書評『20代の起業論』
(榊原 健太郎/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 不本意な就職とその教訓
第2章 ITベンチャーでの経験
第3章 サムライインキュベートの設立
第4章 起業の環境が変わった
第5章 日本版エコシステムができた
第6章 こんなアイデアなら投資をする
第7章 アイデアを本物のビジネスにする方法
第8章 僕はサムライに投資をしたい
サムライファンドの投資先一覧
著者:榊原健太郎(さかきばら・けんたろう)
1974年生まれ。名古屋市出身。株式会社アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)創業期において営業統括として、営業本部の立上げ、営業販促戦略、広告商品開発、アライアンス戦略に取り組む。その後、インピリック電通(現電通ワンダーマン)にて、大手情報通信・飲料メーカー・金融会社のダイレクトマーケティング戦略に従事。その後、株式会社アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)に復帰、営業統括として、西日本広告販売ブランチの立上げ、営業本部の再構築、モバイルサイトの立上げに従事。
2008年にシード・アーリーベンチャーの経営・マーケティング・営業・人事・財務・CI戦略支援に特化した株式会社サムライインキュベートを設立し代表を務める。スタートアップのベンチャーに投資するとともに、60社程のベンチャーの社外取締役を兼務している。

書評レビュー

スタートアップに必要十分な知識が一冊に

ベンチャー企業に資金を投資するVC(ベンチャーキャピタル)にも、創業段階に応じた専門分野があります。その中でも、最も初期のシードステージのスタートアップへの資金提供を、2008年から行ってきた日本でも数少ないファンドが、榊原健太郎氏率いる「サムライインキュベーション」です。

特徴はシード・アーリーステージならではのハンズオン支援で、これまでに60社以上の投資実績(うちノボット社が最近バイアウトに成功しました)があります。本書はそんな榊原氏が投資家の視点から、特にこれから起業を考える学生や若手起業家へ向けて、成功するアイデアと事業経営について語った一冊です。

本の前半は榊原氏の自伝的内容、後半が、アイデア、事業経営論です。アイデアの着想から、個人経営を脱して「事業」をつくる方法論が書かれています。事業運営ノウハウ(KPI、仕組み化、ビジョン・ミッションなど)この書評ではその中から、「起業アイデア発想のヒント」を4つ紹介していきます。

起業アイデアを発想する4つのヒント

どのようなアイデアであれば、投資家は投資したいと思えるのでしょうか?ここでは、本書で書かれている、「こんなアイデアなら投資したい」という内容から4つほどピックアップしてみました。

1.「サムライインキュベーションの投資をしたいアイデアリスト」から考える

榊原氏の頭の中に、すでに「投資をしたいアイデアリスト」があるとのことで、その中から選んでサービス提供できれば一番早い、ということになります。そのリストには実に100個のアイデア(解決したい課題)が書かれているのですが、5つほど紹介してみます。

・いじめを防止するサービス
・ネットの炎上を防ぐサービス
・介護者の負担を大きくするサービス
・コンビニ・ファミレスで、健康的な食事をリコメンドするサービス
・大手企業の弱い事業を抽出してくれるサービス

いかがでしょうか?ざっとリストを見ると、大きな社会的な「不」の解決(シニア、健康、教育、政治など)から、BtoBや日常の利便性までさまざまですが、やはり巨大な潜在マーケットがありそうなものが選ばれている印象でした。詳細はぜひ本書で確認してみてください。

2.「そのアイデアは5年後に通用するか?」から考える

2つ目は、未来(5年後)から逆算して考えるというやり方です。

僕がこうしたアイデアを考える際の基準はとてもシンプルです。一つは、「5年後にどうなっているか」です。政治、経済、社会、技術それぞれの5年後を考え、必要とされるサービスを考えます。

また、著者はこの5年後のイメージは、「なんとなく」ではなく起業家自身が「絶対こうなる」または「こうなるべきだ」とい断言できるものがよいという点を強調しています。

3.「漫画や映画」に描かれる未来から考える

3つ目は面白いやり方です。

僕は普段から、未来を描いた漫画や映画をよく見ています。少なくとも毎週一本は最新作は欠かさず見て、そこから未来予測のヒントを得ています。

例えば、「ドラえもん」ですが、実際に榊原氏は「ほんやくコンニャク」を実現したようなサービス(「Conyac(コニャック)」という格安クラウド翻訳サービスを見て、すぐに投資を決めたというエピソードが紹介されています。

4.「何をマッチングさせるか?」から考える

なかなかアイデアが思いつかない、という方は「何をマッチング(組み合わせ)させるサービスか?」からもアイデアを着想することができます。

インターネットサービスは、すべてマッチングのサービスです人と人、人と情報、人とモノなど、人になにかを出会わせることで価値を生み出しています。優れたサービスは、マッチングの組み合わせそのものに大きな価値があることが多いです。

例として「レアジョブ(スカイプを利用したオンライン英会話)サービス)」があげられています。英語の話せる高学歴のフィリピン人と、英語を学びたい日本人のマッチングです。

いかがでしたでしょうか?本書のサブタイトルに「成功するアイデアと、リーダーシップのつくり方」とあるように、アイデアの着想などについて、著者ならではの観点がいくつかありました。同時に、起業では(というかビジネスならなんでも)アイデアだけではほとんど価値がなく、どんな人がどのようにやるのか?のほうが重要だと再三述べられています。

つまりは「アイデア」よりも「人」への投資がインキュベーションの極意だ、ということですが、「人」を見極める「8つのサムライ魂」というものも掲載されていますので、興味がある方は手に取ってみてください。学生さんや起業を考えている若手ビジネスパーソン、日本のスタートアップ業界の動向を知りたい方などにお薦めです。

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