書評『起業はGO IT ALONE!』
(ブルース・ジャドソン/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
序 章 起業の「常識」は間違いだらけ
第1章 フリーランスでもフリーエージェントでもなく
第2章 GO-IT-ALONE起業で成功するための法則
第3章 起業家に味方する事業環境への一大転換
第4章 アイデアは自分の得意分野でこそ生きる
第5章 ビジネスシステムを創造する方法
第6章 起業家の英雄神話に惑わされるな
第7章 フリーランスやフランチャイジーにならない理由
第8章 極限までのアウトソーシングとその管理法
第9章 創意工夫に富む企業から得る教訓
第10章 企画した事業を評価する11のテスト
第11章 会社勤めをやめるタイミング
第12章 ベンチャーキャピタルが役に立たない理由
第13章 「必ず起こる過ち」から学ぶ
第14章 GO-IT ALONE起業とは、「突然ひとりになる」こと
終 章 「不安」は敵である
著者:ブルース・ジャドソン Bruce Judson
 イェール大学経営大学院専任研究員。アメリカを代表する、マーケティングと起業の専門家である。IT技術によってビジネス環境を変える研究の第一人者であり、複数の独立型ビジネスの創設者として成功を遂げている。イェール大学ロースクールで法務博士(J.D)、同大学経営大学院で経営学修士(MBA)を取得。2012年まで同大学起業研究所の客員起業家として活動した。著作の『Go It Alone!』、『It Could Happen Here:America on the Brink』(以上、HarperCollins)は、ともにベストセラーとなった。

書評レビュー

GO-IT-ALONE起業とは何か

本書は、一人ないし少人数で大きな収益をあげる「GO IT ALONE 起業家」に着目し、いわゆるマイクロ起業の実践的な解説書として書かれた一冊です。

 著者は、米国で新しいタイプの起業家集団が台頭してきていると説き、彼らを独立型起業家(go-it-alone entrepreneur)と呼んでいます。独立型起業家(go-it-alone entrepreneur)の特徴は次の3点だといいます。

1.最小限の投資で事業を始めている。創業者は会社を百パーセント所有し、経営を完全に掌握している。
2. 1~6人ほどの少人数で会社が運営されている。
3.創業者は小規模な事業を始めようとはしていない。事業収益を無限に拡大する前提で働いている。

つまり、「最少投資、最少人員で最大限の成功」を目指しているのですが、いわゆるスモールビジネスとの違いは、小さなマーケットを狙っているのではない、という点になります。それを可能にするのが、以下の2点だといいます。

1.経営者の能力を、得意分野に徹底的に集中させる
2.それ以外の業務を、徹底的にアウトソーシングする

そして本書では、リスクを最小限にしつつ、起業家自身の能力を最大限発揮するための、具体的なアウトソーシングや提携、考え方について説明されています。「重要ではない仕事」をアウトソースするのではなく、「自分の能力が最大限発揮できる仕事以外」をアウトソースするのだ、という指摘は本質的です。

事業アイデアを評価するテスト

本書の後半で、起業アイデアを現実的に評価する「企画した事業を評価する11のテスト(質問)」が解説されているのですが、この書評では、その中から4つほど紹介していきます。本書の趣旨がつかんでいただけるのではないかと思います。

1.エレベーターテスト

事業でどのようにお金を稼ぐつもりかを、エレベーターに一回乗っているくらいの時間で――つまり、ひと言、ふた言で――説明できるか?

これは有名な「エレベーターピッチ」の応用系ですが、お金を稼ぐ方法、つまりマネタイズ手法を明確にする必要性が語られています。なぜなら、起業家の経営能力のフォーカスが最重要であるため、事業案そのものが単純でわかりやすいものでなくてはならないからです。

あるベンチャー投資家も「ある人が自分の会社の計画を名刺の裏に要約できるとしたら、その人は事業目的を従業員、顧客、株主にも簡潔に説明できる」語ったことが紹介されています。

2.最大で三つの規則テスト

著者は再三、GO-IT-ALONE型起業の成功は、オーナーが自分の技能をもっとも重要な分野に集中投下できるかにかかっている、と述べています。次の3つの質問は、それが可能かどうかを確認するためのものです。

1.自分がこの分野で成功する成功するか否かを決める要因を一個ないし三個あげるとすれば、それはなにか?
2.この絞り込んだ分野で優れた成果を上げるのに欠かせない専門知識を持っているか?
3.持っていない場合はそれをあとから獲得できるか?

3.依存テスト

著者は、独立型起業家にとって、「ひとつのサプライヤーや顧客に依存しすぎること」が最も主要なリスクであると述べています。それを確認するのが、次の質問です。

自分の事業の依存度が特に高いと思われる会社があるか?その答えがイエスなら、この依存度を低下させたり、損害が生じる可能性を減らしたりするためにできることはあるか?

ひとつの目安として単一の顧客が売上高の35%を超えると危険水域とのことで、Google、Yahooなどのサーチエンジンへの過度の集客依存も注意が必要だといいます。

4.”ふたつ以上の芸ができるポニー”テスト

事業―あるいは、自分が利用しようとしている中核技能――に複数の方向に進めるような柔軟性があれば、成功の確率は高まる。しかし、もし自分が一芸しか持たないポニーのような事業を始めようとしていることがわかっているのなら、立ち止まって考えよう。

4つ目はこれまでのテストと少し毛色が違います。つまり、複数の方向性に進める事業のほうが良い、ということですが、成功したベンチャーの多くは、初期の事業をピポットしていることを見ても、正しい指摘ではないでしょうか。

本書は、アウトソーシングの活用や、外部資金を入れない理由が具体的に述べられている点が類書にない特徴です。また、知られざるGO-IT-ALONE起業家たちのへのインタビューは非常に実践的なものです。

マイクロビジネス、スモール起業を目指す方にはもちろん、個人が強くなる時代に企業はどうすべきかという観点で、組織論に興味がある方にも有意義な一冊だと思います。

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