書評『会社の目的は利益じゃない』
(横田 英毅/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 「理念」の考え方
第2章 「人を育てる」ことの考え方
第3章 「サービス」の考え方
著者:横田 英毅
 1943年生まれ。日本大学理工学部卒業後、カリフォルニアシティカレッジに留学。宇治電化学工業㈱(西山グループ系列)、四国車体工業㈱(同グループ系列)を経て、1980年、トヨタビスタ高知株式会社(同グループ系列・現ネッツトヨタ南国株式会社)発足と同時に副社長に就任。1987年、同社代表取締役社長。2007年、同社代表取締役会長。2010年、同社取締役相談役に就任して現在に至る。 ネッツトヨタ南国は、全国のトヨタ販売会社300社中、12年連続顧客満足度NO.1。1917年より続く西山グループの資本家の一員として、愛媛トヨタ自動車㈱、㈱トヨタレンタリース西四国、四国車体工業㈱などの代表取締役も務める。
 ネッツトヨタ南国では、同社を設立して以来、経営における重要テーマと考えた「人材」の問題に取り組むべく、発足からの10年は自ら採用担当として数多くの学生と面談、現在の経営幹部の採用実務に携わった。以降、同社、同グループにおける人材問題のみならず、高知県産業界の人材にまつわる問題解決にあたるべく、「土佐経済同友会(2000年~2004 年)」「高知県パワーカンパニー会議」「高知県経営品質協議会(KQN)」などの代表幹事、高知県教育委員会が主導する「土佐の教育改革」委員などを務めながら、「人づくり」に関するさまざまな提言を行っている。2009 年より高知工科大学客員教授。

書評レビュー

「全社員を勝利者にする」経営

本日の一冊は、不況下でも業績を伸ばし、オールトヨタお客様満足度12年連続トップとなったカーディーラー・ネッツトヨタ南国の「目的」重視の経営について書かれた一冊。著者は、ネッツトヨタ南国を現在のような経営状況にまでつくりあげた元社長で、現相談役の横田英毅氏。

本書およびネッツトヨタ南国の経営に対する考え方の一番の特長は、「会社にとって一番大切なことは何か?」、そして「それをどう実現するか?」を重視する経営を貫いている点。それが「顧客」と「社員」の強い支持を得て業績をあげることができたと説明されています。

横田氏は、スティーブン・R・コヴィー(「7つの習慣」の著者)の言葉を引用してこのように語っています。「いちばん大切なことは、いちばん大切なことを、いちばん大切にすること」そして、ネッツトヨタ南国の一番大切にしたいこと(目的)は、「全社員を勝利者にする」ということです。

本書では、その目的を本気で実現するための、目的(目標ではなく)に対する考え方、社員への権限移譲、人材採用・育成、感動を生むサービスのつくり方、など多岐にわたる事例が語られています。この書評では、その中から特に印象に残ったユニークな考え方を4つほどピックアップして紹介していきます。

いちばん大切なことを大切にするための考え方

1.目標ではなく目的を重視する

会社の「目的」は、売上や利益ではなく「社員を幸福にする」などのように、会社がそうありたいと思う姿です。言いかえると、目的は「方向」であり、目標は「距離」であると本書では説明されています。では、目的を重視しすぎて、目標(数値、量など)である売上や目標はおろそかにならないのか?という疑問に対して、著者はこのように回答しています。

会社の場合、どうして売上が上がらないのか、どうして利益が出ないのかを突き詰めていくと「社員がいやいや仕事をやっているから」ということが原因で有る場合が多々あります。

なぜやる気を持てずにいやいや働いているのか?それは彼ら、彼女らが給料のために働いているからです。給料をもらうという目標のために働くのでは、仕事への情熱など生まれるはずがありません。いやいや、しぶしぶのやらされ仕事になってしまいます。それで成果があがるはずがありません。

それゆえ、経営者は、社員全員が「自分はなんのために働くのか」という目的を持ち、「この会社で一生懸命働くことがいちばんだ」と思ってもらえるような会社にすることに専念する必要があるのです。

2.結果ではなく、プロセスこそ評価する

多くの企業が「とにかく結果を出せ、結果こそすべてだ」という企業が多い中、ネッツトヨタ南国では、プロセスを評価しています。なぜなら、結果ばかり評価すると、結果のみを求める働き方になり、プロセスである顧客満足などがおろそかになってしまうからです。そして、その背景には、プロセス重視こそが結果重視につながる、という考え方があります。

お客様の満足は、自分たちのやりがいである社員満足につながっています。お客様が満足してくださり、感謝と信頼の言葉をかけてくださる。その言葉が、社員たちの満足になるのです。

ですから、結果だけを求めて顧客満足度をあまり考えない仕事のやり方をすると、自分たちも満足できず、やりがいもなくなってしまいます。つまり、結果を追い求めながら、逆に、結果を遠ざけていることになります。

3.「今だけ、金だけ、自分だけ」を否定する

本書では「会社の資源は人である」として、採用や育成についても多く触れられていますが、特に採用する人物像について、以下のように述べられています。

わが社ではありがたいことに、チームワークがいい会社だといわれます。その大きな理由の一つは、右にあげたようなタイプの人を採用していないということです。要するに「今だけ、金だけ、自分だけ」を全部裏返した価値観で人を採用しているのです。

今も大事ですが、将来も大事だという価値観。お金も大事ですが、将来も大事だという価値観。自分を大切にしようと思ったら、自分以外の人を大切にしないと自分を大切にしたことにはならない、という価値観です。

そして、これらの価値観を持った人を見極めるために、採用面接は大勢の社員が長い時間をかけて行っているとのことです。著者は「よい会社をつくるには、求める価値観をもった人の集まりをつくるしかありません」とまで言い切っています。

4.トラブルには上司は出ていかない

ふつう、トラブル対応というと上司やマネジャークラスが同席して…というイメージが浮かぶと思います。しかし、ネッツトヨタ南国では、スタッフへの権限委譲を重視し、営業スタッフやショールームアテンダントが対応します。それには、以下のような考え方が背景にあります。

トラブル対応はスタッフが成長する絶好のチャンスだととらえているので、せっかくの機会を上司が邪魔してはいけないと思うのです。それに、第一線のスタッフが問題対応にあたるプロセスを経験したほうが、再発防止に有効ですし、同時にお客様と強固な信頼感家を築くことにもつながっていきます。

もちろんマネジャーは何もしないわけではなく、陰ながらのバックアップや、部門や全社的な情報共有や再発防止プロジェクトの立案などを担っているとのことです。

本書ではほかにも「量より質」、「問題対処ではなく問題解決」などシンプルながら力強い内容が紹介されており、経営層のみならず、リーダーやマネジメント層にも参考になる内容だと思います。

分厚い本ではありませんので、すいすい読めますが、目的経営を実践するわかりやすいヒントが多い良書だと思います。重要なのは、このような会社が実際にずば抜けた業績をあげていることだと思います。このように顧客、社員とも満足度が高い企業が増えていくことが、よりよい社会の実現につながると思います。

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