴は、最強と思われる「Z」型経営を目指そう、ではなく、日本企業はタイプ「X」を目指せ!とい主張している点だと思います。なぜでしょうか?

その大きな理由として、日本企業には「J」型が多い点、そして日本のトップ経営者には「Z」型モデルに必要な「経営変革」力を強く期待できないからであると説明されています。

「Z」型経営を目指すのであれば、もっとも早いのが、「トップを外国人のプロ経営者と交代する」「欧米企業がM&Aにより経営権を握る」「大半の日本企業を見捨てる」というドラスティックな方法が必要とまで述べています。耳が痛いながらリアリティのある視点ではないでしょうか。

本書では「X」企業の事例として、ユニ・チャーム、味の素、ダイキン、日東電工の「三新活動」、オムロンなどがあげられています。たとえば、「味の素」の「市場開拓力」に着目した部分を紹介します。

グローバル食品業界を代表するタイプ「X」企業~「味の素」

「味の素」といえば同名の調味料で日本では有名ですが、実は早期に海外(特にアジアの新興国)に進出し、すでに海外売上高50%以上、海外従業員比率60%以上というグローバル企業です。

同社の新興国戦略の基本は、以下「三つのA」だと言われています。

1.Aadaptive(アダプティブ:現地に適応させる)
2.Affordable:(値段がお手頃)
3.Accessible:(津々浦々にまで行き渡る)

1、2は商品(味)のローカライズや、小分けにして低価格で販売するなどの手法で実現されていますが、3の入手しやすさへの対応が味の素の海外展開を成功させた重要なポイントです。次のようなエピソードが紹介されています。

「インドネシアやタイのお店はパパママ・ストアが多く、商品補充一つとっても実際には大変な手間がかかります。(中略)そこで味の素が考え出したのが、現地の人を二人ペアで回らせて、小分けの「Masako」(※現地で販売している調味料)を納入し、同時に現金をもらってくるという現物現金主義の方法です。新規開拓も含めて丹念に担当エリアを回るグループをつくっています。」

なぜ二人組かというと、まだまだ治安が悪い所も多いなか、「襲撃」を受ける危険性も踏まえてとのことですが、代理店ではなく直販部隊による現地密着型で需要と供給を把握し、市場シェアを抑えています。

相当地道な新規開拓営業を行った結果ですが、味の素の徹底した「市場開拓力」という強みがご理解いただけると思います。

まとめと感想

では、どうすれば「X」型企業へと脱皮できるのか、詳細は本書に譲りますが、そのポイントは「軸足をずらすこと」であると述べられています。

つまり自社の技術や特定市場への強みに立脚して、その領域や事業を拡大していく手法です。

また、「危機感」や「経営者の覚悟」といったエネルギーがないと「軸足」をずらしていくことはできない(=日本に軸足を置いたままでは日本以上の事業にはならない)とも書かれており、いわゆる経営学者の本にありがちな戦略分析にとどまらない内容となっています。

本書で取り上げられる事例のなかには有名なエピソードもありますので、全てが目新しいものではないと思いますが、J、W、X、Z型それぞれのケースが豊富に挙げられており、自社の参考となる具体的なヒントが見つかるものと思います。

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