書評『「ディープな高齢社会」ニッポンで稼ぐ』
(根本 重之/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 人口減少、世帯規模縮小市場を掘り起こす
第2章 拡大する高齢市場、超高齢市場を掘り起こす
第3章 買物弱者を効率的に支援する
第4章 若年層、未顧客・非顧客層を掘り起こす
第5章 情報通信技術の活用で国内市場を掘り起こす
第6章 災害対応力向上に貢献し国内市場を掘り起こす
第7章 消費税率引き上げを乗り越え国内市場を耕し続ける
著者:根本 重之
 1954年生まれ。横浜市出身。一橋大学社会学部卒業、早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。社団法人日本能率協会、財団法人流通経済研究所を経て、現在、拓殖大学商学部教授、公益財団法人流通経済研究所理事。著書に『新取引制度の構築』(白桃書房)、『プライベート・ブランド』(中央経済社)、編著書に『グローバル・リテイラー』(東洋経済新報社)などがある。
 大学で流通産業に関する講義を担当するとともに、過去20年以上にわたり、上記研究所で消費財メーカー数十社の本社の営業および営業企画部門のスタッフを対象とする月例研究会を開催し、消費、大手小売業の動向、流通関連の法規制、ITの変化、メーカーの営業・マーケティング政策などに関するホットなテーマについて報告、提言を行ってきた。近年は、日本スーパーマーケット協会の長期シナリオの作成などにも参画している。消費財メーカー、卸売業、小売業などの要請を受けて行う講演も好評であり、毎年行う新年度を展望する講演は、ここ数年『商品と流通の先を読む』(ケイプラス)というシリーズ名のDVDにもなっている。

書評レビュー

「ディープな高齢化社会」とは

 本日紹介するのは、日本の人口動態をもとに、2030年代までの「ディープな高齢化社会」における、消費のトレンドやビジネス需要を考察した一冊。データが網羅的で豊富なので、ビジネス観点からの高齢化社会対応の基本書としては有意な本だと思います。

 タイトルにもなっている「ディープな高齢化社会」とは、2016年以降の75歳以上の後期高齢者だけが増えていく時代のことを指しています。著者は、拓殖大学商学部教授、公益財団法人流通経済研究所理事などをつとめ、流通、消費財などを専門とする人物。。

 本書の趣旨としては、企業(特に消費財メーカー、小売、卸など)は、高齢化が進んでもいまだ1億人の市場を誇る日本国内においては、「シニア向け需要の取り込み」「若年層の取り込み(今手を打たないとさらに先細る)」にフォーカスして戦略を打つべきである、というものです。

高齢化の4つのステージ

ひとえに「高齢化社会」といっても、年代ごとにその特色が違うことも本書では説明されています。この書評ではそれらの「高齢化の4つのステージ」について紹介します。

 年代別の高齢化の4つのステージとは以下のものです。ひとつずつ見ていきます。
※前期高齢者とは65~74歳、後期高齢者とは75歳以上の方をさします。

・第1ステージ(2010年代前半)―団塊の世代が高齢者になる
・第2ステージ(2010年代後半)―ディープな高齢化社会の到来
・第3ステージ(2020年代)―後期高齢者2,000万人時代の到来
・第4ステージ(2030年代)―85歳以上の超高齢者1,000万人時代の到来

第1ステージ(2010年代前半)―団塊の世代が高齢者になる

「現在すでに進行中の高齢化の第一ステージは、団塊の世代が前期高齢者になる時期である。2012年から2014年までの3年間で、この世代が順次65歳になっていくため、2010年代前半は、前期高齢者が後期高齢者を上回って増加する」

 これを受けて消費市場はどのような影響を受けるのでしょうか?縮小する市場と拡大する市場に言及されています。

 たとえば、職場近くの飲食店や、職場に来ていく服の市場などにはマイナスの影響が出るといいます。逆に、内食市場などにとってはプラスです。仕事をやめた男性は家で食事をとる回数が増えるからです。

 また、会社のものを使っていた文房具、トイレットペーパー、水、電気など、かなり多くの品目で「自前消費」が増加すると予測しています。

第2ステージ(2010年代後半)―ディープな高齢化社会の到来

 第2ステージ以降が、本書でいう「ディープな高齢化社会」ですが、「2017年には、後期高齢者数(1,760万人)が前期高齢者数(1,758万人)をわずかだが上回り、以降、後期高齢者だけが増加する『ディープな高齢者社会』が開幕する。」と説明されています。

 この結果、医療費や介護用品がより一層増え、店舗まで買い物に出かけてくるのが困難になる高齢者も増え、食品や弁当などの宅配事業などがこれまで以上に伸びていくことが予想されています。

 さらに、そのような高齢者は、もはや日常的には店舗には来ず、施設運営者などのサービスを通じて日々の需要のかなりの部分を満たすようになっていきます。これを業種別に考えると、小売業は新たなプレーヤーと競争または協業していく必要がありますが、メーカーや卸売業は、販路拡大のチャンスともいえることがわかります。

第3ステージ(2020年代)―後期高齢者2,000万人時代の到来

 次の段階では、第2ステージに起こった市場の変化が、より大きくなっていきます。

「2022年には、団塊の世代が後期高齢者になっていく。(中略) 2023年には、後期高齢者が2,000万人を超え、さらに増える時代が来る。総人口の6人に1人は後期高齢者であり、前期高齢者を含めると、10人のうち3人は高齢者という、相当ディープな高齢化社会になっている。」

第4ステージ:第4ステージ(2030年代)―85歳以上の超高齢者1,000万人時代の到来

 そして第4ステージは「非常に」ディープな高齢化社会ですが、同時に後期高齢者2,000万人という大きな市場が生まれるステージでもあります。

「次の節目は、やはり段階の世代が画するのだが、この世代が85歳を超える2030年代前半である。(中略)2035年には、ほぼ11人に1人、2040年にはほぼ10人に1人が超高齢者という計算であり、そのうち3分の2は寿命の長い女性が占める。非常にディープな高齢化社会だ。」

 著者は、企業は今からでも、既にその年齢になっている人たちの生活をよく観察し、何が必要かを徹底的に考えていくべきであると指摘しています。

 本書では上記のような段階を踏まえ、2020年代以降に成長が見込まれるマーケットとして、「保険医療用品・器具」(保健用消耗品、眼鏡、コンタクトなど)、「交通」(タクシーなどの移動手段など)をあげています。そして、車、酒などの消費財ごとにもろもろの考察が加えられています。

 また、災害に対する備蓄需要や、直近の消費税引き上げ対応、若手需要の掘り起し事例(「じゃらん」の雪マジ19!や、味の素「アジパンダ」など)、市場を概観するデータと事例が豊富です。自らの事業でどのような戦略をとるか、その考察に有用な一冊です。

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