書評『競争力』
(三木谷 浩史/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第一章 イノベーション
第二章 オペレーション力
第三章 アベノミクスを問う
第四章 ローコスト国家
第五章 国際展開力
第六章 教育力
第七章 ブランド力を高めろ
終章 競争力とは何か
著者:三木谷 浩史
 1965年神戸市生まれ。88年一橋大学卒業後、日本興業銀行(現・みずほ銀行)に入行。93年ハーバード大学にてMBA取得。興銀を退職後、96年クリムゾングループを設立。97年2月エム・ディー・エム(現・楽天)設立、代表取締役就任。同年5月インターネット・ショッピングモール「楽天市場」を開設。2000年には日本証券業協会へ株式を店頭登録(ジャスダック上場)。04年にJリーグ・ヴィッセル神戸のオーナーに就任。同年、50年ぶりの新規球団(東北楽天ゴールデンイーグルス)誕生となるプロ野球界に参入。11年より東京フィルハーモニー交響楽団理事長も務める。現在、楽天株式会社代表取締役会長兼社長。

著者:三木谷 良一
 1929年神戸市生まれ。53年神戸経済大学研究科修了後、神戸商科大学助手に。同大学講師、助教授、教授を経て72年より神戸大学経済学部教授。93年に定年退官し、同大学名誉教授。93年から2002年まで神戸学院大学経済学部教授。94年から98年まで日本金融学会会長。著訳書に『現代経済の常識』(新野幸次郎らと共著・有斐閣)、『現代金融論』(則武保夫と編著・有斐閣)、『中央銀行の独立性』(石垣健一と編著・東洋経済新報社)、『Japan’s Financial Crisis and its Parallels to U.S. Experience』(Adam S. Posenと編著・Institute for International Economics, Special Report)、『ケインズ全集 第15巻「インドとケンブリッジ」1906~14年の諸活動』(山上宏人と共訳・東洋経済新報社)ほか。

書評レビュー

三木谷親子が語る日本経済再生への道

 本書は、楽天の三木谷社長(※以下三木谷氏)が父であり、経済学者である三木谷良一氏(※以下良一氏)と日本経済をめぐるさまざまな問題について対談した内容をまとめた一冊。

 ちなみに父である良一氏は、金融論とアメリカ経済論を専門とする経済学者であり、神戸大学経済学部長、日本金融学会会長などを歴任する人物。良一氏は難関といわれるフルブライト奨学金を受けハーバード大学院へ留学するなど、当時としては珍しい「国際派」で、企業戦略論にも詳しく、楽天創業時から、三木谷氏の「隠れブレーン」だったと書かれています。

 さて本書の内容ですが、ビジネス書や経営論というよりは、あくまで「日本」という国の経済再生を語った一冊です。そしてその思想は基本的には、規制撤廃、構造改革路線の新自由主義的立場にたったものです。この書評では、本書から、三木谷氏が産業競争力会議に提言したという「日本経済再生の5つの打ち手(JAPAN AGAIN 構想)」をご紹介します。

JAPAN AGAIN 5つの提言

1.国家としてローコスト体質にすること

 日本の高コスト体質を改善するためにはどうすればよいかがポイントになります。企業の場合、経営の効率をあげるためには、人件費や会社全体の運営管理費など本部(本社)経費を安く抑える必要があります。同じように、国を本部だと考えればITの徹底的な活用による経費削減が重要

 良一氏は、かつてのイギリスの英国病と重ねて、「日本病」にかかっており、しかも当の日本人がそれに気づいていない状況を「危うい」と述べています。

2.新しいアイデアをどんどん出してイノベーションを起こしていく

 良一氏がシュンペーターのイノベーション論(イノベーション=新結合)を挙げ、三木谷氏がイノベーションを起こす必要性とその仕組みについて語っています。

 イノベーションが起こる環境を作っていく必要があります。イノベーションが起きれば、新しい市場が生まれ、経済が成長していく。そのためには、規制を撤廃することがポイントとなります。その象徴的な取り組みとして、ぼくは産業競争力会議で「ITアウトバーン構想」を提案しました。通行料金も速度制限もないドイツのアウトバーン(高速道路)に倣って、世界でもっとも速く、もっとも安い通信インフラを構築するというアイデアです。

3.オペレーションできる力があること

 労働市場の硬直化が進み、企業が労働者を解雇できずに抱え込んでいます。女性を活用するのはもちろんですが、それだけでは労働力不足は解消しません。解雇規制を緩和して労働力の流動化を進める必要があります。

4.国際的な展開力があること

 テレビなどの家電製品や携帯電話で国際標準から外れるガラパゴス化が指摘されているだけでなく、留学生数の減少や日本に本社を置く海外企業の流出が目立っています。楽天は2010年から英語の社内公用語化に踏み切り、2012年7月から完全実施していますが、国レベルでの英語の公用語化を進めるというのも一つの考え方だと思います。外国人や外国企業が入りやすい環境を創っていくことが重要なものです。

5.ブランド力を持つこと

 個々の製品のブランドも重要ですが、何といってもメイドインジャパンというブランドでの超過収益力が極めて重要ですから、それをどうやって創りだすか、ということです。

 いかがでしょうか?それぞれの具体的な打ち手などは、本書に譲りますが、現在の国際情勢から考えると、骨太方針としてはおおむね間違っていない方向に思えます。実務的にどう推進するかについても、KPI(キーパフォーマンス・インディケーター=重要業績評価指標)によるマネジメントを提唱しています。

 優秀な経営者が国政に携わっていくというのは基本的にはよいことだと思います。官僚制、アベノミクス、IT、英語、教育など、国際政治経済について詳しい人は既知の内容が多いかもしれませんが、最近の経済ニュースに疎くなっている方には大いに参考になるはずです。

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