書評『2014年の「中国」を予測する』
(宮崎正弘、石平/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 習近平路線VS李克強路線の矛盾が深刻化!
第2章 リコノミクスの本末転倒
第3章 中国金融界は伏魔殿
第4章 中国から離れるアジア
第5章 国際プロパガンダ戦争で負けている日本
第6章 「絶望の大国」とどう付き合うか
著者:宮崎正弘
評論家。1946年、石川県金沢市生まれ。早稲田大学中退。『日本学生新聞』編集長。月刊『浪漫』企画室長などを経て貿易会社を経営。1983年、『もう一つの資源戦争』(講談社)で論壇へ。

著者:石 平
評論家。1962年、中国四川省成都生まれ。北京大学哲学部卒業。四川大学哲学部講師を経て、1988年来日、1995年、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関に勤務ののち、評論活動へ。現在、中国、日中関係問題を中心に活発な執筆、講演活動を展開する。2007年末、日本に帰化する。

書評レビュー

中国の失速

本書は、近年急激な経済成長を遂げた「中国」の2014年以降の展望について、経済、政治、外交などの観点から、警鐘を鳴らした一冊です。著者は、中国事情に通じ中国の政治(共産党)、外交政策、経済事情などについて多数の本を執筆し、新聞への寄稿やTV出演も精力的に行っている「宮崎正弘」氏と「石平」氏です。

中国と言えば、皆さんご存知の通り、共産党による一党支配のもと、国を挙げての経済政策により急激な経済成長を遂げ、ヒト、モノ、カネの観点から世界で大きな存在感を放っている、GDP世界第2位の経済大国です。

この著しい経済成長と軍事力の規模から、世界はアメリカと中国を中心に回っていくと、様々なメディアでも取り上げてきました。

しかし、ここにきて、その楽観的な展望について警鐘を鳴らす声が出てきました。例えば、香港の雑誌「フロンティア」では、このようなショッキングな内容が紹介されています。

『2014年に中国が崩壊し、2015年に共産党の秩序が破壊され、2016年に社会全体が昏睡状態に陥る。』

その理由は、不動産バブルの瓦解、シャドー・バンキングの多額の不良債権、そしてそれに伴う地方政府の債務不履行の発生によるものだとされていますが、このような中国の行く末に疑問を投げかける報道は、日本ではあまりされていない状況にあります。

そこで、本書では、中国の事情に精通している著者らによって、中国経済のバブル崩壊、共産党の一党支配の限界、そしてアジアにおける中国外交の失敗といった、経済、政治、外交などの観点から、今後の中国の展望が語られています。

中国大陸から逃げ出す人とカネ

著者によると、実は、中国の政府高官や政財界の要人たちの間では、中国経済の行く末について悲観的な展望を抱く者が多く、家族や財産を海外に「避難」させているようです。

これを裏付けるように、アメリカの「TIME」誌では、なんと6,000億ドル、日本円にして約60兆円が中国から「消えた」と報道されているそうです。

『社会科学院が認めている数字だけでも18,000人が逃げた。これは幹部たちですね。持ち出したカネは8,000億人民元。(中略)アメリカの「TIME」が2013年6月17日付で書いたのはそんなものじゃなくて、6,000億ドル、日本円に直して、60兆円が逃げ出しているとされている。』

中国のGDPを680兆円とすると、なんとGDPの10%近いお金が国外に「消えて」しまったことになります。

最近の試算では、なんとこの「消えた」お金が、1兆米ドルにまで膨れ上がっているようですから、これらの情報が事実だとすると、中国経済の行く末について、中国国内でも懐疑的な目が向けられていることに他ならないと言えるのではないでしょうか。

まとめと感想

他にも、本書では、中国のASEANにおける外交政策の失敗や共産党崩壊の兆候などを通じて、2014年以降の中国失速の危険性が論じられていますが、どれも歯に衣着せぬ論調で、鋭く切り込んだ内容になっています。

『リー・クアンユー、世界を語る』で紹介されているように、今後も中国の存在感はまずます大きくなっていくという意見もあります。

一概にどちらの意見・論拠が正しいと言うことはできませんが、経済や外交において様々な利害関係があり、日中の動向は日本企業、ひいては我々ビジネスパーソンにも大きな影響を与えますので、中国の展望の一つの側面として参考になる一冊です。

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