書評『それでも金融はすばらしい』
(ロバート・J. シラー/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
■序章 金融、財産管理、そしてわれわれの目標
■第1部 役割と責任
最高経営責任者(CEO)
投資マネージャー
銀行
投資銀行
住宅ローン業者と証券化業者、ほか
■第2部 金融への不安
ファイナンス、数学、美
ビジネスマンと理想主義者はちがうのか
リスクを取ろうとする衝動
因習性と馴染み深さへの衝動
負債とレバレッジ ほか
著者:ロバート・J・シラー
ノーベル経済学賞受賞者、イェール大学教授
イェール大学経済学部教授。1972年にMITで経済学のPh.D.を取得。「資産価格の実証分析」を評価され、2013年にノーベル経済学賞を受賞。2000年に刊行された『投機バブル 根拠なき熱狂』は、アメリカのITバブル崩壊を予言した書としてベストセラーとなった。同じくノーベル経済学賞を受賞(2001年)したジョージ・A・アカロフとの共著『アニマルスピリット』も、サブプライムローンに端を発する金融危機を理解する書物としてベストセラーとなった。

書評レビュー

「金融」の本質に迫る一冊

本日紹介する一冊は、2013年のノーベル経済学賞受賞者として著名な「ロバート・J. シラー」が、金融の仕組みや役割を解説することを通じて、その本質や重要性を改めて解説した一冊です。

著者であるロバート・J. シラーは、イェール大学教授として「資産価格の実証分析」ノーベル経済学賞を受賞し、代表作「根拠なき熱狂」でアメリカITバブルの崩壊と株価の下落を予測したことでも有名な金融経済学者。

著者が本書を執筆するきっかけとなったのは、サブプライムローンなどを通じて増大した金融への不信感を見て、「金融」が今まで社会にもたらしてきた貢献やその必要性が過小評価されていると感じたからだそうです。

そのため、本書は、金融の仕組みと役割を改めて理解してもらうため、大きく二部構成となっています。

第1部「役割と責任」では、金融専門家(銀行、会計士、トレーダーなど)それぞれの概要と役割を、第2部「金融への不満」では、サブプライムローンなどを通して金融への不信感への回答として、金融の本質を解説するという仕立てです。

もちろん、著者もサブプライムローンのようなものを単純に肯定はしておらず、金融に従事する者として当然持つべき道徳性についても言及しています。

ファイナンスで支援される経済活動の「美しさ」

筆者は、ファイナンスの理論は、社会の組織化における中心的な問題を扱っているからこそ「美しい」と述べています。

それにもかかわらず、金融に対するイメージが悪いのは、下記のような理由からです。

『金融の本当の現場がしばしばごちゃごちゃして非人道的だという事実と、それがあまりに多くの偽善と小細工という事実が、この美しさから目をそらすことになる。だが、自然だって美しいのに、一方で各種の醜いものを生み出していることを考えれば、同じことが言える。』

さらに、ファイナンスはその理論以上に、それが作り出すものに「美しさ」があると解説しています。

『ファイナンスは人間の欲望と人間の可能性をめぐるもので、われわれの働く生活を構成する日常的な活動すべてを支援する。(中略)ファイナンスが最も本質的な美しさを持つのは、何十億人もの人々が共有し享受する豊かさと多様性を持つ活発な人間社会の、こうした各種人間活動すべてを支援するからなのだ。』

つまり、ファイナンスの本来の目的は、このように人間活動を支援することです。そしてそれを忘れてしまったからこそ、サブプライムローンに端を発する金融危機が起こってしまったのかもしれません。

まとめと感想

上述したように、第一部では各金融専門家の役割が分かりやすく解説してあり、それだけでも金融業界の理解(金融業界にいる方でも、自分の属する分野以外のプレーヤーについて)を促す内容と言えると思います。

あとがきを入れると500ページ弱と読み応えがある内容になっていますが、金融論のエッセンスも学べ、読み物としても非常に面白い一冊です。

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