書評『「世界」を変えろ!』
(デビッド・S・キダー/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
まえがき―リード・ホフマン(リンクトイン)
イントロダクション
インタビュー
ベスト・アドバイス
謝辞
著者:デビッド・S・キダー(David S. Kidder)
 連続起業家。ロチェスター工科大学卒。ソーシャルメディア、モバイル、デジタル広告などのウェブサービスに関して深い知識を持つ。企業のソーシャルイノベーションを支援するバイオニック社の共同創業者で、現在同社のCEO を務める。
バイオニック社の前には、SaaS 型オンライン広告ソフトを提供するクリッカブル社を共同で立ち上げ、CEO を務めた。(同社はシンカプス社に買収されている)。またクリッカブル社の前には、モバイル広告サービスの先駆けであるスマートレイ・ネットワーク社(ライフマインダー社が買収)、およびウェブベースのオーサリングツールを提供するネットX 社(ターゲット・ビジョン社が買収)を共同で立ち上げている。また自らの投資ファンドであるオルト・オプション・リターンを通じて、積極的なエンジェル活動も行っている。
さらにアキュメン・ファンド・ワン・パーセント・ファンドの設立メンバーであり、スミソニアン協会のメンバーとしても活動。2008 年にはID マガジン誌から国際デザイン賞を、およびアーンスト・アンド・ヤング社からアントレプレナー・オブ・ザ・イヤー賞をそれぞれ受賞している。5 冊シリーズとして出版された共著”The IntellectualDevotional” はニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーランキングに2 度ランクインした。現在はニューヨーク・マンハッタンで妻と3人の息子と共に生活している。

書評レビュー

成功起業家50人のアドバイス

本日紹介する一冊は、世界で注目されるスタートアップ41組の「成功の秘訣」に迫ったインタビュー集です。原題が「The Startup Playbook(Playbookは戦術書)」とあるように、起業と経営のエッセンスとアドバイスが濃縮されたカタログのようなもので、非常に骨太な一冊です。

本書は、自らも連続起業家である著者が、「成功するスタートアップをつくるためにもっとも重要な秘訣はなにか?」「会社の立ち上げから最初の5年間で、成長をもたらすカギ(KSF)となった行動や取組、アイデアは何か?」という2つの質問を軸に、経営者1人あたり数ページ前後で、以下の項目がまとめられています。

・起業家の紹介
・起業ストーリー
・プレイブック(戦術書=彼らが何を大切にして成長してきたか)
・アドバイス(事業運営、ビジョン・ミッション、製品開発、マーケティングリーダーシップ、取締役会、資金調達、採用・解雇…など)
・これからのビジョン

紹介される起業家は総勢50名近くにおよび、有名どころだと、クリス・アンダーソン(TEDトークス)、カテリーナ・フェイク(Flicker)、リード・ホフマン(Linked in)、イーロン・マスク(Paypal)、トニー・シェイ(ザッポス)など。

そして、日本ではあまりインタビューが読めない世界的スタートアップのEtsyエッツィー)、iRobot(ルンバ)、Jawbone(ライフログ製品)や、社会起業家も取り上げられています。この書評では、それらのアドバイスの中から、「リーダー・シップ」についてのベスト・アドバイスを紹介していきます。

リーダーシップについての6つのアドバイス

特にリーダーシップに関しても、スタンス的なものから、ロジカルなものまで、経営者ごとに特色があります。さまざまな状況や背景がある中、自分で取り入れやすいアドバイスが必ず見つかるはずです。

1.心が弱っているときに大きな決断をしない

大きなストレスを感じているとき、『もう終わりにしよう』とか『大きな賭けに出よう』などと言いたくなるかもしれません。しかし心が弱っているときや打ちひしがれているときは、短い時間で意思決定ができるような精神状態ではないのです。まずはその精神状態を乗り越えるようにする、というのが正しい戦略です。——クリス・アンダーソン(フューチャー・パブリッシング創業者)

2. 徹底的に透明性を保つ。ただし透明性の限界も理解する

社員がベストを尽くすのは、彼らを信頼して、適切な判断を下すのに必要な情報をすべて与えたときです。(中略)しかし同時に、人が扱いきれるものと、扱いきれないものに注意を払う必要があります。(会社の人々に危機を認識してもらいたくても、それに怖れをなしてもらいたくはないでしょう)。究極的には、透明にすべきでない部分も存在するのです——マット・プラムバーグ(リターンパス創業者)

3.方向性だけ定めて、他人に任せる

偉大なCEOは、朝起きて何もすることがありません。明確なビジョンを掲げ、そのビジョンへ進む優れたチームをつくり、彼らに柔軟な行動を許可しているからです。——スティーブ・ケース(AOL創業者)

4. 自分の不安が会社の中に蔓延してしまわないようにすること

チームや会社のリーダーは、常に不安に対処しなければなりません。不安があなたの外側にしみだして、組織に万円することを防がなければならないのです。——カテリーナ・フェイク(フリッカー、ハンチ、ファインダリー創業者)

5. 一貫性を保つよりも、正しいことを行う方が重要

オークランド・レイダースのオーナーであるアル・デイビスは、一貫性を保つよりも、正しいことをするように心がけていると語っているそうです。(中略)例えば目の前の状況を打破することができない、と認めるのは正しい行いです。もし一貫した態度をとることに固執していたら、状況に対応することは不可能になってしまうでしょう。——ベン・ホロヴィッツ(オプスウェア創業者)

6. 自分の決定の裏側にあるロジックを説明する

組織を拡大する際、カギとなるのは「どうやって決断を下したのか」を説明することです。ある結論にどのような理由からたどり着いたのか?チームがそれを理解すれば、彼ら自身が決断を下せるようになるでしょう。

そのレベルまでわかりやすく解説することは、行き過ぎで時にはリスキーであるかと感じられるかもしれませんが、それによって起きる問題よりも解決される問題のほうが多くなるものです。——ホサイン・ラーマン(ジョウボーン創業者)

いかがでしたでしょうか?最近はスタート・アップや起業関連本がよく出版されています。アベノミクス後の景況感も伴って、追い風が吹いているようで、日本のベンチャー市場にとってはいい傾向だと思います。

本書はテック系スタートアップのためのハウツー本ではなく、ジャンルを超えて成功している起業家の経験とアドバイスを共有しようとするものです。それゆえ、「経営」や「起業」に携わるすべての人にお薦めの一冊です。

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