書評『これから日本と世界経済に起こる7つの大激変』
(渡邉 哲也/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 2014年から大転換した世界の経済構造
第2章 いま世界で起きている危機の現実
第3章 日本経済の復活を阻む者たちの正体
第4章 世界に見捨てられる中国と韓国
第5章 世界と日本のマネーは今後どこへ向かうのか
第6章 だから次に日本はこう変わる
著者:渡邉哲也
作家・経済評論家。1969年生まれ。日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務した後、独立。複数の企業運営などに携わる。大手掲示板での欧米経済、韓国経済などの評論が話題となり、2009年、『本当にヤバイ!欧州経済』(彩図社)を出版、欧州危機を警告し大反響を呼んだ。また、2013年には、アベノミクスによる日本経済の変化をいち早く予測した『これからすごいことになる日本経済』(徳間書店)がベストセラーとなった。内外の経済・政治情勢のリサーチや分析に定評があり、さまざまな政策立案の支援から、雑誌の企画・監修まで幅広く活動を行っている

書評レビュー

日本や世界のマネーはこれからどこに向かうのか、また、アメリカ、ヨーロッパ、中国が内包する経済問題とはなにか…、本書は、最新のトピックスを通じて、今後日本と世界経済に起こるであろう7つの大きな地殻変動を予測した一冊です。

著者の渡邉哲也氏は、『本当はヤバイ!欧州経済』や、『これからすごいことになる日本経済』など、経済予測(分析)に関する著書を多数執筆し、自身のブログで昨今の経済情勢をいち早く紹介している人物。

本書では、あまりメディアでは報じられていない世界経済の実体や「レントシーカー狩り」のような旬のトピックスを通じて、「リーマンショックから本当に世界経済は立ち直ったのか?」、「米中の求心力は低下しているのか?」など、まさしく「日本と世界経済のこれから」が解説されています。

グローバリズムの終焉とブロック経済化への移行

サブプライムローンに端を発したリーマンショック以前は、様々なメディアや学者により、「新自由主義」、「市場原理主義」を前提とした、いわゆる「グローバリズム」が声高に叫ばれていました。この考え方は、「金融主導の経済」と言えます。

しかし、世界経済に大きな打撃を与えたリーマンショックは、この「金融主導の経済」、つまり、「行き過ぎた自由」から発生したものだったことに対する軌道修正から、現在は、「実体経済を中心とした経済」に変わろうとしています。

これを著者は、「グローバリズムからブロック経済へ」と述べています。

『このように、アメリカ、ヨーロッパといった世界の2つの極が、そろって計画経済へと歩みを進めている。これまで新自由主義が成立してきたのは、民間主導の経済であるというところに大前提があったわけだが、これが失われつつあるということである』

言い換えると、「民間が主導する経済から、国家が主導する経済政策へ」ということです。これを端的に表しているのが、アメリカの銀行の自己取引を禁じる「ボルカー・ルール」であり、ヨーロッパの銀行に対する「不良債権のストレステスト」なのです。

「レントシーカー狩り」の始まり

「レントシーカー」という言葉をご存知でしょうか?

これは「規制緩和」を標榜し、「政治を動かすことで国の規制を撤廃させ、自分たちの利益にとって都合のいい社会を作り出そうとしてきたグローバリスト」を指します。「レントシーキング」という言葉も同様です。

ケイマン諸島などの「タックスヘイブン(租税回避地)」がイメージしやすいと思いますが、いわゆる「二重課税」を防止する国際課税制度では、タックスヘイブンを利用した税制優遇地域で税金を納めさえすればよい、ということになります。

これがいま「国家が主導する経済政策」のもと大きく変わろうとしています。

『グローバル企業をよく見てみると、税金を払わずその国のインフラにタダ乗りしていることが多いのだ。サブプライム・ショック以降、先進国が税収の落ち込みに苦しんでいるなか、彼らのような税金の逃れをしている存在を見過ごすわけにはいかなくなっている。』

2013年5月に行われた「OECD閣僚理事会」では、世界各国が連携して「税源浸食と利益移転」と戦う宣言が採択されるなど、もはや「レントシーカー」のような、自社利益のみの追求は制限されつつあるのです。

ちなみにこの「レントシーカー」としてやり玉に挙げられているグローバル企業の中には、Google、アップル、Amazonやスターバックスなど世界的に有名な企業も含まれています。

まとめと感想

本書では、ほかにもユーロで孤立を深めるドイツ、ドルの弱体化や新興国から引き上げられる投資など、世界経済の最旬トピックスが数多く紹介されています。

その上で、これらが、日本と世界のマネーの動向にどう影響を与えていくのかが解説されており、また、欧米、日中韓、そして新興国と一冊で幅広くカバーしているのも本書の特徴ではないでしょうか。

読みやすく分かりやすいのですが、世界経済の入門書と比しても内容が濃く、メディアであまり大きく報じられない内容も詳しく紹介されていますので、ビジネスパーソンの皆さんにお薦めの一冊と言えそうです。

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