書評『ともにしあわせになるしあわせ―フェリシモで生まれた暮らしと世の中を変える仕事』
(矢崎 和彦/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
1 「しあわせ」という言葉を社名にする企業
2 「しあわせ」を創造するフェリシモの仕事
3 「しあわせ」をめざす仕事のスタイル
4 「しあわせ」を生み出す経営
著者:矢崎和彦(やざき・かずひこ)
 株式会社フェリシモ 代表取締役社長。1955年大阪市生まれ。1984年学習院大学経済学部卒業。2005年神戸大学大学院経営学研究科修了。大学卒業と同時に株式会社ハイセンス(現・株式会社フェリシモ)入社。1987年代表取締役社長就任。経営理念「しあわせ社会学の確立と実践」と中核価値「ともにしあわせになるしあわせ」の下、「事業性×独創性×社会性」の同時実現をめざす経営を実践している。
 神戸商工会議所2号議員、神戸経済同友会代表幹事(2007年4月から2009年3月)、神戸市デザインアドバイザリーボード、神戸商工会議所デザイン都市推進委員会委員長、日本マーケティング学会理事、神戸大学大学院経営学研究所非常勤講師などを歴任。2010年に毎日経済人賞を受賞。

書評レビュー

FELISSIMO(フェリシモ)という会社をご存じでしょうか?女性に人気のカタログ通販ブランドなのですが、特徴的なのは、「コレクション」という、シリーズ商品を選ぶと、そのどれかが定期的に送られてくる(色・デザインなどどれが来るかはわからない)というシステムにあります。(1回毎の販売もあります)

ECの業界で昨年あたりから話題になっていた「サブスクリプション・コマース」と同様ですが、このシステムを創業以来続けています。そして企業としても、東証一部上場、売上高約500億円という成果をあげながら、社会貢献活動でも多くの実績をあげています。

本書はそんなフェリシモの経営者である、矢崎和彦氏が、フェリシモの事業やブランド、商品づくりの考え方、そして働き方について語った一冊です。『500色の色鉛筆』など、独創的なアイデアによる商品のストーリーも面白かったのですが、この書評では著者が経営や事業の存在意義について論じているところを紹介していきます。

フェリシモが考える、会社の存在意義

近年、社会起業という言葉がもてはやされ、少しバズワードとなっている感じもありますが、同社の企業の存在意義に対する考え方は、やはり歴史がある(1965年創業)考えさせられるものだと思います。著者は企業の存在目的、そして「経営」について、以下のように定義しています。

「経営とは滔々(とうとう)と流れる歴史的時間軸と社会的空間軸の間に身を置きながら、より良い未来を想像するための持続的かつ連体的な営みである。

企業の存在理由は存続自体や競争対応にあるのではなく、自らの働きによってあるべき未来の創出を行うことにある。だからこそ、企業は志を持つべきである。自らの社会的歴史的存在理由を問い続けるべきである」

近江商人の「三方よし」ではないですが、あるべき未来を創出するために、個人でなく組織の力で立ち向かうという、企業論、組織論は納得感のあるものではないでしょうか?では具体的に、フェリシモではどのように事業を推進していっているのか、その基本となる考え方も紹介されています。

フェリシモの目指すビジネス

フェリシモでは「しあわせ」をビジョンとして、事業ドメインをどこにおくか、下記の3点が交わるところを目指しているとのことです。

・フェリシモの目指すべきビジネス=事業性 × 独創性 × 社会性

上記の考え方をあらゆる事業について考え、三つの輪が交わるところをめざし、その面積を大きくしていく、ということが経営であると説明されています。

事業性と社会性については、事業を存続するための利益を創出し、社会に害悪をまきちらさずプラスに貢献することを目指すのは当然です。そこに「独創性」も加えているところがユニークな点だと思います。

また、実際にその独創性がフェリシモのオリジナリティある商品づくりに活かされて事業上の差別化ができ、ユーザーに支持されているのではないでしょうか。独創性については以下のように述べられています。

仕事をする以上、誰でも自らの創意工夫を働かせながら取り組んでいきたいものだと思います。仕事が楽しいのは、今までにないものを創りだすことで、誰もやったことのない、道のことにチャレンジすること、そんなワクワクするような仕事をするときではないでしょうか。

そしてそうしたワクワク感が、仕事のエネルギーにもなるし、ビジネスの差別化にもなるのです。

社会貢献活動について

また、フェリシモの考えるCSRやメセナ活動などの社会貢献についても触れられています。矢崎社長は、企業は本業の中で社会に貢献することを強調しています。その背景は、社会貢献活動の「持続性」にあります。

たとえば、本業と別の分野で行われている(事業活動と社会貢献活動を分けて考える)貢献活動について、このように疑問を投げかけています。

たとえば、売上が下がり、利益が上がっている間はいいですが、それがひとたび止まると、社会貢献活動も止まってしまう。つまり、社会性について持続性を持つことができないということになるのです。(中略)重要なことは、社会をよりよくしようという営みは本来、持続し、継続させるものなのではないか、ということです。

となれば、社会性を持続できる構造の中でやっていかなければいけない。そうしてこそ、一時的なブームに終わらない、社内外の人々の理解や納得、さらには評価も得られる取組みになるのではないかと思うのです。

経営や社会的起業を目指す方はもちろんですが、商品開発アイデアや、文中でも触れられているデザイン戦略(デザインをより事業ビジョンと重ねてゆく)などに興味がある方にもお薦めの一冊です。

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