書評『GILT(ギルト)』
(アレクシス・メイバンク/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
キャリアと友情―スタートアップまでの道
アイデアを練り上げる―ギルト・グループが形になるまで
ビジネスパートナーを選ぶ―相性のよさをどこで見極めるか
タイミングを計る―ビジネスを始めるには旬の時期がある
ネットワークをつくる―立ち上げに向けて準備する
eコマースの売場を改装する―ビジュアルによるブランディングの試み
資金調達はアートだ!―スタートアップにふさわしいベンチャーキャピタルを見つける
バイラル・マーケティングで顧客獲得―コストをかけない画期的手法
草の根作戦―インサイダー・マーケティングと高級感の維持
優秀な人材を集める―私たちはどのように有能なチームをつくり上げたか
危機をバネにする―在庫不足の問題とリーマン・ショックを克服する
私たちらしいリーダーシップのスタイル―ギルト・グループの拡大後も自分流を貫く
超成長の反動をどう乗り切るか?疲労困憊、そしてギルト・ジャパンを立ち上げる
これからのギルト・グループこれからのファッションeコマース
著者:アレクシス・メイバンク、アレクサンドラ・ウィルキス・ウィルソン

ギルト・グループ創業者。二人ともハーバード大学卒業、ハーバード・ビジネス・スクール
でMBA(経営学修士号)取得。メイバンクはイーベイ・カナダとイーベイ・モーターズの
立ち上げに参画。ウィルソンはメリルリンチ、ルイ・ヴィトン、ブルガリに勤務。その後、
ケビン・ライアン、マイク・ブライゼックとフォン・グエンとともにギルト・グループを
創業、現在に至る。二人とも既婚。夫と子供たちとともにニューヨーク、マンハッタン在住。

書評レビュー

急成長ECベンチャー『GILT』とは?

 本書は、オープン3年半で売上高約1,000億円、ユーザー数500万人を抱える企業にまで成長したECベンチャー『GILT(ギルト)』の2人の女性創業者による起業ストーリーです。 『GILT(ギルト)』のサービスを一言でいうと、Groupon(グルーポン)などの共同購入サービスの一種で、「招待客限定のオンラインセールで、デザイナーズブランドの商品が最大60%引きで買える」というものです。

 これだけ聞くと、かなり競合が多そう(大手ECサイトなど)なサービスですが、ではなぜ、GILTグループだけが躍進したのでしょうか?その要因は2つあります。1つには、バイラル・マーケティング(いわゆる口コミマーケティング)の成功が大きいといわれています。GILTは全米各地のブロガーをうまく活用し、サービス認知と会員化に成功しました。

 もう一つは、資金調達能力です。数年前にあった米国グルーポンとポンパレ(リクルート社)のCM合戦でも見られたように、成長市場はすぐに過当競争化し、資金力勝負の様相を呈することがあります。その際に成否をわけるのが資金調達となるのですが、こちらもGILTは他社よりぬきんでていました。

 たとえば、ギルトはオープンから数週間後に、ベンチャーキャピタルである、マトリックス・パートナーズから500万ドル(約5億円)の資金調達に成功しています。では、どうやってそのような早い段階で資金調達ができたのか?本書の内容を紹介していきます。

GILTの資金調達に対する考え方

 著者は「どうやって資金調達に成功できたのか」、と良く聞かれるらしく、これに対してこのように述べています。

 「その質問にこんなふうに答えられたらいいのに、と私たちはいつも思う。「出資者を探すのには最良のタイミングがあるんですよ」または「投資家があなたのアイデアに必ず出資してくれる魔法の呪文があります」といった答えだ。

 残念ながら私たちにはそうは答えられない。代わりに「資金調達は一定の法則がある科学ではなく、一種のアートですよ』と答えることにしている。」

 その具体的なアドバイスとして、5つのチェックリストが挙げられていますので、以下紹介していきます。ベンチャー・キャピタルからの資金調達の際に成功するプレゼン5のコツということですが、事業計画を練る際にも役立つはずです。

ベンチャーキャピタルで成功するプレゼン5つのチェックリスト

1.5秒でまとめる(30秒では長すぎる)

 コンセプトは5秒でまとめる。30秒もかかるようでは失格だ。簡潔で、記憶に残り、祖父母にもわかるような言葉で説明すること。ギルトのコンセプトはシンプルだ。「招待客限定のオンラインのサンプルセールで、デザイナーズブランドの商品が最大60%引きで変える」

2.チームとその経歴の情報を提供する

 ベンチャーキャピタルが投資するのは、突き詰めれば「人」だ。プレゼンで私たちは、メンバー一人ひとりの経歴について詳しく紹介した。(中略)私たちのチームが支援するに足る人材をそろえていることを十分に説明することが、投資家たちの出資意欲をかきたてると思った。

3.成長の可能性を具体的に話す

 狙っている市場規模はどれほどか?そこにあなたがどれだけ食い込めるのか?私たちのケースに当てはめれば、オンラインでデザイナーズブランドの商品を購入する顧客はどれくらい見込めるか?(中略)また、事業拡大に合わせて需要にこたえられるだけ在庫を確保しておく必要がある、と説明した。

4.ビジネス環境について説明する

 投資家はたぶん次のような質問をするはずだ。「参入する競合はどの程度脅威になるか?」「現在市場にある、たとえばデパートのような競合は成長の妨げとなるか?」「ビジネス拡大の障害となるような法令や規制があるか?」また、「市場化を急ぐことで、(必ず現れる競合相手をはっきり上回れるだろうか?」

 現在の競合やほかのeコマースの会社が私たちの手法の真似をしないという保証はどこにもないが(実際、多くの競合とeコマースが真似た)、少なくとも先行することは私たちに有利だ。

5.最後に、取り決めの条件を出す

 投資家にとってあなたの事業はどんなうまみがあるのか?どのベンチャーキャピタルも、あなたが望む金額を正確に知りたがる。(中略)私たちは目標額を500万ドルと設定した。その資金で人材を強化し、物流インフラの拡大を図り、より広いオフィスに移転し、事業規模をもう一段拡大する。

 私たちにとって500万ドルは事業を大きく変える金額だ。その資金投下の効果は著しく、少なくとも次の重要なステップに薦めることは間違いないし、不測の事態が起きた時でも十分に対処できる余裕を与えてくれる、と投資家たちを説得した。

 いかがでしょうか?目新しい指摘はないかもしれませんが、非常にうまく要点がまとまっています。特に1つ目の、サービスを5秒で語れるようにする、というのはどの業界であっても通用する即効性の高い考え方です。

 また、著者も述べているように、ビジネスはアイデア自体ではなく、「その実行力、スピード、タイミング」にこそ価値があるのだと語っています。そして、その実行をするのはもちろん人です。そのような意味からも(2)のチームについて語る、というのが2番目に来ているのもうなづけるのではないでしょうか。

 本書は創業チームの起業ストーリーとしても純粋に楽しめる本ですが、ビジネス上の示唆も多い(特に集客、マーケティング観点で)良書です。特に女性の起業という観点からの対処方法(私生活とのバランスなど)、なども赤裸々に描かれていますので、「起業」を志す方にはお薦めできる一冊です。

新刊ビジネス書を「要約」でチェックできるプレミアム版も人気です

book-smartとは