書評『ユニクロ監査役が書いた伸びる会社をつくる起業の教科書』
(安本 隆晴/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 ユニクロ柳井正社長、自らの起業を語る(聞き手:安本隆晴)
第2章 伸びる会社をつくる起業のステップ
第3章 成功するビジネスプランと資金繰り
第4章 人を採用し、チームワーク力を高める
第5章 会社の成長を加速させる
第6章 いよいよ株式を上場する
著者:安本 隆晴
公認会計士・税理士。株式上場準備コンサルタント。1954年静岡生まれ。1976年早稲田大学商学部卒業後、朝日監査法人(現・あずさ監査法人)などを経て、安本公認会計士事務所を設立。1990年(株)ファーストリテイリング(旧・小郡商事)の柳井正社長と出会い、以降、株式上場準備コンサルタント・監査役として、同社の躍進を会計面から支えてきた。現在、アスクル(株)監査役、(株)リンク・セオリー・ジャパン監査役、(株)UBIC監査役でもある。
2013年3月まで6年間にわたり中央大学専門職大学院国際会計研究科特任教授を務めた。著書に『ユニクロ監査役が書いた 強い会社をつくる会計の教科書』『「ユニクロ」! 監査役実録』『熱闘「株式公開」』(以上、ダイヤモンド社)、『火事場の「数字力」』(商業界)、『数字で考えるとひとの10倍仕事が見えてくる』(講談社)など。柳井正著『一勝九敗』『成功は一日で捨て去れ』(新潮社)の編集にも携わった。

書評レビュー

上場準備のプロフェッショナルが書いた起業の教科書

本日紹介する本は、監査役としてユニクロを上場まで導いた著者が、「起業して成功する」ためのアイデア発想法から企業をとりまくヒト、モノ、カネ、そして株式上場まで、一連の知識を解説した教科書的一冊。

著者は公認会計士・税理士でユニクロ(ファースト・リテイリング社)の監査役として、その成長と上場に携わり、現在もアスクルなどの監査役を勤める株式上場準備コンサルタントの安本隆晴氏。

本書の特徴としては、会計士の方だけあって、PL(損益計算書)だけでなく、BS(貸借対照表)、キャッシュフロー(資金繰り)など会計系の話がわかりやすく書かれている点かと思います。特に日本の市場にフォーカスしています。

ほかにも、ユニクロ柳井社長との談話、起業アイデアの見つけ方やビジネスモデルを支える7つの構成要素、事業計画書の書き方など、具体的なアドバイスが描かれています。この書評では、その中から「上場を成功させるための4要件」について紹介していきます。スタートアップ時から上場を考える起業家などは意識しておいたほうがよい項目だと思います。

上場を成功させるための4要件

上場を絶対に成功させるために、安本氏がその経験から特に重視するのは、「上場基準を知ること」に加えて、以下の4要件であるといいます。そして、この4要件を満たせなければ、上場しないほうがいいとまで語っています。

1.経営トップの意識改革
2.利益体質の保証
3.成長を支える管理体制
4.自前の適切な資本政策の立案と実行

1.経営トップの意識改革

上場を目指すのであれば、まずは経営者の意識を変える必要がある、と著者は強調します。この意識改革には2つの意味があります。1つ目の意識改革は、社長と会社の関係です。

少なくとも「自分の会社=マイ・カンパニー」という考え方を捨て、全社員のための「アワ・カンパニー」という考え方に変えられるかが重要なカギになります。それも本気で、です。(中略)オーナー経営者にとってはかなりの決意と覚悟を迫るものです。

具体的には、個人財産と会社財産の分離、同族関係者(実力がない場合)の排除、無意味な関係会社の解散など、オーナー経営の旨みともいえる部分を捨てることでもあります。(もちろん株式による上場益などもありますが)。

次の意識改革は、会社の継続性に関するものです。

実際に聞かれることはありませんが、審査担当者が心の底で思っているのは、「もし急に、経営トップが死亡したり、病気で長期間いなくなったら会社はどうなるか?」という難題です。

これは会社のリスクの究極だと思いますが、組織的で継続的な事業経営を志向し、徐々に経営幹部や社員への「権限移譲」も行うべきであると書かれています。

2.利益体質の保証

2つ目は「会計」と「利益」にまつわりますが、「儲かる体質になること」「利益を図るモノサシが正しいこと」の2つが必須であると書かれています。

上場すれば、誰でもその会社の株を買えるようになります。しかし、儲からない会社には誰も投資してくれません。そこで上場を目指す会社は、利益体質であると同時に、その損益構造や経営数値にカラクリはない、つまり「粉飾決算していない」ということを保証する必要があります。

3.成長を支える管理体制

上場は単なる通過点に過ぎないと考えるべきです。そのためには成長を支える社内管理体制が「整備」され「運用」される必要があります。簡単にいうと「人」より「組織」で動けるか、ということです。

具体的には、継続的な事業経営とかぶりますが、要約すると「内部統制(計画的かつ効率的で、組織的な動きができること)」と「適時開示性(プラスニュースであれバッドニュースであれ社内重要事実をタイムリーに外部に発表できる体制になっているか)」が重要だとされています。

4.自前の適切な資本政策の立案と実行

そして、創業者利益やストップオプション、社員持ち株会への割り当てなど、資本政策にこそ、社長自らの人生哲学や経営哲学が反映されなくてはならないとしています。

「資本政策」とは、企業経営に必要な資本性の資金をいつ、どこから、どのような手段で、いくら調達するかについて、株主構成を考えながら計画することです。(中略)このことだけで本が書けるほど専門的な内容なので、いろんな立場の人からアドバイスを受けながら、ベンチャーキャピタルの提案を鵜呑みにせず、社長自らが真剣に考え、作り上げるべきです。

具体的なノウハウ的な内容は本書に譲りますが、一読して改めて感じるのは、会計・財務・ファイナンスなどの知識は経営層、マネジメント層には必須(起業するかは別として)の知識であるという点です。

本書に限らずよく目にする内容として、財務戦略・資本政策は経営のビジョンや意志を反映すべきもので、専門的である必要はなくとも銀行やVCに丸投げや言いなりになることの危険性は大きいと思います。

また、社長がいかにハードワーカーであるかという点にも改めて気づかされます。日本電産の永守社長(業績不振の会社を30社以上買収して立て直した)のエピソードが紹介されていましたので、引用してみます。

今から20年以上前に永守社長にお会いしたときに意「趣味はなんですか」とお聞きしたら、「帰宅してから風呂の湯船のなかでビニールで包んだ『会社四季報』を眺め、(買収目的)の赤字の会社を探すことです」と真面目におっしゃっていました。

起業のマインドから具体的ノウハウ、ユニクロ、リブセンスなど最近の事例まで、起業して上場したいという方は読んで損のない内容です。どのようなところでつまづきやすいか、など参考になると思います。

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