書評『USERS―顧客主義の終焉と企業の命運を左右する7つの戦略』
(アーロン・シャピロ/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
イントロダクション ユーザーファースト―デジタル時代のビジネスを左右する最も重要なコンセプト
第1章 ユーザー中心の経営
第2章 同心円型の組織体制
第3章 使い捨てテクノロジー
第4章 社会的使命に基づいた製品
第5章 ユーティリティ・マーケティング
第6章 TCPFセールス
第7章 ハイブリッド・カスタマーサービス
おわりに シフトする―今からでも遅くはない。ユーザーファースト企業になろう

著者:アーロン・シャピロ
 グローバル企業の再創造を援助するデジタルマーケティング会社、HUGEのCEO。前職はテクノロジー起業家、ベンチャーキャピタリストおよび経営コンサルタント。コロンビア大学ビジネススクールMBA。ハーバード大学卒(経済学)。ニューヨーク在住。

書評レビュー

「ユーザーファースト」を経営戦略まで落とし込む

本書は、最近よく聞く「ユーザーファースト」の考え方を、具体的なフレームと事例により、経営戦略にまで落とし込んで解説した一冊。本書の趣旨は、前書きにある以下の一文によくあらわされています。

「普段なにげなく使っている「ユーザー」という言葉を、メディアとテクノロジーを利用して企業とやりとりをするすべての人々と定義し、経営戦略にとって重要なコンセプトの中核に据える。」

 現在、商取引のほとんどはデジタル上で行うことができます。この結果、デジタルなチャンネルで関わる「ユーザー」のニーズや関心を、最優先する企業が最も成功する、というのが本書の出発点です。そして、「ユーザーファースト」な企業の特徴を、マーケティングから組織の構築まで、「社内を動かす力」と、「社外とのタッチポイント」に分けて7つあげています。

社内を動かす力
1.ユーザー中心の経営
2.同心円系の組織体制
3.使い捨てテクノロジー

社外とのタッチポイント
4.社会的使命に基づいた製品
5.ハイブリッド・カスタマーサービス
6.TCPF・セールス
7.ユーティリティ・マーケティング

 この書評では、本書の内容から「ユーザーファーストを実現する4つの手法」について紹介します。

ユーザーファーストを実現する4つの手法

 これらの戦略は「社会的使命を実現する4つの手法」として紹介されているものです。本書でいう「社会的使命」とは、ユーザーに対する提供価値を突きつめたもので、たとえばECサイトであれば、「快適な購入体験」になります。具体的な戦略として、以下の4つが挙げられています。

1.「意思決定サービス」を作る

「意思決定サービス」とはオンラインショッピングでの大量の情報と選択肢を消費者が理解するのに役立つものであり、彼らが正しく買い物できるように助けるものを指す

 具体的な例としては、豊富な情報源の提供、リコメンド、買い物履歴リスト、ウィッシュリストなどの意志決定をサポートするユーザーサービスです。特に、定期的に注文する商品(日用品)などは、飛躍的に買い物体験を効率化してくれるものだと紹介されています。

 皆さんも、ネットショッピングで比較検討しすぎて、疲れてしまった経験があると思います。消費者が妥協の選択なしに買い物できる「意思決定サービス」は、それ自体が企業の社会的使命に貢献するものといえそうです。

2.主に提供しているものを補完するサービスを開発する

 競合がカバーできていないユーザー・ニーズを見たす補完的なサービスを提供すること

 具体的には、メンバー限定機能や、コミュニティ運営などの事例が取り上げられていますが、日本だとニコニコ動画やクックパッド、食べログなどのの有料会員限定サービスがすぐに思い浮かぶのではないでしょうか。

 これらの補完的サービスは、無料ユーザーに解放しても、有料課金ユーザーに限定しても有効であり、集客力と顧客維持の、両方の効果があるのがポイントです。

3.アナログ商品とデジタルを組み合わせる

 こちらは文字通りですが、アナログとデジタルの組み合わせが、ユーザビリティを一段あげること説明されています。

 最も洗練された企業は、アナログとデジタルの世界を組み合わせることによって、全く新しい複合的なサービスを作りだす。それは、フィジカルとバーチャルの二つの世界を組み合わせることなくしては不可能だったサービスだ。

その結果、どんなオフラインあるいはオンラインの単独の製品よりも価値のある、新しいソリューションを生む。ナイキプラス(Nike+)が、そのよい例だ。

 事例として、「Nike+」というGPS付センサー(スニーカーと連動させさまざまなログが取れる)そしてNikeIDという完全オーダーメイドできるスニーカーのサービスを上げています。

4.差別化のためにデータを使う

 4つ目が最も重要視されているものですが、ユーザー行動データの蓄積が、究極的にはユーザービリティを向上させていくということです。

 企業が社会的使命を活用する究極のテクニックは、データの収集、解析、そして活用だ。(中略)この方法はネットワーク効果を発揮する企業にも優位に働く。新たにユーザーが加わるたびにサービスの価値があがり、同じ品質の新規のサービスの参入を難しくする。そして、ユーザーがシステムにデータを遺せば残すほど、そこに囲いこむことになる。他への乗り換えを難しくするからだ。

 こちらも、Nike+ならば自身の記録ログの蓄積、Netflix(hulu的なオンライン映画視聴大手)なら精度の高いリコメンデーション機能が、より高いユーザー体験を実現していくのです。

 本書はアメリカで発行されてから2年程経っていますが、古さを感じさせない内容で、ウェブサービスやECに直接関わっている方だけでなく、むしろデジタル化が遅れている業界の企画・戦略系の方にとって有意義な一冊です。

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