書評『みんなの経営学―使える実戦教養講座』
(佐々木 圭吾/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
1.経営学はなぜ必要か―儲けるためではなくよく生きるための学問
2.企業とは何か―企業論をもとに経済活動の主人公を知ろう
3.職場にやる気を起こすには―楽しく働くためのモチベーション理論
4.優れたリーダーの条件とは―集団を束ね導くための論理
5.1+1を2以上にする組織とは―挑戦と安定を両立する
6.良い戦略的経営を実現するには―本当に勝つための経営戦略論
7.これからの経営学―未来の経営を捉える視座
著者:佐々木圭吾
 東京理科大学大学院イノベーション研究科教授。1986年九州大学経済学部卒業後、4年間の電機メーカー勤務を経て、96年一橋大学大学院商学研究科博士課程単位取得修了。同年横浜市立大学商学部専任講師、翌年助教授。2006年東京理科大学大学院イノベーション研究科准教授、2012年より現職

書評レビュー

経営学は「教養」である

 本書は、有名な経営学者でもある筆者が、経営学の基本知識をつうじて、組織(企業)、マネジメント、経営戦略といった、ビジネスパーソンが持つべき「教養」をわかりやすく解説した一冊です。

 まず、経営学と聞くと、どんなイメージを思い浮かべるでしょうか? MBAホルダーのみが学べばよいもの?経営とついているのだから、経営者のみが学べばよいもの?経営学を知っていても実務には活かせない、苦境の時の解決策を提示してくるものではない、そういった声もあるでしょう。筆者は、このような意見に対して、「経営学は教養である」と述べています。

 この「教養」を筆者の言葉を借りて解説すると、下記のようになります。なお、筆者のいう「教養」には三つの要素があります。

(1)教養とは、実技や実用ではない、世の中の風潮に惑わされず、自分の思考を自由に働かせ、物事を正しく捉えるための基礎となる知識
(2)社会の理想や規範や模範を含んだ倫理的な概念
(3)一部の専門的な実践家が知っておくべきスキルや分析枠組みではなく、現代の社会に生きるみんなが知っておくべき知識

 つまり、経営学とは、特別な人間のみが学ぶべきものではなく、かつ、実務云々の前に最低限知っておかなければならない知識なのです。

主体的に思考し行動するための経営学

 経営学は、企業の業績の変化などを、外部環境の変化などのせいにはせず、その環境の中で組織の構成員である個人がどのような意思決定をおこなったのかという、「主体性」にフォーカスを当てた学問であると、筆者は述べています。

「経営学は、単に思考するための学問ではなくて、思考して行動するための学問である。一定の目的を達成するために、環境を与えられたものと見ないで環境を積極的に
コントロールしていく人間の主体的な行動を取り扱う唯一の学問である。

経営(management)で一番大切なこと

 多くの管理職と呼ばれるマネジメントクラスの人間は、従業員の管理が主な仕事であり、部下は上司の言うことを聞くものだと思って節があるのではないでしょうか。これに対して、筆者は、他人は他人であり、自分ではないのだから、機械のように自分の思い通りに動かすことはできないとした上で、こう述べています。

「他人を直接的に動かすことができない以上、人を動かすためにできることは、意図したように動いてもらうような状況を作ったり、説得したりして、間接的な影響を与える程度ことでしょう。(中略)「部下を動かす」よりも「部下に動いてもらっている」という自覚がマネジメントを考える際の、スタートポイントになると思います。」

 「優れた会社は、すべての社員が、経営者という意識をもって働いている」と言われているように、優れたビジネスパーソと呼ばれる方々の多くは、経営(マネジメント)への意識を高くもっているのではないでしょうか。

 本書でも、「経営学」は教養である、つまり、すべてのビジネスパーソンが学び身につけておくべき学問だと述べていますので、基本的な考え方は同じだと思います。わかりやすく経営学の基本をまとめながら、マネジメントのエッセンスもしっかりと押さえた一冊となっていますので、経営学の入門書としてお薦めです。

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