書評『経済は世界史から学べ! 』
(茂木 誠/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 お金(1) 円・ドル・ユーロの成り立ち
第2章 お金(2) 世界経済と国際通貨
第3章 貿易 経済の自由化
第4章 金融 投資とバブル
第5章 財政 国家とお金
著者:茂木 誠
 東京都出身。駿台予備学校世界史科講師。「東大世界史、難関国立大世界史」等の講座を担当する実力派。時間軸と空間軸をクロスさせたストーリー仕立ての講義は、「歴史の流れ」がわかると大好評。予備校の東大受験クラスから進学率ゼロの高校に通う現役生まで、あらゆる学力の生徒を教えるテクニックがある。予備校講師とは別に、現代ニュースを歴史的な切り口から考察する『もぎせかブログ』を運営するブロガーとしての顔も持つ。
 著書に『センター試験世界史B・よく出る過去問トレーニング』(中経出版)、『テーマ別東大世界史論述問題集』(共著・駿台文庫)、『9割とれる最強のセンター試験勉強法』(共著・中経出版)、『これで納得! 戦後欧米史(DVD)』(ジャパンライム)などがある。一般書の執筆は本書が初。

書評レビュー

駿台予備校人気講師が教える「歴史」から学ぶ「経済学」

今回ご紹介するのは、難解でとっつきにくい「経済」を、皆さんが興味を持ちそうな「歴史」という「物事の成り立ち」から学ぶことで理解を進めていこうという、経済学入門書です。

著者は、駿台予備校で世界史を担当する現役人気講師であり、世界史の参考書の執筆も数多く手がけている人物です。

「経済」と聞くと、ともすればどこか難解でとっつきにくく、自身のビジネス領域に関係のあることは知っているけど、それ以外はちょっと、という方もいらっしゃるかもしれません。

本書は、そんなとっつきにくい経済を、皆さんが学んできた「歴史」というフィルターを通じて、その成り立ちから説明していくという「教養として経済を学びたい」方々にピッタリの経済の入門書となっています。

内容も、著者が世界史の講師だけあって、日本に留まらず、欧米やアジアといった世界中の経済の歴史が幅広く紹介された一冊となっています。本書からいくつかご紹介していきます。

現代に通じる「チューリップ・バブル」

日本でも「失われた20年」と呼ばれる景気後退の端緒となった景気崩壊、通称「バブル」ですが、これは文字通り「泡」のようにふくれ、消えるときはもろくあっという間にパチンと消える幻のような好景気を指します。

私たちからすれば苦々しいバブルですが、世界初のバブルは、実は17世紀のオランダで起こった「チューリップ・バブル」という何ともかわいらしい名前のものでした。

名前はかわいらしいのですが、この「チューリップ・バブル」、名前に似ず、オランダ国民の生活を崩壊させた恐ろしいものでした。

17世紀のオランダは、スペインから独立し、当時貴重だった香辛料貿易を独占することに成功しました。

そして、そのまま成長を続け、なんと17世紀前半の世界貿易の50%をオランダが占めるほどの貿易大国になり、以前では考えられないほどの巨額の資金を獲得することになりました。

その結果、現代でも見ることができる現象が起こります。投資マネー(実質投機マネー)の流入です。ここで注目されたのが、オランダの名物でもあるチューリップの球根だったのです。

投資マネーの流入はとどまることを知らず、投資が投資を呼び、球根の値段は高騰を続けました。さらに、ここに多額の利益に目のくらんだ庶民が参入した結果、現在では数百円で購入できる球根が、なんと信じられないことに、家が買えるほどの高値になってしまうという、制御不能な状況になってしまったのです。

そして、バブルははかなくもあっけなくはじけます。暴落の危険を感じたプロの投資家たちが一斉に「売り」に転じ、球根価格は暴落します。

投資家たちは最高値で売り逃げますが、悲惨なのは庶民です。家財道具から家畜を没収された上、多額の借金を背負わされたといいます。これは、現代でも見られる、加熱した投機マネー流入の行く末をあらわしたものといえるのではないでしょうか。

まとめと感想

本書では、このように、世界初のバブル崩壊の理由を明らかにした上で、「経済成長→世界恐慌のメカニズム」を解説するとともに、日本のバブル崩壊やリーマンショック発生の要因が分かりやすく解説されており、まさしく「世界史から経済を学ぶ」という内容になっています。

また、経済の入門書と冒頭で紹介しましたが、TPPやユーロ危機などの最近のトピックスについても歴史の観点(成り立ち)から同様に解説されているため、その点も皆さんの興味を引くのではないかと思います。

他にも、「預金通帳やキャッシュカードは宗教騎士団(テンプル騎士団)が作った」など、読み物としても楽しめるエピソードが多く、今まで経済を敬遠していた方でも気軽に楽しみながら経済に触れることができるお薦めの一冊です。

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