- 著者プロフィール
第1章 なぜ、私は『ザ・ゴール』の邦訳を許可しなかったのか
第2章 効率を正しく追求すれば、むしろリストラの必要はなくなる
第3章 繁栄し続ける企業には「調和」がある
第4章 適者生存
第5章 直伝 ゴールドラット博士の20の教え 岸良裕司
第6章 TOCとは何か
第7章 巨人の肩の上に立って
第8章 フォードに学び、フォードを超えた男
第9章 『ザ・ゴール』シリーズ翻訳者が厳選あなたの常識が覆る50の「至言」
ゴールドラット・コンサルティングCEO
書評レビュー
『ザ・ゴール』著者の遺稿集
本日紹介する一冊は、世界で1,000万部以上のベストセラーになった『ザ・ゴール』(生産管理における制約条件理論や、利益について提唱)の著者であり、2011年に亡くなられたエリヤフ・ゴールドラット博士の遺稿集です。
内容は、ゴールドラット博士のインタビューや講演、論文、著作を再構成したもので、立体的に『ザ・ゴール』の思想が浮かび上がってくるような構成となっています。サブタイトルが、「日本企業が捨ててしまった大事なもの」とあるように、製造業に限らず特に「経営」に対するメッセージが多く、特に「経営」を志す方にはお薦めできる一冊です。
また、博士から直接教えを受けた岸良祐司氏がその教えをまとめた、『ゴールドラット博士の20の教え』という章があり、こちらには「個人」の成長に触れた内容が多く収められています。今回は、そこからいくつか紹介していきます。
「順序」が肝心
ゴールドラット氏は、プロジェクト全体を考えるあたって、ものごとの論理的なつながりを重視していたのはもちろん、ものごとの順序も大事であると説いていました。
二階から人が落ちたら、ドスン、アーいたた。これが10階からだったら、アー!ドスン…。順序が肝心。これは、博士がセミナーで好んで使った喩えだ。
「ドスン」と「アー」の順序が違うだけで、その意味は決定的に違うものになってしまう。少々ブラックな喩えであるが、聞いた人々に強烈な印象を残した。(中略)博士は、多くの人が実行をあせるあまり十分な準備なしに、とりあえず物事を進めることを憂慮していた。「ゆっくりとじっくりと進めることで、むしろ結果が早く得られる
「天才」の頭脳の鍛え方
また、ゴールドラット博士のことをその著作や研究結果から、「天才」と呼ばれることが多かったそうです。しかし、本人はIQは人並みであり、「私は天才ではない」、そして、「訓練」で頭を鍛え続けた結果である、とつねづね強調していといいます。
博士は、私たちが他人から天才と呼ばれるようになる方法はあると語っていた。それは、因果関係で考える訓練を重ね、頭を鍛え続けることである。
ものごとの原因と結果のつながりを常に考えていく。それは論理的に考える訓練でもある。原因と結果をつなげる訓練をすればするほど、論理的に考える力は強くなってくる。すると、一見つながりのないようなものごとにも、因果関係を明らかにすることが可能になる。(中略)
「ボディビルダーだって、最初から隆々と盛り上がって筋肉がついていたわけではない。長年鍛えることによって、筋肉がついたのだ。同じように、頭だって鍛えることができる」と博士は主張していた。
頭脳の使い方を阻む4つの障害
博士は誰にでも十分な頭脳が備わっているが、その使い方を阻む障害が存在すると指摘していました、それが以下の4つの障害です。
・ものごとを複雑だと考える
・ひとのせいにする
・対立は仕方がないことと考える
・わかっているというこれら4つの障害を以下のような信念を持って考えることで、乗り越えることができると博士は主張した。
・ものごとを複雑だと考える→ものごとは、そもそもシンプルであると考える
・ひとのせいにする→人はもともと善良であると考える
・対立は仕方がないことと考える→対立は仕方がないことと考える→WIN-WINは常に可能であると考える
・わかっているという→わかっているとは決していわない
この書評では紹介できませんでしたが、本書ではほかにも、博士自身の手によるTOC(制約条件理論)の概説など、これから『ザ・ゴール』を読む方や復習にもお薦めできる内容です。もともとは物理学者で、経営コンサルタント、小説家、哲学者という著者の思想の奥深さに触れることができるはずです。
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