書評『世の中を良くして自分も幸福になれる「寄付」のすすめ』
(近藤由美/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 寄付が日本と世界を変える―欧米に負けない伝統を見直す
第2章 寄付を実践する人たち―何を志しどのように楽しんでいるか
第3章 寄付の受け皿「非営利団体」を知る―どのような組織なのか
第4章 NPO法人が社会を変える仕組み―どのようにかかわればいいか
第5章 新寄付税制のメリットを活用する―寄付で自分も得する
第6章 寄付はお金だけとは限らない―物品や時間、知識、スキルの提供
第7章 最近の寄付事情―営利・非営利の垣根を越えて社会・世界とつながる
第8章 後悔しない寄付先選び―情報収集から見極め方まで
著者:近藤 由美
 ノンフィクション・ライター。1967年宮城県生まれ。明治大学文学部史学地理学科(考古学専攻)を卒業後、数社の出版社で編集者として勤務。1999年マネー誌『ダイヤモンドZAi』(ダイヤモンド社)の創刊メンバーとして参画後、フリーランスのライター、エディターとして独立。マネー関連の企画、編集、執筆のほか、金融機関や企業のウェブコンテンツなども手掛ける。また、文化人類学や考古学、心理・哲学の視点から、お金の未来、役割について考察している。

書評レビュー

古くて新しい「寄付」の魅力

本書は、自分のお金、物品、時間、スキルなどを他人のために使う=「寄付」の魅力に迫る一冊。「寄付」という行為の寄付先から様々な手法、寄付税制などまで解説し、その魅力に迫るという非常に興味深い一冊です。

最近では「与える人こそ与えられる」という趣旨の本をよく目にしますが、本書はその実践的な指南書となっています。日本でも東日本大震災を境に、ボランティアや物品の寄付が身近になってきましたが、それでも実は日本人一人当たり寄付額は約1.5万円、アメリカでは約22万円と10倍以上の開きがあります。

個人の年間寄付総額は日本約5,000億円、アメリカでは約22.9兆円とのことです。これはチャリティなどの文化が根付いているかいないかが大きな差になって表れているといえます。では、日本には「寄付」という文化は根付かないのでしょうか。

著者はそのような見方に異を唱え、歴史的に「お布施」や「寄進」「浄財」など実質的に「寄付」をあらわす単語が多く、『日本には寄付文化がないのではなく、寄付の成功体験と習慣がないにすぎない』という意見を紹介しています。

例えば江戸時代、大阪は水の都として知られ、町には200本もの橋がかけられていましたが、そのうち、政府(幕府または藩)によって作られた橋は12本しかないそうです。残りの橋は大阪の商人や町人が自らの資金や資材を寄付してつくった「町橋」だったのです。

ほかにも日本各地に残る地域コミュニティ主体のインフラ整備の記録が紹介され、著者は日本は海外から遅れているのでは、と思うのではなく、相互扶助の伝統を土台に他国の事例を取り入れることを提唱しています。

寄付のさまざまな形

また本書では、寄付の実践手法だけでなく、実際に寄付を行うことで充実感のある人生を送る方のドキュメンタリーも収められています。本書では7人の実例が紹介されています。

例えば、IT企業で働く沖さんという方が紹介されていますが『寄付は未来への投資』という考えから「直販型ファンド」と呼ばれる投資信託に毎月積み立て投資をしているそうです。これについて著者は次のように現在のトレンドを紹介しています。

「直販型ファンドは、世の中を本当に良くする企業を長期的、持続的な投資によって応援する”という、投資本来の目的を堅持している点で、他の投資信託と一線を画しています。(中略)

直販型ファンドの投資方針、理念は多くの人たちの共感を集め、直販型ファンド主要八社が顧客から預かっているお金の時価の『純資産額』を合計すると、4,220億円を超えるまでになっています』

ほかにも、寄付といえばまず「お金」の寄付が思い浮かぶと思いますが、「お金」以外の寄付事例(物品、時間、労働力、人生経験やスキル)についても多数収められています。

まとめと感想

本書ではまた、一般的には難解な「NPO法人」の仕組みやその運営についても平易に解説されており、また東日本震災後に起こったソーシャルメディアなどを活用した新たな「寄付」市場での動きも解説されています。

本書では寄付がもたらすの大きな可能性と、身近なところからはじめる手法が学べる好著です。「社会起業」が注目を浴びていますが、自ら社会起業をたちあげるまでいかずとも、社会起業家を応援するという行為を通じて、社会に貢献することができます。

寄付先であるNPOなどの様々な事例から、ある物を不要としている人と必要としている人をマッチングさせるというビジネスアイデアが詰まった一冊としても参考になると思います。ぜひ手に取ってみてください。

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