- 著者プロフィール
はじめに バーン・ハーニッシュ
1. スティーブを呼び戻せ!
2. ザッポスを救った無料配送
3. サムスンが優秀な社員を遊ばせる理由
4. 株主より顧客を優先する信条
5. 夢想の時間が生んだ大きな成果
6. 消費者に愛されるコンピュータチップ
7. 「ジャックの大聖堂」がもたらしたもの
8. 一週間休むビル・ゲイツ
9. ソフトソープのブロッキング作戦
10. 欠陥ゼロを目指すトヨタを支えたもの
11. 究極のカスタマーサービス
12. 深刻な状況を脱するための特効薬
13. 707に社運を託したボーイング
14. IBMの奇策、ベアハッグ作戦
15. ウォルマートの土曜日早朝ミーティング
16. 事業に問題が? では大転換だ!
17. 利益より信頼を優先する「HPウェイ」
18. 賃金を倍増する――史上最高の決断?
世界的に名高い「起業家機構」(EO:Entrepreneurs’ Organization)の創設者で、MIT(マサチューセッツ工科大学)で開講されているEOのCEOプログラム「Birthing of Giants」と経営幹部プログラム「WEO Advanced Business」の議長を15年間務めた。グローバルな管理者教育/コーチング企業ガゼルの創業者でCEO。過去30年間、起業家教育に携わってきた。『フォーチュン』誌などでコラムを執筆。
書評レビュー
ビジネスの根底を覆し、企業や業界を変えた18の事例
「フォーチュン誌」と言えば、世界で500万人以上が読む、世界最高発行部数を誇る英文ビジネス誌として有名です。本書は、そんなフォーチュン誌が「ビジネスの根底を覆し、企業や業界、ときには国をも変えた」企業の経営判断をストーリーでまとめた一冊。
ビジネスの根底を覆した「経営判断」18社の事例がリアルに表現されていますが、そのうち本書が選ぶ上位5社の経営判断は次のようなものです。
1位:フォード
従業員の賃金を倍増するというヘンリー・フォードの決断
2位・アップル
創立者スティーブ・ジョブズを、彼が社を離れてから10年後に呼び戻してCEOに据えた決断
3位:ウォルマート
第一号店で、全従業員を集めて土曜の早朝ミーティングを開始したサム・ウォルトンの決断
4位:サムスン
スター社員を一年間、世界各国に滞在させるという前例のない有給プログラムを導入した決断
5位:GE
第一級の研修施設クロトンビルに注力し、資金的にも援助するというジャック・ウェルチの決断
この書評では、ここから「フォード」の経営判断について、ご紹介します。
自動車業界をけん引した「フォード」の史上最高の決断
1914年当時、フォードの業績は好調で、車の生産台数もうなぎのぼりで増加していました。しかし、その際問題になったのは、高い離職率でした。なんと当時の離職率は370%と非常に高く、必要な人員を維持するためにフォードは頭を悩ませていたそうです。
なぜなら、生産ラインが稼働すればするほど、退屈でうんざりする作業がどんどん増え、かつ肉体労働による疲労が、労働者を苦しめていたとのこと。皮肉なことに、生産台数が増加し、売上高が増加すればするほど、会社の台所事情は厳しくなっていったのです。
そこでフォードがとったのが、一日2.5ドルだった賃金を5ドルにする、つまり2倍にするというものでした。これは、労働者を軽んじていた当時の風潮からすると驚くべきものであり、自社への賃金アップの圧力を恐れた同業他社からの批判・風当りは相当なものだったようです。
もっとも、フォードはこれらの批判に全く動じることなく、こう述べたそうです。
「他の検討事項はとりあえず脇において考えるなら、売上は、われわれが支払う賃金にある程度依存するものだ。高い賃金を分配できれば、今度はその金が消費され、商店経営者や卸売業者、製造業者や他の分野で働いている労働者を豊かにする。
そして彼らの繁栄がわれわれの売上に反映される。全国規模で賃金が高くなることは、全国規模の繁栄を意味する。」
このフォードの決断が、「今世紀最も重要な労働施策」の1つと呼ばれる「最低賃金法」を生みだす原動力になったのです。現代においても、賃金に関する論争は決着を見ていませんが、少なくともアップルの中国工場では、同様の施策により、競争力がついたとも言われています。
本書ではほかにも、スティーブ・ジョブズのアップル復帰のような有名なストーリーも掲載されているので、ものによっては新鮮味がないかもしれませんが、有名企業18社の経営判断をまとめて読むことができる本はなかなかありません。
ましてや、それがフォーチュン誌の選んだ経営判断ならばなおさらです。ビジネスパーソンとしての判断力や知見を広めるのに役立つ一冊です。
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