書評『スタートアップ・バイブル』
(アニス・ウッザマン/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
イントロダクション
1 チームの作り方
2 プロダクトの作り方
3 特許で守る利益
4 マーケティングの方法
5 勝つための資金調達戦略
6 ゴールとしてのエグジット戦略
7 まとめ
著者:アニス・ウッザマン Anis Uzzaman
 シリコンバレーを代表するベンチャー・キャピタル「Fenox Venture Capital」共同代表パートナー&CEO。東京工業大学工学部開発システム工学科卒業。オクラホマ州立大学工学部電気情報工学専攻にて修士、東京都立大学(現・首都大学東京)工学部情報通信学科にて博士を取得。IBMなどを経て、シリコンバレーにてフェノックス・ベンチャー・キャピタルを設立。主に初期投資とファイナルラウンドを専門とし、全世界のインターネット、ソフトウェア開発、リテイル関連をメインとした投資を行っている。これまでに30篇以上の学術論文を執筆、世界中で各種のセミナーなどで講師として招かれている。本書は日本人のために、日本語で書き下ろされた。

書評レビュー

シリコンバレー流のスタートアップ戦略を解説

本日紹介する一冊は、シリコンバレーのVC(ベンチャー・キャピタル)のCEOが、日本向けにベンチャー起業の始め方から成長戦略、そしてエグジット戦略までを網羅的に書き下ろした本です。著者は、シリコンバレーを中心にスタートアップに投資を行う「Fenox VC」のアニス・ウッザマン氏。

大学時代に東京工業大学へ留学したのち、シリコンバレーでベンチャー・キャピタルを創業しており、「お世話になった日本をもっと元気にしたい」との思いで出版に至ったとのことです。本書の特徴としては、プロダクト(リーン開発)、チームビルディング、集客、資本政策、特許戦略、出口戦略(エグジット)などが、時系列に網羅的に解説されてる点。

また、Facebook,evernoteなどの最新の事例も載っているため、一通り起業時に抑えておくべき知識が網羅されているという感想です。ベンチャー創業記などでも、売上や会員の拡大施策などはよく目にしますが、その際の組織構成などは、あまり類書では見られない情報だと思います。

この書評では、特に本書から「ドロップボックス(Dropbox)に学ぶ成長ステージごとのチームづくり」を紹介していきます。

ドロップボックス(Dropbox)の成長ステージごとの組織戦略

ドロップボックスとは、既に利用されている方も多いと思いますが、世界中に1億7,500万人のユーザーを持つ、オンラインストレージサービスです。著者は「チームメイキング」に一章を割き、スタートアップにとってチームこそ財産であることを強調しています。

「私たち投資家にとっても、創業間もないスタートアップに信頼を置く理由は『チーム』のみ」とまで言い切っており、チームや組織のパッションやモチベーションが高く保たれているかを重視しています。

一般的なスタートアップのステージとは下記の4ステップですが、ステージごとの人員構成や組織構成を紹介していきますので、事業拡大していくイメージが持ちやすいと思います。

1.シード(プロダクト準備段階)
2.アーリー(プロダクト開発終了、拡大段階)
3.アドバンス(ユーザー数を軌道に載せ、新市場やグローバルへの展開段階)
4.エグジット(IPOやバイアウトなどの段階)

【シード・ステージ(2007年)】
人員:2人
メンバー構成:CEO、CTO
プロダクト状況:サービスの正式ローンチ前のプレローンチ段階

創業者のドリュー・ヒューストンはファイル保存用のUSBを持ち歩くことの不便さから、ドロップボックスのアイデアを思いつきます。その後、Y-Combinator(アメリカの代表的なインキュベーター)に応募する際、共同創業者がいたほうが面接に有利だと考え、友人から紹介されたプログラマーと一緒に創業しています。

著者は創業者が複数人のスタートアップのほうが好ましいことをこのように述べています。

投資家にとっては、共同創業者がいるスタートアップのほうが、1人で始めたスタートアップよりも好ましいです。(中略)共同創業者がいる場合は、もし一人の創業者が会社を去っても、残りの創業者が会社の運営を引き続き行ってくれるからです。

Dropboxは、2007年9月に120万ドルの投資を受けるまでは正社員を雇わず、デザインなどは外注し、2人はコードに集中しています。従業員は2人でしたたが、Ycombinator(ワイ・コンビネーター)に所属していたことから、経験があるアドバイザーからアドバイスを受けられた点は大きな成功要因だったと語られています。

【アーリー・ステージ(2008~2009年)】
人員:9人
メンバー構成:CEO、CTO、サーバー・エンジニアリング責任者、クライアント・エンジニアリング責任者、ソフトウェア・エンジニアなど
プロダクト状況:サービスの正式ローンチ

ユーザー数が20万人に到達していたこの段階で、増加するユーザー数への対応を重視して、従業員を増やし、対応しています。そこで、ユーザーからのフィードバックを集め、そのフィードバックをもとに最低限必要な機能だけに絞り込む作業を始めました。

【アドバンス・ステージ(2010~2011年)】
人員:70人
メンバー構成:CEO、CTO、製品開発ディレクター、ビジネス開発担当、副社長など
プロダクト状況:多言語対応によるグローバル展開、新サービス「ドロップボックス・フォー・チームズ」開始

この段階で法人向けサービス(BtoB市場)への参入と、日本語、スペイン語、フランス語、ドイツ語版のドロップボックスをリリース、2011年にはユーザー数を5,000万人にまで拡大しています。新市場担当役員を置き、一気に組織を拡大します。

【現在(2012年)】
人員:177人
メンバー構成:CEO、CTO、エンジニア、デザイナー、テクニカル・ライター、リクルーター、営業、ビジネス・ディベロップメント、アカウント・マネージャーなど
プロダクト状況:オンライン・ストレージのパイオニアとして新機能の開発、新デバイスへの対応など

Dropboxは、2011年から2012年にかけて大幅に人員を拡大(トップクラスのエンジニア数人を含む)し、ワンルームサイズだったオフィスから、2,389坪のビルのフロアに移転しました。2012年12月には初のアメリカ外のオフィスをアイルランドに開くことを発表。

そこで、デザインの変更を行い、さらなるユーザー・エクスペリエンスの向上やディベロッパー用のプラットフォームの改善を続けています。そして現在では、デザイナーやリクルーターなど専門職も自前で抱え、IPO(株式公開上場)も間近とみられています。

いかがでしたでしょうか?ビジネスの拡大に伴い、適切な人材を獲得していくことがいかに重要かおわかりいただけたと思います。それぞれの段階で必要とされる人材やその要件が異なってきますので、詳細はぜひ本書を手に取ってみてください。例えばFacebookはCEOマーク・ザッカーバーグがハッカー気質のため、「経営」のオぺレーションはCOOのシェリル・サンドバーグと共同で意思決定しているそうです。

既に起業しているか、またはこれからビジネスを興す方にも世界のスタートアップの生きた事例と知識が学べる一冊としてお薦めです。

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