書評『無印良品は、仕組みが9割』
(松井 忠三/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
序章 なぜ無印良品には2,000ページのマニュアルがあるのか
1章 売上とモチベーションが「V字回復する」仕組み
2章 決まったことを、決まったとおり、キチンとやる
3章 会社を強くするための「シンプルで、簡単なこと」
4章 この仕組みで「生産性を3倍にできる」
5章 自分の仕事を「仕組み化する力」をつくろう
著者:松井 忠三
 1949年、静岡県生まれ。株式会社良品計画会長。73年、東京教育大学(現・筑波大学)体育学部卒業後、西友ストアー(現・西友)入社。92年良品計画へ。総務人事部長、無印良品事業部長を経て、2001年社長に就任。赤字状態の組織を“風土”から改革し、業績のV字回復・右肩上がりの成長に向け尽力。07年には過去最高売上高(当時)となる1620億円を達成した。08年より現職に就き、組織の「仕組みづくり」を継続している

書評レビュー
 本書は、絶好調の売上高を誇る無印良品(株式会社良品計画)の会長・松井忠三氏が、躍進のきっかけとなった「仕組み化」を解き明かした一冊。

 今や一大ブランドとなった無印良品ですが、実は創業して10年ほど経て初期のブームが落ち着き、38億円の赤字を出すような悲惨な経営状況に追い込まれていた時期がありました。そこからのV字回復をもたらしたものが、MUJIGRAM(ムジグラム)というマニュアルだったのです。

業績V字回復をもたらした、無印良品の「マニュアル」

 本書の内容は、約2,000ページ(!)というそのMUJIGRAMの解説だけでなく、マニュアルの基となる「仕組み化」の考え方から、運用、改善にまで触れられています。

 そもそも無印良品が仕組化を取り入れた背景には、競合であるイトーヨーカ堂などと比べて、店舗の「実行力」が劣っていると松井氏が感じたことがきっかけだったそうです。それゆえオぺレーションを科学的にすることで、仕事を標準化することにしたのです。

 著者は、マニュアルをつくる際には、マニュアルによって社員の仕事レベルを均一化したい(育成)のか、コストを削減したいのか、作業時間を短縮(効率化)したいのか・・・といった「目的」をはっきりとさせておくことが最も重要であると説いています。

マニュアル化の5つの効果

 そして実際にマニュアル(MUJIGRAM)を作成・運用してきた経験から、マニュアルには下記の5つの効果があると著者は述べています。

1.「知恵」を共有する
 本部だけでなく、現場(店舗)でのベストな知恵をまとめているので、個人の経験値を組織に蓄積することができる。

2.「標準なくして、改善なし」
 マニュアルづくりとは、仕事の標準化である。まず標準をつくらないうちに改善しようとしても、迷走するだけ。

3.「上司の背中だけを見て育つ」文化との決別
 変化の速い現代においては、上司と部下の一子相伝的なじっくり育てる時間がとれない。マニュアルという目に見える形にすることで、効率的な指導も可能になる。

4.チーム員の顔の向きをそろえる
 それぞれの業務の「目的」を明記することで、組織の理念を繰り返し伝えることもできる。理念を伝え続けると、チームの志がひとつになる(顔の向きがそろう)

5.「仕事の本質」を見直せる
 マニュアルをつくる段階で、ひとつひとつの作業を見直すことができる。自分の仕事を改めて考えるうちに、「どのように働くか」「何のために働くか」という本質に近づくことができる。また、作業の意味を深く考え直すことは、組織体質を根本的にかえるきっかけともなる。

 いかがでしょうか、2番目の「標準化なしに改善なし」というのは、目からウロコであり、本質的な指摘だと感じました。つまり、マニュアル化してようやく「改善」のスタートラインに立てるということです。

 マニュアルづくり、というと作成する側も、実行する側も、モチベーションがあげづらいと感じることがあると思いますが(個人的な経験からもそう思います)、「改善」を目的に据えることでまた違った見方ができるのではないでしょうか。

本書の内容は効率化の追求ですが、その根本には、松井会長の人間に対する本質的な観察眼や人間愛があると思いました。たとえば下記のような内容です。

「私は無印良品の集会などで、本書でお話してきたことを、社員に向けても繰り返し伝えています。ところが、1ヶ月くらいしてから尋ねると、98%ぐらいの人が覚えていません。(中略)それでも問題から目をそらさずに考え続け、行動している限り、必ず自分も進化していきます。いいマニュアルは、そうやって走り続けるための原動力となるのです」

このように、マニュアルや仕組化を通じて、経営やマネジメントの要諦も学ぶことができます。店舗型の事業を行っている方だけでなく、オフィスワークが多い方にも使える一冊だと思います、ぜひご一読ください。

新刊ビジネス書を「要約」でチェックできるプレミアム版も人気です

book-smartとは