書評『リー・クアンユー、世界を語る』
(グラハム・アリソンほか/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 中国の未来
第2章 アメリカの未来
第3章 米中関係の未来
第4章 インドの未来
第5章 イスラム原理主義の未来
第6章 国家の経済成長の未来
第7章 地政学とグローバル化の未来
第8章 民主主義の未来
第9章 リー・クアンユーの考え方
第10章 むすび
著者:グラハム・アリソン
ハーバード大学公共政策大学院(ケネディスクール)ベルファー科学・国際関係研究所所長・教授

著者:ロバート・D・ブラックウィル
外交問題評議会(CFR)ヘンリー・A・キッシンジャー外交政策上級研究員

著者:アリ・ウィン
ベルファー科学・国際関係研究所研究員

書評レビュー

シンガポール建国の父が語る世界の未来

本書は「シンガポール建国の父」と呼ばれ、今なおオバマ米大統領をはじめ各国の著名人から支持を集める元首相「リー・クアンユー」が、世界的政治トピックスを中心に、その未来展望を語った一冊です。

リー・クアンユーと言えば、シンガポール初代首相に就任し、イギリスの植民地支配の終了、マレーシアからの独立、その後の経済振興策など、様々な政治問題を乗り越えてきた世界的政治家の一人です。その功績が世界中の政治家から経営者などから称えられているのです。

本書はそんなリー・クアンユーが、米中関係を中心に、世界的政治トピックスに関する未来展望をQ&A形式で紹介しています。この書評では、特に「米中関係の未来」からいくつかQ&Aを引用して内容を紹介します。

米中間の対立について

質問:『米中間に大きな対立は起こるか?』

回答:『今は、冷戦期ではない。当時のソ連は、アメリカと世界の覇を競っていた。今の中国は、国益で動いているだけだ。世界を変えることに関心はない。(中略)

冷戦期の米ソ関係とは違って、自国の市場の育成に躍起になっている中国とアメリカとのあいだに、妥協できないイデオロギー対立はない。互いに協調的であると同時に、競争的な関係にあると言える。』

アメリカがとるべき中国への政策行動について

質問:『中国の台頭に対して、アメリカがとるべき政策行動は?』

回答:『中国は、20~30年でアメリカの地位を脅かすようになるだろう。世界中で強まる中国の影響力は、30~40年後に世界をまったく新しい勢力バランスに変えてしまうほどになる。(中略)

アメリカ議会は新たなFTA(自由貿易協定)のいずれにも反対している。FTAを結ばずにいると、(対中輸出入量を増やしている)韓国、日本、台湾、ASEAN諸国は中国経済に飲み込まれてしまう。それは回避すべき事態だ。』

アメリカがとってはいけない政策行動について

質問:『中国の台頭に対して、アメリカがとってはいけない政策行動とは?』

回答:『最初から中国を敵国と決めつけてはいけない。さもないと、アジア太平洋地域でアメリカをつぶそうとする対抗戦略を助長することになる。(中略)

中国を国際社会に取り込む力があるのは、他のどの国にもましてアメリカである。だが、中国にもっと民主化してほしいとアメリカが表明すると、問題が生じる。中国は国内問題への干渉だとして不快感をあらわにするからだ。(中略)

アメリカは、世界の安全と安定の問題を進んで話し合えるようになる前に、中国を崩壊させようとする意図などない、ということを中国に納得させる必要がある。』

まとめと感想

本書では他にも、米中関係のみならず、インドやイスラム原理主義の展望など、様々なグローバルイシューの未来展望が語られています。

また、最終章では、数多くの著名人に「今まで出会った中で最も頭が切れる政治家」と言わしめた、リー・クアンユーのパーソナリティから思考プロセスなども「リー・クアンユーの考え方」として紹介されています。

そのため、本書は、世界的なリーダーとしてのリー・クアンユーを理解できる一冊として多くのビジネスパーソンに参考となる一冊と言えるのではないでしょうか。

新刊ビジネス書を「要約」でチェックできるプレミアム版も人気です

book-smartとは