書評『成長から成熟へ さよなら経済大国』
(天野 祐吉/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
プロローグ 世界は歪んでいる
第1章 計画的廃品化のうらおもて
第2章 差異化のいきつく果てに
第3章 生活大国ってどこですか
エピローグ 新しい時代への旅
著者:天野 祐吉
 1933年、東京生まれ。コラムニスト。博報堂を経て独立。雑誌『広告批評』創刊編集長。

書評レビュー

コメンテーターとしても有名な元博報堂の「天野祐吉」氏による、現代大量消費社会・成長至上主義への警鐘と提言をまとめた一冊。

筆者の天野氏と言えば、広告代理店「博報堂」に勤め、その後独立し、雑誌「広告批評」を創刊するなど、60年に渡って広告業界にコミットしてきた人物です。また、報道ステーションなどのコメンテーターも多数務められていたことでも有名ですが、2013年10月にお亡くなりになりました。

広告といえば、一般的にユーザーの消費を喚起するために用いられるものであり、高度経済成長以降の我々日本人の生活の向上は、広告と共に歩んできたといっても過言ではないかもしれません。

そんな広告業界に長年コミットしてきた天野氏ですが、ふとした瞬間に現代社会は「歪んでいる」と感じたそうです。

歪んでいる現代社会

現代社会の「歪み」について、天野氏は「福袋」を例にとり解説しています。お正月の風物詩とも言える「福袋」は、欲しいものを買うことが目的ではなく、お金を使うことが目的になってしまっていると述べています。

『人はなぜ福袋を買うのか。答えは簡単で「買うものがないから」です。「欲しいものが見つからないから」です。でも「何かが買いたいから」なんですね。(中略)モノを買い続けるように“教育”されてしまったいまの消費者は、何かが欲しいんですね。』

この「歪み」ついて、筆者は、自身のいた広告業界にも密接に関係している「大量消費」が「歪み」が発生した理由の一つだと述べています。

『大量生産・大量消費という巨大なシステムから、次々に吐き出されてくる膨大な種類と量の商品やサービスを、ぼくらは否応なく消費させられる社会に住んでいます。(中略)

いまやそんな物やサービスがあふれかえって、福袋くらいしか買うものが思いつかない世の中になってしまいました。それでも経済成長を持続するためには、大量生産・大量消費の歯車をとめるわけにはいかない。』

福袋は、あくまでも内容を分かりやすく伝えようとした例ですが、筆者は「成長」社会の限界を、消費と密接な関係にある広告というフィルターから感じとっていたようです。

「別品」の国・成熟社会へ

このように「成長」社会の限界を感じた筆者は、中国の評価呼称の1つ「別品」という言葉を用いて、「成熟」社会への引っ越しを提唱しています。

『(中国では格付けに際し)審査のモノサシでは測れないが、個性的ですぐれていると思われるものは「絶品」とか「別品」として認めたというんですね。(中略)

今はもう経済成長なんかにしがみついているときじゃない。原発の輸出で食いつなごうなんてことじゃなく、文明の書き換え作業に取りかかるときなんじゃないでしょうか。そう、引っ越しです。引っ越し先は言うまでもありません。経済力や軍事力で競い合うような国じゃない。文化を大切にする「別品」の国です。』

まとめと感想

本書ではほかにも、広告によりもたらされた「計画的廃品化」などについても言及されているなど、天野氏の60年に渡る広告業界での活動中に実際に見聞きした、広告の歴史にも触れることができます。

実際に、天野氏の主張をそのまま実現することは難しそうですが、「成長」社会から「成熟」社会にかじをきらなければならないという意見も出てきている中で、参考となる一冊になるのではないでしょうか。

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