書評『私は、こんな人になら、金を出す!』
(村口 和孝/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
1、DeNAの苦悩と栄光
2、私はこんな人になら金を出す!
3、起業家に立ちはだかる七つの壁
4、独立系ベンチャー・キャピタルのダイナミズム
5、私がベンチャー・キャピタルになるまで
6、起業の現場を追体験する「創業物語」
7、起業を志す皆さんへ
著者:村口 和孝
 1958年徳島県生まれ。1984年に慶応義塾大学経済学部卒業後、証券系ベンチャー・キャピタルの(株)日本合同ファイナンス(現・ジャフコ)入社。1998年に独立し、個人資産も投じて、日本初の個人型ベンチャー・キャピタル「日本テクノロジーベンチャーパートナーズ投資事業組合(NTVP)」を立ち上げた。これまで出資した、DeNA、インフォテリア、阿波製紙、ウォーターダイレクトなど6社が株式上場(店頭公開含む)に成功。通算成績でキャピタルゲイン250億円と、独立系ベンチャー・キャピタリストとしては、日本随一の実績を収めている。

書評レビュー

成功する経営者に共通する資質

 本書は、長くVC(ベンチャー・キャピタル)の世界にいる著者が、DeNAなど、数多くの投資対象企業への出資経験から、「成功する起業家の条件」を解説した一冊です。筆者の村口 和孝氏は大手VC(ベンチャー・キャピタル)として有名なジャフコを経て、初めて個人型VCを立ち上げた人物。

 その投資対象は、DeNAなど上場した6社を含み、キャピタルゲイン300億円超と個人型VCではトップクラスの運用成績を記録しています。筆者は、今までのベンチャーキャピタリストとしての投資経験から、成功する経営者の資質は複数あると解説しています。

 その中で特に印象に残った資質として「粘り強くあきらめない人」があります。筆者は、アップルのスティーブ・ジョブズ、アマゾンのジェフ・ベゾス、松下幸之助といった錚々たる経営者にも共通している資質としても、この「粘り強くあきらめない」ことを挙げています。

 失敗をしない経営者などいないのですから、失敗を糧にいかに工夫をして、トライし続けることができるかが重要。(中略)事業計画書がいかにうまくできていても、必ず直面するいくつもの困難を乗り越えるだけのエネルギーを感じさせる人でなければ、私はとても出資を決断することはできません。

 これは、昨今よく言われるサラリーマンVCではなく、個人型VCとして独自の目を持って投資をしてきた筆者だからこそ言えることかもしれません。投資回収を目的とするVCだからこそ、「失敗をしない経営者などいない」という言葉には重みがあると思います。

DeNAが成功した7つの要因

 筆者はソーシャルゲーム大手のDeNA(ディー・エヌ・エー)創業社長 南場智子さんの熱心な説得を受け、創業間もないDeNAに出資しています。そして、DeNAの資本政策や事業計画の策定から株式市場の上場と、創業から成功までの軌跡に一貫して関与してきました。

 そして、DeNAの成功を間近で見てきた筆者が考える、DeNAが成功した要因として、以下の7つが紹介されています。

DeNAが成功した7つの要因
1.新しい大きな顧客マーケットの発見と、インパクトある商品サービス
2.新規事業全体のインフラと周辺サービスを、自社で担ったスピード
3.世界レベルの企業を目指す、高い目標
4.高い結果をコミットする、明確でぶれないプリンシプル(信条)
5.超合理的判断でビジネスモデルを作り、現場が実行責任をまっとうした
6.若く少数精鋭で、最高のパフォーマンスを求めた
7.財務を健全化し、パートナーを大切にしてきた

 このうち、著者は「④高い結果をコミットする、明確でぶれないプリンシプル(信条)」については以下のように述べています。 

社長みずからが営業を率先垂範し、新規事業に取り組み続け、『顧客価値の最大化により、社会正義に基づき高い売上と利益を上げることで、社会的に大きな価値を実現する』という原則のもとで、ぶれずにその高い結果実現をコミットしてきた。

 やはり高い志こそが成功の秘訣だということが、DeNAを通じて確認できたと説明されています。他にもDeNA上場までの裏側が、VCからの目線で述べられていますので、南場社長の著者「不格好経営」とあわせて、読み物としても興味深いものとなっています。

 本書は経営や事業計画策定のスキルなどが身に付くという類の本ではありません。しかし、筆者の投資経験を通じて得られた、「経営者としての心構え」と、経営に必要なのは、スキル以上に心構え、覚悟、そしてビジネス感度だということを教えてくれる一冊です。

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